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暇つぶしのために王子は、ようせいを育てる。  作者: アッキ@瓶の蓋。


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アルブレンド王国

「と言う訳で、生徒会長命令です。このトルテッタさんの"ゴエイ"をお願いいたします」

「と言う訳で、よろしく頼まれてあげるわっ!」


 いきなり生徒会長室に呼び出されて、コビーは驚いていた。と言うか、理解したくなかった。

 いきなり会長命令で、しかも護衛。その相手がタタン・トルテッタとなると本当に意味が分からない。


「いきなり《と言う訳で》という言葉を使われて、それで《はい、そうですか》にはなりませんので、理由を説明してください」

《キュー! セつメイ!》

「あぁ、そうでしたね。いけない、いけない。ちゃんとした"セツメイ"を致します」


 という事で、メグ生徒会長からきちんとした説明‐‐‐‐どうしてトルテッタを護衛しなければならないのかという‐‐‐‐を受けた。


----昨日の夜中、ココアが人を襲っていたこと。

----偶然、通りかかったトルテッタが近くに居た衛兵に連絡したこと。

----その際、次の標的にすると言われた事。


 まぁ、要するにトルテッタを守るという事は、同時にアルブレンド・ココアに繋がるという事である。

 それなので護衛を頼まれたわけなのだが……


「おかしいわよね、あの娘……Dくらいあったわよ? もしかするとE?

 2つ下なら12歳よね? 12歳であれっておかしいわよね、本当に。もしかしてあれは偽乳(パット)!?」


 ぶつくさと、トルテッタはなんだか怖い顔でぶつくさと呟いていた。

 というか、偽乳はないだろう。トルテッタ(あなた)じゃあるまいし。


「‐‐‐‐まっ、と言う訳で"ゴエイ"をお願いいたします。彼女を守っていけば、そのEカップ殺人鬼も出てくると思いますので」

「違うわよ、生徒会長! Dよ、ちょっと大きかったし、Eに見えなくもないけどDよ! ダメ(DAME)のDよ!

 あと、ぜーったい偽乳(パット)よ! 12であの大きさはあり得ないわよ!」


 なんだか、個人的な恨みで勝手に腹を立てているトルテッタ。


「「…………」」

《キュキュー?》


 それに呆気にとられるコビーとメグ生徒会長、そしてまったく理由が分かっていなくてきょとんとしているカフェオレの姿があった。



 ‐‐‐‐ちょっと妹との対策を考えてくる。


 コビーはそう言って、図書室の方にこもりに行った。

 彼の妹、今倒そうとしている殺人鬼のアルブレンド・ココアは、入念に対策しておかなければならない、そういう事なので、しっかりと準備させてほしいという事だそうだ。


 その間、トルテッタはカフェオレと一緒に部屋に居た。勿論、コビーの部屋である。

 トルテッタとしては自分の部屋に招待したいところではあったが、それをすると完全に盗ったと思われてしまう。

 なにより、妖精であるカフェオレがこの部屋から出たくなかったみたいなので、それも尊重してのことである。


 タタン・トルテッタは誇り高い貴族の娘。

 一度、決闘という形にて敗けた以上、このような形にて妖精を奪うのは筋違いである。

 

「はい♡ これをどうぞ♡」

《キュィ?》


 トルテッタはそう言いながら魔石を、魔力のこもった高価な宝石を差し出す。それだけで高い物だと家の1軒や2軒だろうと買えてしまうほどの価値もある。

 それだけ高いものをサッと、子供をあやす時にお菓子を差し出すかのように、トルテッタはカフェオレの前に差し出す。すると、カフェオレは怪しみながらも、それを受け取ると‐‐‐‐


《キュ?》


 ぺろり、と舌で一舐め。

 これは幼児がおもちゃを咥えるのとは、かなり違う。何故なら、魔石を舐めた瞬間、彼女の4枚の羽根が嬉しそうに白く光り輝いていたからだ。


「(あぁ、やっぱり良いわね。魔石のエネルギーを取り入れてる姿って)」


 妖精とは、スライムである。本来は違うのだろうが、今の世界で人間に確認されている妖精のほとんどは、コールフィールド国の技術によって再現されたスライムから生み出した卵からふ化したもの。

 スライムは本来、意思もなく、ただ野生の本能のまま、行動する。

 そして彼らの好物が魔力。消化液を持つが、脳も、心臓も、血管もないスライムが唯一他の生物から取り入ることが出来るのが、魔力なのだ。


 妖精と姿を変えても、その性質は残している。彼女たちの好物は、魔力なのだ。

 魔石にこめられている魔力は、そんな魔力の中でも純然たる澄んだ魔力。数々の研究と調査の結果、魔石に含ませた魔力が一番おいしいらしい。


《キュゥ~! おイしイッ!》

「あぅ~!」


 美味しそうに食べるカフェオレを見て、トルテッタは嬉しそうに胸を押さえていた。

 彼女の胸の奥がきゅんきゅんと痛む、断じてココアというあの犯罪者の自分にはないものを思っていた訳ではない。


《キュゥ~》

「あっ、やっぱり気になるのかしら?」


 と、カフェオレの視線がどことなく図書室の方角、彼女の主であるコビーがある方を見ていた。

 妖精には様々な性格があるのだが、どうやらこのカフェオレは妖精の中でも、彼女はよほど主人に愛着があるタイプのようだ。


「(むぅ……でも今は、私との時間。ここはこちらに関心を向けさせませんと)」


 主人に対して愛着のあるのは良い、けれども今は自分との時間。

 せっかくのこの時間、無駄には出来ない。

 トルテッタはそんな事を考えながら、ふとあることを思い出した。


「そうだ、カフェオレちゃん」

《キュキュ? なニ?》

「一緒にあなたのご主人様、アルブレンド国について学ばない?」


 ----対象と親しくなる方法、それは相手が興味がある話題を振ること。

 案の定、カフェオレは嬉しそうな声をあげ、それを見てトルテッタも嬉しくなる。出来ればそれが自分であって欲しい、とまだ未練たらたらなのだが。

 しかし、こういうのが大事。今はまだ興味がなくても、こういったことの積み重ねで仲良くなる。

 そう自分に強く言い聞かせながら、「えっとね~」とわざとらしく思い返すように記憶を辿る。



「アルブレンド国、別名は風車の国。そんな風に言われるくらい、ひじょーーーーに風が多いお国柄なのね」


 実際、トルテッタが以前言った際は風によって頭に被った帽子が宙を舞ったほどだ。

 その時は胸の方が飛んでいかないようにしてたから、帽子が飛んで行ってしまったのだが。


「正直なところ、風を利用してエネルギーに変える以前のこの国は、あまり歴史的に見ても面白いところがなにもないわ。色々と利用してた所みたいだけどあまり上手くなかったみたい」


 水を利用したり、雪を利用したり、鉱石を利用したり、別の国から輸入したモノを利用したり。

 ‐‐‐‐色々と利用したらしいのだが、風以外はあまり上手くいかなかったらしく、その残骸は今もなおアルブレンド国の人が立ち寄れない場所に廃棄したままだとか。いわゆる、負の遺産という奴である。


「でも、風のエネルギー利用に成功してからは、本当にいいところよ。あの国は」


 店もある。

 流行もある。

 なにより、活気がある。


 エネルギーはどこからともなく吹いてくる大量の風、つまり元手はゼロ。後はそれをエネルギーとして変換してやれば、後は変換したエネルギーをどう扱うかは個々人の自由。

 各家庭が最低限の生活水準を送れるだけのエネルギーを割り当てられていて、その上で少しだけ貰った余分のエネルギーを加工して仕事として行っている。それが一般的な、アルブレンド国民の生活。

 ギャンブルとか賭け事に手を出さずに要れば、難民に陥ることのない平和な国だ。

 平和すぎて、王子様が暇つぶしで妖精を育てだすほどなのがたまにキズだが。


「あの人、王子……なのよね? 継承順位がどれくらいなのかは分からないけど、それでも王族ならばそれなりに裕福な生活でしょう。大丈夫、あなたのご主人様はあなたに貧しい思いをさせたりしないわ」


 しかしその分、スリルはない。

 ドキドキはない。

 なにより、驚きがない。


 良い国とは言ったが、それは観光客目線……つまりは国外からの人間から見ての評価である。

 一度は訪れたいとはトルテッタは思っていたが、それでも住みたいとは思えなかった。


「(だって、生活が保障されているということは、なにもしなくても生きていける。逆を返せば、なにをしても意味がない。そんな(つい)の棲家に今から住みたいとは到底思えないわ)」


 だからこそ、トルテッタは今からでも自分の国である鉱山国コールフィールドへ連れて帰りたいのだ。


 コールフィールドは鉱山の国。金脈を当てれば成り上がり、そうでなければ貧しいまま。

 アルブレンド国とは対照的に、生活の確定した保証がない代わりに、スリルがある。ドキドキがある。驚きが君を待っている。

 なにより、カフェオレはコールフィールド産の妖精の卵からふ化している。彼女の生まれ故郷となると、生まれたのはこの共和国ではあるが、本当の生まれ故郷はコールフィールド。

 人間もそうだが、妖精だろうと、最終的には自らの生まれた祖国が一番大事に決まってるのだから。


「‐‐‐‐とまぁ、アルブレンド国はこう言ったお国柄な訳なのよ。どう、楽しかったかしら?」

《キュィー!》


 とっても、と言った様子で満面の笑みを浮かべる妖精カフェオレ。それを見て、トルテッタはキュンキュンと、胸に弓矢が刺さったように彼女の魅力に夢中になっていた。


「(‐‐‐‐あぁ、もうあのコビーとやら来ないで良いわ。このままこの妖精ちゃんの可愛らしい顔を見ていた方が、よっぽど世界的にも有意義よ。それにやっぱり私の配下として、ずーっとお世話したいわ)」


 自分を守ってくれる存在を要らないと言いつつ、さらには頼まれてもいないのにカフェオレのお世話まで買って出ようとしていた。

 彼女が研究会でモノの試しで買った妖精を、飼育する者として安全かどうかを試すために戦ったのも、単なる正義感ではないということである。



「‐‐‐‐今、帰りましたよ」



 その可愛さを永遠に独り占めしたいと、本気で考え始めた丁度その時。

 アルブレンド・コビーが、考えてきていた作戦と共に部屋まで戻ってきたのである。


《キュィィ!》

「……チッ」


 カフェオレは敬愛する主が帰られたことに嬉しそうな声をあげていて、それに引き換えカフェオレを取られるような形になってしまったトルテッタは舌打ちして不満を露わにしていた。と言うか、分かりやすすぎるほど露骨であった。


「……? どうしたんだ、トルテッタさん?」

「いーえっ! なん・でも・ありませんわっっっ!」


 なにかあると言っているようなものである。

 しかし、コビーはそれで本当になにもない、と受け入れた。受け入れた、というよりかは下手に藪蛇を突いてしまって、面倒なところになりたくなかったのである。

 それに‐‐‐‐


「(あぁ、多分だけど、またパットの事でしょうし)」


 ‐‐‐‐多分そんなところの話だろうと思って、ろくに話を聞く気がなかった。というか、多分そうだろうなという予測の結果である。

 実際のところは、単純にもっとカフェオレと仲良くなりたいという所なのだが、今回はそれと似たようなくだらない所だったので、どうでもいい話なのである。


「ところで、おかしなところとか危険はなかったか? 一応は命を狙われているという設定なのだから、用心に越したことはない」

「設定って! わたしの話が嘘だとおっしゃりたいのかしら!?」

「そういう意味じゃないよ、普通に危ないから用心して欲しいと言っているだけの話だ」


 話が嘘か、真かの話ではない。

 もし仮に彼女の話が、命を狙われているという話が本当だとしたら、少なくとも護衛が居ないときは警戒して欲しい、そういう心構え的な話である。

 少なくとも部屋の中で呑気に、雑談に勤しむだけの余裕があるのならば。


「そっ、それを守るのがあなたの役目でなくって?!」

「じゃあ、そうでいて欲しい。少なくともこの、妹のココアを倒すその時までは」


 コビーはそう言いつつ、手にしていた本を自分の部屋の机の上に置く。

 そして、トルテッタは「策を考え付いたのかしら?」と尋ねる。


「一応は、な。とは言っても、これで本当に良いのかどうか微妙だが」


 対策を立てるというのは、相手に付け入る隙がある際に行う事。

 今回、その対策を立てるアルブレンド・ココアは、魔法が一切使えないという弱点以外は、同年代においてはほぼ完璧と言っていいステータスの持ち主である。

 天は二物を与えず、とは言うが、後から物を足された場合はどうしようもない。


「とりあえずは、一番に対処すべきなのはあの金庫の槍だろうなぁ」


 ----金庫付きの槍。

 どこで手に入れたのかは分からないが、やはりあれこそが彼女がおかしくなっている一因だろう。

 得物を狙う。それが今出来る一番の攻略法、というか対処方針である。


 今まで殺人鬼であるココアは、相手に狙いをつけてからすぐに行動に移している。

 長くても次の出現まで4日程度なのが今までの行動パターン、つまり今夜にでも襲ってくる可能性は高い。


 来るなら来い、そんな気持ちでココアが来るのを待ち構えていた。

トルテッタヽ(o’∀`o)ノ「出番、終わりだと思った? 残念、私はまだ登場するわよ!」

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