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暇つぶしのために王子は、ようせいを育てる。  作者: アッキ@瓶の蓋。


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アイ,ストーク

《なんか盛大に、ダージリン姫ちゃんから罵られてる気がするよ。

 えっ? そうなる? 1対1、で戦うように、こちらは君の相手を引き受けたのに?! 人間的になるって難しいねぇ》

「どこが人間的なんだか」


 ラムネール姫の一方的な蹂躙劇が開幕されている中で、アイストークとコビーは場所を移動していた。

 近くの路地裏の広場、少なくともダージリン姫が出した巨大植物から少し離れた場所である。

 コビーとしてはあんな大きな植物がある中で、こんな化け物と戦おうという気はさらさらなく、だからこそアイストーク自らが場所を移動したことに関してはありがたいと思っていた。思っていたからと言って、手を抜くつもりはさらさらないが。


「あの姉さんから頼られたから、こちらはやる気十分なんだけど」

《えっ? そうなる? 普通に君はそう言うタイプじゃないだろう? あの姉さん、化け物かとダージリン姫ちゃんは言っていたけど、人の意識をここまで変えるだなんて、本格的にそうなのかも知れないね》


 そう言いながら、漆黒の金庫を淡く光り輝かせ、腕と足に闇の衣を纏わせているアイストーク。


《1つ、種明かしをしてあげよう。

 ワレは金庫に色を付けるのが趣味でね、ほら、居るでしょ? 赤い棚に赤いもの、青い棚に青いものなど色ごとに分けてモノを入れる人。ワレはそういう人間的な行為が好きなんだ。だから金庫の中に入れてるのもそれに準じたモノになるようにしてましてね》

「それはなんとなく分かってる」


 先程までの攻撃を見れば、その想像は誰だって出来るだろう。

 白銀の金庫がなくなってから光の攻撃が消え、漆黒の金庫が淡く光ると闇の攻撃が発動していた。そして頭である金色の金庫だが‐‐‐‐


「(先程、右腕を修復する際に出ていた雷光。あの時に頭の金庫が、金色の金庫が淡く光り輝いていた。

 つまり、あの頭が光り輝くと【雷】の魔法が来る、という事か)」


 頭、右腕、左肩。

 金色、白銀色、漆黒色。

 【雷】、【光】、【闇】。

 恐らく、アイストークの使えるのはその辺りだろうと、コビーは考察していた。


「金庫1つで魔法の属性1つ、という所か。それなら金庫全部、壊せば解決だな」

《えっ? そうなる? ただの自慢で、諦めさせようと思ってたんだけど。

 と言うか、それが出来る? その幻想、今すぐぶち壊して差し上げましょうか》


 アイストークは闇で覆った両腕をがんがんっ、とぶつけ合って感触を確かめた後、頭の金色の光を淡く光り輝かせる。

 それと共に、アイストークの姿が一瞬でその姿が消え去っていた。


「‐‐‐‐っ!?」


 気付いた時には、コビーは腹を物凄い勢いで殴られていた。

 強烈な重い、腰の入った一撃はコビーの身体を的確に殴られ、そして骨身に染み渡るその一撃はコビーの脳までその痛みを響かせていた。響く痛みは長々と、コビーの身体を揺らしていた。


「‐‐‐‐今のは、正拳突き?」


 正拳突き、あらゆる拳法に通じる基本中の基本。

 腰を引いて、ただ拳を前に突き出すという簡単な技で、少なくともそんなに威力はでないはずである。


「頭が光ってた……そうか、【雷】による高速移動」

《正解でしょうよ。最も、正解だったからと言って何も対処できないでしょうが》


 威力の大きさを決める要素は3つ。重さ、大きさ、そして速さ。

 大きければその分、攻撃を当てる範囲は広くなって、威力は大きくなる。

 重くなればその分、攻撃は深く相手へと伝わるので、威力は大きくなる。

 速くなればその分、攻撃は瞬時に対象へと一気に伝わり、威力は大きくなる。


 【雷】の魔法は文字通り雷を操る魔法ではあると共に、身体に雷を纏わせて速度を速めるという方法もある。恐らくアイストークは【闇】で攻撃力を高め、そして【雷】の魔法で一気に加速して攻撃している。

 先程までは光の龍と闇の龍とで遠距離主体であったが、どうやら今は近接主体のようである。


「そっちが攻撃力を増すなら、こっちは防御を高めよう」


 コビーはそう言い、【氷】の魔法を用いて自身に分厚い氷の膜を張る。それは腕や足、それから胸や頭などを氷で覆っていく。さしずめ、それは氷の鎧であった。

 

「‐‐‐‐攻撃の手も緩めないよ」


 コビーは小さな風で渦を巻かせ、そして竜巻を作り出す。竜巻に氷を混ぜ、そしてその竜巻をアイストークめがけて放っていた。

 氷と言う物理的な重さを持つ攻撃手段を得た竜巻は、コビーの指示のもと、アイストークへと向かっていく。


《当たるとまずそうですねぇ、けれどもその程度なら対処も容易です》


 と、頭の金色の金庫を光り輝かせて、逃げるのではなく真っ向から向かってくるアイストーク。

 こちらに向かって殴りかかってくるアイストークの姿を見て、コビーは竜巻にさらに指示を出す。


「‐‐‐‐《竜巻よ、移動を変えよ》」


 自分に向かって殴りかかってくるアイストークに目を瞑らずにただ真っすぐ見つめ、竜巻の魔法を操作するコビー。

 相手に向かって動かしていた竜巻を、引き寄せて自分ごと竜巻の中にアイストークを閉じ込める。


《えっ?! そうなる?!》

「‐‐‐‐行くぞ、アイストーク」


 すっ、とコビーは魔法の制御を止めた。

 制御を止めると同時に、氷の飛礫(つぶて)が竜巻の中を縦横無尽に動き回っていく。


 コビーは制御を、風の中を動く氷の一定の動きを止めたのだ。一定の、規則的な動きから自然界の乱雑な秩序なき動きへと変わらせた。

 無秩序に、竜巻の中を動き回る氷は、中にいるコビーやアイストークにぶつかっていく。


「ここから先は……痛っ! ただの我慢痛っ比べ……だっ!」


 コビーの頭か心臓に氷が強烈に当たって倒れるか、あるいはアイストークが倒れるか。

 その二択である、とコビーはそう語る。


《えっ?! 何故そうなるっ?!

 ‐‐‐‐ちょっ!? 今、氷が金庫にっ?!》


 闇を纏った四肢でガードしようとするも、氷だけでなく自分の身体まで壊れてしまう事を判断したアイストークは、頭である金色の金庫を淡く光り輝かせた。

 と、同時に黒い執事のような人間体の身体が、一瞬でバラバラに分解される。そして小さな鉄片に変えると、その鉄片を操作させて金色の金庫と黒い金庫の2つそれぞれに硬くコーティングする。


「(闇を四肢に付与して攻撃力を上げる手段は、なにもお前だけではないんだぞっ!)」


 竜巻を解除して【氷】の魔法にて、右の拳に拳大ほどの大きさの氷を付与する。氷を纏って拳を少し大きめにして、そのまま漆黒の金庫の方を拳を振り上げて落とす。

 ごんっ、という鈍い音と共に、鉄片によって硬くコーティングしてあった漆黒の金庫が凹んでいた。


 ‐‐‐‐そんな中、後ろにてアイストークの金色の金庫は、薄く、だけれども確かに淡く光り輝いており、散らばった鉄片をかき集めて再び身体を再構築していた。

 しかし、殴って壊した漆黒の金庫は、先程の白銀色の金庫と同じくアイストークの身体には戻らなかった。


「よし、これで残りは1つ」

《壊す順番を間違えましたね、コビー。その漆黒の金庫は確かに闇を生み出すのには重宝するが、まだこの金色の金庫が、ワレの核が残ってる》

「(だろうな……核、だろうから、壊さなかったんだ)」


 頭にある事、そして身体を構築するのに使っているのが電撃である事を考えても、あのアイストークの身体で一番重要なのは確かだろう。

 ‐‐‐‐あの一瞬で、鉄片をコーティングした際、どちらをより頑丈に固めるかを考えれば、それは勿論核である金色の金庫の方であろう。だからこそ、漆黒の金庫の方を破壊したのである。


「(それに金色の金庫を壊すなら、合体してる時だ。分解されてる時の方が堅そうだし)」


 コビーは魔法でもう片方の手にも、同じように氷の塊をつける。

 アイストークは《ぐふふぅ……!》と不気味な笑い声を出す。


《漆黒の金庫には【闇】の魔法を生み出す魔道具を、白銀色の金庫には【光】の魔法を生み出す魔道具。

 その2つが入っていますが、この金色の金庫、【雷】の魔法こそが重要!》


 金色の金庫が濃く光り輝くと共に、アイストークの身体の周りに雷の龍が生まれていた。そして両の拳と両の足には闇ではなく、雷が付与されていた。

 先程まで龍は漆黒の金庫と白銀の金庫、四肢への強化は漆黒の金庫にと役割分担が為されていたが、今はその全てを1つの、金色の金庫で行っているようであった。


《この金色の金庫が無事な限り、このワレは無敵!

 そう易々と負けてはあげませんよ。これで止めっ!》


 金色の雷の龍に、雷の武装。

 そして先程と同じく、雷で高速移動して、背後へと移動する。


「はっ!」


 背後からの奇襲を警戒し、姿が消えたのを確認したコビーは氷を纏ったまま、回し蹴りを披露する。

 後ろから一瞬で詰め寄って攻撃しようとしたアイストークは頭を下げて、懐にきつい一撃を与えようと‐‐‐‐


 ‐‐‐‐ツルンッ


《‐‐‐‐?!》

「(攻撃をしようとした瞬間に対して、今まで普通だと思っていた地面が凍り付く。

 しかし俺がしたら気付く、けれども"カフェオレなら")」


 ‐‐‐‐今の今まで大した活躍もさせずに、空気のようにその気配を殺していたカフェオレ。

 脅威とみなさず、ただ居る者として扱っていた。と言うよりも、戦う暇もなかったという。

 そんな彼女にお願いしたのだ、《一番いいタイミングであいつの足元を凍らせて転ばせろ》と戦う前に。


"やッタ!"


 結果として、カフェオレは見事にその役目を果たしてくれたみたいである。

 転ばせるほどではないにしろ、アイストークの身体は思いっきり力んでいたのにもかかわらず、その力を込めるための足元が滑ってしまったのだ。一瞬、一瞬アイストークの身体は滑る。


「‐‐‐‐そこっ!」


 硬い氷で覆われた拳で、コビーは金色の金庫を腰を深く落として殴りつける。

 正拳突き、先程アイストークが披露した戦闘法と同じであった。


 金庫はひしゃげ、軋み、そして勢いを殺しきれずにアイストークの身体は金庫と共に飛んでいく。

 どんっ、と宙を舞っていたその身体は、近くの建物にぶつかって煙をあげる。




「やった、か……」


 コビーは一息吐いて、その場に座る。座る、と言うよりかは今まで慎重に張っていた気が一気に取れたため、こうなってしまったというだけ。ただの気疲れ、でした。

 命のやり取りをしていて、それが終わってホッと一息を吐く。そんな彼の行動を怒る者は居なかった。


"マすタ! だいジョうブ?"


 怒る者は居なかった、ただ心配している者は近くに居た。

 カフェオレは背中の4枚の羽をぱたぱたと動かしながら、コビーの元へとやってくる。


「大丈夫だ。いやぁ~、それにしても我ながらよく頑張ったものだよ」

"マすタ! すごカッた!"

「……ココアの相手をしていた甲斐があったな」


 ‐‐‐‐アルブレンド・ココア。

 魔法が使えないが、明らかに常人離れした槍の使い手であるコビーの妹は、コビーとわりかし年齢も近いせいもあってか、その訓練相手に抜擢される機会も多かった。

 魔法が使える、そんな利点(アドバンテージ)が意味を為さないほどの強さもあって、すっかりコビーは魔法を用いる職なのにも関わらず、近接戦闘が得意となってしまっていた。そのおかげで、先程のように殴るのだって躊躇なく、殴れたのはその辺りの経験が活きたからなのだが。


「なんにせよ、これで大丈夫だろう。後はあの金庫の中から魔道具を回収して、それでおしまい。

 カフェオレも頑張ったから、今日帰ったら上等な魔石をやろう。……それで、良いんだよな?」

"!? マすタ、だいスきっ!"


 嬉しそうに頬にすり寄ってくるカフェオレに対して、面倒くさそうに対応するコビー。


「金庫の大きさからして子供……でも入り込めないだろう。

 それだったら中に入っているのは、あのハチャメチャな行動を受け取るための通信の魔道具、だろう」

《まドウぐ?》

「金庫ってどう開ければいいんだろう? 先程と同じように壊しておこうか。

 中身、壊しても良いよな。うん、敵の手とか、そういう面倒なのに渡るのを阻止したと思えば‐‐‐‐」


 ‐‐‐‐ばきゅんっ! と、一発のレーザーがコビーの身体を貫いていた。



《えっ? そうなる? まだ、戦いは終わってないですよ?

 油断したのはそちらだから、こっちの手柄で良いよね?》


 "彼女"は闇夜でもきらめいて光り輝く、金色。

 髪は腰まですーっと伸びるロングストレート、スカートはくるぶし丈まで伸びる金色のドレスを着ており、その手には"死んだ2人の頭"を握っていた。


《‐‐‐‐魔道具って言ったけど、"コレ"が漆黒と白銀の金庫の中身なんだよね。

 漆黒の金庫の中に入っているのは【闇】の魔法を主に使っていた魔法使いで、白銀の金庫の中に入っているのは【光】の魔法を使っていた魔法騎士……だった、かな? うろ覚えだから、どっちか忘れてるし、どうでも良いよね。

 とある魔法使いの死んだ頭、人間なんてワレらからして見れば道具だから、"魔"法使いという名の"道具(にんげん)"と見れば、なにもおかしなことなんてありませんよね?》


 彼女の後ろには扉の空いた金色の金庫が置かれており、背中には"6枚の羽"が生えていた。


《改めまして、自己紹介をさせていただきましょう。

 世界をしろしめす組織【私は覗く(アイストーク)】所属の、先程まで金色の金庫にてあなたと戦っていた妖精、【エイクレア】と申します》


 全身金色の、6枚の羽を持つ人型の上級妖精の姿がそこにはあった。

エイクレア∩゛ヽ(。・ω・。)《私、参上!》

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