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暇つぶしのために王子は、ようせいを育てる。  作者: アッキ@瓶の蓋。


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生徒会長からのお誘い

「~~~~~~~~っ! わわわっ、忘れなさぃぃぃぃぃ!

 良いわね、絶対よ! 絶対に、絶対の、絶対なんだから!」


 偽乳(パット)を暴かれて、そのままトルテッタはキツネの妖精を連れて逃げて行った。


「……なんだったんだ、いったい」

"キュイ! キュキュイ!"


 コビーは呆気に取られていた。


 勝負をあちら側からけしかけておいて、その上で1回負けたのにも関わらずすぐさま再戦を要求。

 胸まで偽乳という、どこから突っ込んでいいのか分からなくなるくらいの見栄っ張りぶり。

 ここまでくると逆に尊敬してしまうくらいの、見栄っ張りである。


「……なんというか、これ以上あの女とかかわらない事を願おう」


 あの性格上、裏切りとか、約束破りとかは日常茶飯事だろう。実際、再戦されたし。

 きっと報酬なんか貰えないのだろう、むしろ報酬なんて必要ない。

 どちらかと言えば、もう二度と会わないことを祈るばかり。それが今、コビーが一番に願う事であった。



「‐‐‐‐という訳で、1回戦の魔バルーン草を使っての決闘。および、2回戦の妖精同士の決闘。その2つの報酬を渡しに来たわよ」


 ‐‐‐‐相手様は律儀だった。律儀に、タタン・トルテッタはコビーの部屋に堂々と上がり込んで、報酬を提示していた。

 相変わらず、彼女の乳房は立派にたゆんたゆんと膨れ上がっていた。男なら誰もが憧れるその大きな胸が、偽物であることをコビーは知っていた。それなので、少しがっかりしたような、残念そうな瞳で見つめていると、トルテッタはジト目で無言の抗議を敢行する。


「…………」

「あぁ、はいはい。ありがとうございます、報酬を頂かせていただきます」

「うん! 素直でよろしいっ!」


 藪蛇を突くのを止めた、人はそれだけで幸せになる。

 コビーは真理を知ったのであった。


「‐‐‐‐まっ、とは言え報酬の取り決めはざっくりだったものだったわ。まっ、こっちがかつ前提だったから、その辺がおろそかになっていたけど。なので、こちらの方で勝手に選ばせていただいたわ」


 彼女との報酬は、まさしくざっくりしたものだった。

 魔バルーン草を使った時の報酬は、妖精1匹。そのあとの妖精同士の対決の際なんかは報酬の取り決めすらなかったくらいである。ざっくりしたとしか言いようがないのは当然だろう。


「報酬の件だけど、1回戦のは妖精1匹。そして2回戦の報酬については決めてなかったですが、こちらで良いのを選ばさせていただいたわ」

「ゴミ、なんかじゃないんだろ?」

「失礼、としか言いようがないセリフね。安心しなさい、私は妖精を愛しっ! 妖精を普及する乙女なのだから!」


 妖精を普及する乙女ならば、どうして妖精を奪うような決闘を挑んできたのだろう。

 コビーにはそれが謎で仕方がなかった。


「妖精を普及させたいなら、決闘で妖精1匹を賭ける勝負なんかしなくちゃいいのに」

「あなたは私をなにか勘違いしてるようだから、言っておくけど----これでも私、故郷のコールフィールドでは妖精を愛する聖女の名称で通ってるわ」


 妖精を愛する……聖女?


「妖精を愛し、自然を愛する私の生き方に感激する方が多くて、多くて----」


 自然を愛する? 本人は、人工物(パット)を使って自分の容姿を弄ってるのに?

 コールフィールドと言うのは……案外、変な性格の人物が多いみたいである。


「……妖精の引き渡しだが、こちらは必要としていない。悪いが、俺に渡す予定だった妖精はそのまま持って帰ってくれ」


 これはコビーの本心。彼女は妖精を集めることが趣味みたいだが、コビーにとっての妖精(それ)はただの暇つぶし。

 妖精を集めるつもりは初めからないため、そもそも2匹も、3匹もいらないのだ。


「……妖精がいらない? 人の好意は素直に受け取っておくのが吉よ?」

「要らないと言っているのに渡すのは、好意じゃない。ただの押し売りだ」

「それもそうね、良かったわ。あなたが妖精を"使役する"に足る人物だと判断するわ」


 ‐‐‐‐ん? 使役するに、足る?


「あら、あなたはその様子だとフレートからなにも聞いてないみたいね。フレートのヤツ……ちゃんと情報は持しておきなさいよね」

「フレート? フレートって言うと、飼育研究会の?」

「そう、妖精飼育研究会の代表のフレートよ」


 やはりフレートとは、コビーに妖精の卵を渡したあの妖精飼育研究会の代表のことで間違いないらしい。


「私とフレートはね、同じ国出身というだけではなく、妖精飼育という面において協力体制にあるの。一応、妖精を貰ってはいけないという法律はないけれども、妖精はうちの国の国家的なプロジェクト。だから見定める必要があったの」

「見定める……?」

「フレートが妖精の卵を売り、ふ化したら私が決闘を無理やり打って見定める。妖精を飼うのに足る人物かどうかを見て、それに満たさない人物だった場合は----」


 ‐‐‐‐刈り取ってきたの。

 じゅるり、と舌を舐めるトルテッタの姿が、コビーには獲物を捕食する蛇のように見えた。


「まぁ、あなたにはその資格があった。私はそう見定めさせていただいたわ」

「……上から目線で勝手な」


 やはりコールフィールドとは、変な性格の人物ばかりみたいである。


「だから、妖精は渡せないにしてもこっちは受け取っておきなさい。うちの国名物、妖精伝承キット1個2千400はする代物をただであげちゃうわ」

「値段が生々しいな、おい」


 そう言いながらコビーには妖精の伝承が書かれている【妖精の歴史】という分厚い図書と、参考書代わりの簡易的な飼育講座(マニュアルよりもさらに細かく書かれている)。

 そして、カフェオレには----子供が文字を覚えるのに使う絵本が手渡されていた。


「妖精であるカフェオレちゃんには文字を覚えてもらうために、絵本を渡すわ。学習能力は非常に高いみたいだから、このペースだと3か月もしないうちに簡単な言葉なら話せるようになるでしょう」

"キュー!"


 早速とばかりに、絵本を見ながら文字を覚えていくカフェオレ。その姿をトルテッタは微笑ましい顔で見ていた。


「それで、あなたにはこれ。うちの国に伝わる妖精の伝承、そしてより良い飼育が出来るようにするための飼育の手引きよ」

「妖精の伝承……随分と分厚いな」

「まっ、これはうちのお偉い連中がまとめあげた体裁を機にした書物で、簡単にまとめたのもあるわ。一応、私が簡単にまとめた奴ね。そちらを渡そうかしら?」

「……そっちの方がよさそうだな」


 他国の、それも見栄ばかり気にした連中が作った書物なんて碌なものじゃない。そんな考えにてコビーは、こちらも見栄をまとったトルテッタが簡単にまとめたモノをいただく。


「なになに‐‐‐‐」



----遥か昔、世界にはなにもない大陸と、それを管理する神しか居なかった

----神は世界に生き物を生み出した

----全てを育む植物、そしてそれを糧に生きる人間などを始めした生物

----その生物の流れが綺麗に循環していたころ、妖精を生み出すこととなる別の神が現れる

----神は思った 「最近、お兄ちゃんが構ってくれなくてつまんない!」


「えっ? お兄ちゃん?」


----「よーし、お兄ちゃんの真似して生き物作っちゃお!」

----神は妖精という、兄の神が作ったモノとは別種の存在を作り上げる

----自分に良く似た姿の羽根を持つ人型

----獣をモチーフにした強そうな単獣型

----なんかもう飽きてきちゃったので適当に作った不定型


「不定型、可哀想すぎるだろ」


 なんだよ、適当って。


----八枚の羽根を大きく広げて、妖精という種族を作り出す

----しかしそれは兄の神からしてみれば、いきなり現れたトラブル

----倒さないようにと命令することもできず、結果として妖精は人々に飼殺され、獣に食われ、植物に溶かされた

----妖精とはか弱く、それがゆえに守らなければならないのである




「どう? 完璧でしょ?」

「とりあえず、もう1回原文から読み直すわ」


 簡単にまとめたモノだろうが、なんとなく頭に入ってこなかったのでコビーは原文を読み直す。

 兄の神とか、妖精を作った神の嫉妬がなかったこと以外は概ね、書いてある通りだった。むしろその2つが出てきたらどうしようと思っていたので、コビーはホッと胸を撫でおろす。


「じゃあ、そろそろ私は帰るわね。これから仕事なの」

「仕事?」


 "またしても妖精を奪って保護するのか?"

 コビーは軽い気持ちでそう聞くと、彼女は----


「そうだったら、まだ楽だったんだけどね」


 ----なんだか少しだけ意味深な、フラグじみた言葉と共にコビーの部屋を後にしたのであった。



 ----翌朝。

コビーとカフェオレの2人は、生徒会室に居た。


 別にコビーが生徒会に所属している訳ではない。ただ単に、呼び出されたから生徒会室に来ていたのだ。

 生徒会に呼び出される者はなにか大きな罪を犯して呼び出されたか、あるいはなにか頼みごとがあるかのどちらかに分かれるが、コビー達が呼び出された理由としては後者。

 頼みごとをお願いする相手は生徒会長、魔法を学ぶこの学園にて生徒達から選ばれた代表。そしてこの学園で唯一、魔法ではなく"五行"なる術を用いる者である。



「いやぁ、ごめんね。ごめんね。こちらとしてもこんな形で初対面という形は誠に"イカン"なんだけど、事は急を要しているから」

「こちらは別に構わないのだが‥‥…カフェオレが、な」

"フィー……"


 朝早い時間であり、カフェオレはどこか眠そうにあくびをしていた。それを生徒会長の彼女が、ニコリと笑ってみていた。


 濡れ羽色と称されるような青みを帯びた黒色の、艶やかな髪。そんな髪を緩くふわりとまとめあげ、左と右で髪のまとめ方を変えている。

 東方の地で見られるような丸くて小さめの顔立ちを持ち、腰には東方の地独自の剣"カタナ"を差して‐‐‐‐魔法使いと言うよりかは、まるで剣士のようないで立ち。


 ----共和国立魔法学園生徒会長、【ナツメ・メグ】。

 極東の島国出身の魔術師であり、他のどの国とも違う"五行"なる魔術式の使い手なのだが、いま語る話ではないので割愛する。

 そんなメグ生徒会長は、ゆっくりと椅子に座ると、コビー達2人にも座るようにうながしていた。


「それでは、遠慮なく座らせていただきますね」


 コビーが座ると、その膝の上にカフェオレがリラックスしてゆっくりと座っていた。

 2人がゆったりと座ったのを確認して、メグ生徒会長は本題を切り出していた。


「実は今日、アルブレンド・コビー君に生徒会室までわざわざ"ゴソクロウ"いただいた理由はね。優秀な成績を修める君に、1つ解決して欲しい事案があるからなのですよ」

「……どのような類の?」

「とある犯罪者を捕まえてほしいのです。それも超一流の犯罪者の」

「そう言うのは、一介の学生なんかではなく、政府とかが対応すべき事案ではないんでしょうか? 俺なんかよりずっと向いている」


 犯罪者の対応は、学生の仕事ではない。

 コビーの主張はなにも間違っていない。


 しかし、メグ生徒会長はコビーの方が間違っていると、まるでおかしなことを言って困らせる男の子を嗜めるお姉さんのような優しい口調で、


「‐‐‐‐いえいえ、そうではないのです。今回アルブレンド・コビー君に対応していただきたい超一流の犯罪者はあなたが、いや、あなただから、対応していただきたいのです」

「意味が分かりません。そう言った言葉上の形式は、国に帰ったらいくらでも出来ますので、手短にお願いします」

「そうだね、国の王子、ですものね。言葉の行間を読み取るような、高度な"シンリセン"は、むしろそっちの方が主流ですか」


 ‐‐‐‐では、遠慮なく。

 メグ生徒会長はそう一言言った後、コビーの目をじーっと見つめていた。


「なんですか?」

「いえ、私。人の表情を見るのが好きなので。自分が言った言葉で相手がどう興奮したり、困惑したり、そういった表情の変化を見るのが好きなんですよ」

「はぁ……なんとも変わった趣味で」


 趣味は人それぞれだが、"暇つぶしのために妖精を育てる"王子と、"人の表情の変化を見るのが楽しい"生徒会長。どちらの趣味もあまりよい物とは言えない。

 いや、王子の方は趣味ではなく、単なる暇つぶしであるのだが。


「‐‐‐‐さて、長々と話してきたが、仕方ない。本題に入りましょうか。

 今回見つかった超一流の犯罪者。魔術師を"殺す"ためにカスタマイズされたその暗殺者の名前は、【アルブレンド・ココア】。コビー君、あなたとは腹違いとは言え妹という関係にある者だよ」

トルテッタ(ꐦ°д°)「決して小さいわけじゃないからね、Bはあるのよ! 寄せて、集めて、頑張って空間から持ってくれば、Bは!」


コビー(@´σд`)「ふぅ-ん」

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