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ルナの戦い

「人間なんかを頼るからそうなるんだ、ソル」

男――ルナは意識を失い倒れるアサヒへと近づき、身に着けたその腕輪に蔑むような声で語り掛ける。

「そこで這いつくばって見ていろ」

彼はそう言ってブラードへと向き直ると、左腕を振るい光の剣を出現させる。

「ドアッ!」

そして掛け声とともに駆け出した――



今ここに開始された一人と一匹との戦闘。ブラードは長い下半身を真横にして打ち下ろす。側面に付いた刃を揃えた大剣が、ルナを狙う。

「ドアァッ!」

しかし彼はそれを回避せず、そのまま直進。光剣を振るって下半身を真っ二つに切り飛ばす。

そして急ブレーキをかけると、右手から弓状の光弾を放ち上半身を狙い撃つ。

ブラードの上半身は大きく仰け反るも、その下半身は違う。アサヒにそうしたように、飛び掛かり巻き付かんとする。

が。


「フン……」

彼には既にお見通しだった。一瞥し鼻で笑うと、

「ドァ!」

光剣を突き出し、帯状の細い光線に分裂させる。それらは別々の方向へ飛散し、下半身の節々にある目玉全てに直撃する。

得意の不意打ちを回避されたブラードは驚愕し、動きが止まる。

その隙を逃さず、ルナは飛んだ。

「ドゥアッ!」

彼はブラードを切り裂かんと横一文字に光剣を振るう。しかしブラードは咄嗟に体を後方へ反らし回避する。が、完全にはかわし切れず左顎の先端を切り飛ばされてしまった。

ブラードはそのまま地中へと潜り、この場から撤退。間もないうちに、洞窟内には静寂が戻った。


「フン、逃げたか」

ルナはつまらん、といった具合に吐き捨てると、再びアサヒのもとへと近づく。

そしてその姿を若い男のものへと変えると、アサヒの体を抱え上げる。

《何をするつもりだ》

「まだ死なれては困る」

警戒した様子でテレパシーを発するソルに対し簡潔にそうとだけ答えると、ルナは洞窟の出口へと向かって歩き始めた――



その数十分後。先ほどまで戦闘が行われていた地で、何かを探す人影が二つ。

その正体は――


「あ、あったよ兄さん!」

「でかしたぞ弟よ!」


あの二人だった。彼らはソルに逃がされた後、実はこっそりと戦いを見ていたのだ。

なぜそんなことをしていたのか?その答えが――


「こいつを王都で売りさばけば、しばらく暮らせるだけの金が手に入る!」

モールの手に握られているのは、大きな玉虫色の欠片。先ほど切り飛ばされた、ブラードの左顎の先端だった。

彼らはこれを売りさばくことで、生活費の足しにしようというのだ。

「やったね兄さん!」

「うむ。早速向かおうか、弟よ!」

静かな洞窟内に、がはははというような、彼らの笑い声が響き渡っていた――

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