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暇つぶしのために王子は、ようせいを育てる。  作者: アッキ@瓶の蓋。


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11/19

若者首脳会談

 3日後、ちょうど近くの交流館にて各国の王子が集まって会議を行うというイベントがある日。

 【魔術師殺し】として暴れまわっていたコビーの妹、アルブレンド・ココアはようやく目を覚ました。


"マすた、めサメた!"

「あぁ、そうだな。けっこう目覚めるのに、時間がかかったな」


 ちなみにここ数日の間に、コビーが暇つぶしとして飼い始めたカフェオレの会話力はメキメキと上昇傾向にある。以前だったらただ唸っていたり、鳴き声を出してるような声だったのが、凄い成長である。


 ここは、コビーの自室。

 アイストークとの出逢いの後、トルテッタの手を借りて寮へと連れ帰られたココア。3日間も眠り続けていた彼女は、今ようやく目覚めようとしていた。


「うっ……ううっ……」


 寝苦しそうな声と共に、目を覚ますココア。

 まぶたを開けると共に、人形を思わせるガラスのような瞳がこちらを覗いていた。


「ブラザー、ブラザブラザ? 目が覚めたらコビー兄様、これはいったい?」

「どうやら、覚えてないようだな」

「おぼえ、てない?」


 ぽかん、とした様子で呆けた様子で起き上がってこちらを、コビーの方を見るココア。


「コビー兄様、居るという事はここは共和国の学生寮? 何故、私はここに居るんですか?

 ティーチ、ティチティチ。教えてください」

「……なにから話したモノか」


 と、コビーは部屋の隅に置いていた金庫槍を手にして、ココアに見せる。


「金庫……槍?」

「原理は良く分からないが、魔道具を金庫の中に入れることでその効果を使うことが出来るという不思議な槍だ。なにから話したら良いか分からんが、とりあえずこの金庫槍は元はお前の持ち物、だったんだ」


 そして、コビーはココアにこれまでの情報を可能な限り与える。


‐‐‐‐ココアが【魔術師殺し】として、多くの魔術師を襲っていたこと。

----この学園の生徒であるタタン・トルテッタに狙いを定めて、生徒会長にコビーが護衛を依頼されたこと。

----ココアから槍を離したら、アイストークと名乗る謎の人(?)と出会ったこと。


 そこまで聞いたココアは、ふむっと考え込む。

 その際に胸の下で腕を組むことによって、12という年月では考えられないほど大きく実ったものがさらに強調されている。この光景を特定のとある人物が見ていたら、恐らく嫉妬でどうかしていただろう。


"むゥ……"

「状況に関しては、だいたい理解しました。そしてコビー兄様、私の胸を凝視しているこの小さなのは、何者ですか?」

「そいつはカフェオレ、ちょっと前から飼い始めている妖精で、簡単に言えばペットのようなものだ。頭は良いし、自分で考える力もある。そこまで気にしないで大丈夫だ」

"カフェオレ! ワたしのナまエ!"

「……なるほど、了解しました」


 ‐‐‐‐相変わらず、可愛げのないやつである。

 コビーは淡々と、冷静に情報を聞いているココアを見て、そう思った。


 彼女も昔からこうだったわけではない、むしろ魔法が使えないと知ると駄々をこねて周囲を困らせる"こまったちゃん"だった。

 彼女が変わり始めたのは、槍を習い始めた頃から。

 魔法が使えないため、その情熱を別の事に向けてほしいからと父親である国王が武芸の達人を紹介して、それで彼女が習い始めたのが槍。魔法の才能がない代わりに槍の才能はものすごくあったらしく、彼女はメキメキと上達した。そして、その影響からか、武芸者としては精神を鍛えることも意識しなければならないからか、このような可愛げのない性格に育ってしまったという訳である。


 閑話休題、コビーは今度は逆にコビーに対して聞き返す。


「こちらからも聞いておきたいんだが、逆にココアはどこまで覚えているんだ?」

「‐‐‐‐私の記憶、ですか」


 今回、気になったのはココアの記憶がどこの時点で途切れているか。

 それが分かればあの金庫頭、アイストークの事も分かるかもしれない。

 コビーがそう思って尋ねると、ココアは少し考えているようで‐‐‐‐


「‐‐‐‐確か、風車国アルブレンド(いえ)でゆっくりしていて、散歩ついでに裏々山くらいに行こうかなと思いまして」

「散歩ついでに馬車で一日かかる距離を?」

「ノット、ノトノト。いえ、20分、30分程度かと」


 相変わらず、運動神経だけは異常に良いココアである。

 若干、いやかなり呆れながらも、コビーはココアの話を聞いていた。


「その最中に、アート、アットアット。なにか芸術的な、綺麗なものを見つけたような……?」

「その後の記憶は?」

「‐‐‐‐ソーリー、ソリソリ。すいませんが、覚えていません」


 考え込んでいるようだけれども、やはりココアはなにも思い出せないみたいである。

 恐らく、その"綺麗なもの"が金庫槍、もしくはアイストークに関係しているものなのだろうか。そこで操られた、だからその辺りの記憶がない、のだろうか。


「……分かった、とりあえず今は休め」

「はい、ではあそこでジト目でこちらを見ている妖精をダウン、ダウンダウン。下がらせてください」

"ジとォォォォォォォォォォォォ…………"


 はいはい、と軽い口調で言いながら、コビーはカフェオレをひょいっと摘まんでいた。

 その前までココアのことをジト目でじっくり見つめていたカフェオレだったが、コビーに摘ままれて嬉しそうにしているのをココアは見ていた。


「(ハート、ハトハト。コビー兄様は妖精さんに愛されていますね。

 あぁ、背中の羽が綺麗ですね。表と裏のデザインが違うので、正面と背中の印象がだいぶ……。あぁ、私も妖精が欲しくなりますね)」


 と、顔は相変わらず人形の面のようになりながらも、ココアはきゅんきゅんしながら、そんな事を考えていた。その時、ココアは急になにかを思い出していた。


「金庫頭……それに首脳会談? まさか、これってコビー兄様が言っていた洗脳された頃の記憶?

 コビー兄様、なにか急にリメンバー、リメンバリメンバ。思い出したんですが、これって多分、コビー兄様が‐‐‐‐」

「別に知りたかったわけではないんだが」


 首脳会談。近々行われる予定の首脳会談は今日の各国の王子姫5人が揃って会談する、という若者首脳会談なるものだけである。

 恐らく、ココアが思い出した、"首脳会談"というのはそれだろう。


「けど、今日の首脳会談‐‐‐‐うちの国からは、"あの姉"が来るんだよな。

 ‐‐‐‐それだったら助けないとな」


 そう思いなおして、コビーは淡々と部屋の外に向かって歩いていく。


"マすタ? いイ顔シてル?"

「オフコース、オフコスオフコス。だって今日、若者首脳会談に登壇するのは、コビー兄様の大好きな、【アルブレンド・ラムネール】姉さまですし」

"むゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……"

「……? また、ジト目?」



 ちょうどその頃、学園近くの共和国交流館には5人の若者が揃って、1つの部屋にいた。全員がそれぞれの椅子につき、会談をいつ始めても良い雰囲気が漂っていた。

 若者首脳会談、それぞれの国の未来を担う王子や姫達が未来を語り合う場には、共和国に揃い踏みしていた。


 一発当てる逆転の国である鉱山国コールフィールドからは、継承順位第1位の【コールフィールド・モナカルト】王子。

 あらゆる書物を保存する図書館国ブックブックからは、継承順位第8位の【ブックブック・パルフェ】姫。

 魔法よりも科学の発展を優先する工場国アイアンフォースからは、継承順位第85位の【アルザーク・ルカツドン】工場長。

 伝統と格式を大切にする庭園国テトラポットからは、継承順位第5位の【テトラポット・ダージリン】姫。

 そして、平和と安定を主とする風車国アルブレンドからは、継承順位第3位のアルブレンド・ラムネール姫。


 簡単にそれぞれの容姿を説明すると‐‐‐‐


・赤髪ヤンキーの、モナカルト王子

・おっとり金髪ロングの、パルフェ姫

・ボウズの渋顔おっさんの、ルカツドン工場長

・黒髪ショートの足長ドレス美人の、ダージリン姫

・魔女帽子を被った三つ編みお姉さんの、ラムネール姫


 ‐‐‐‐という感じである。



「‐‐‐‐じゃ、今日の首脳会談を始めましょうか。先月は確か、今後の条約撤廃あたりを話し合っていたんだっけか?」


 と、30代くらいの、この中では一番歳をとっているいると思われるアイアンフォース国のルカツドン工場長がそう言って会議を始める。

 力があるものが、技術力のある者が全てというこの国にて、王家において重要な物資の発明をして工場長の地位と王位継承権を得たルカツドン工場長。

 30代くらいの見た目に見える、実年齢19歳という老け顔おっさんの彼がそう話し始めると、その隣に座っていたラムネール姫が口を挟む。


「いや、だわ。ルカツドン工場長ちゃんったら。

 そんなつまらない、どうしようもない話だなんてこんな会議の場で話すべきことじゃないでしょう?」

「……つまらない事か? 俺、なにか間違ってたりするのか?」

「ルカツドンさん、ラムネールちゃんの言葉はあんまり重要視すべきじゃないのでして。彼女はその……頭が良いのでして」


 どこか遠慮したように語る、おっとり笑顔のほんわか系の少女、パルフェ姫。14歳という若さの彼女は、腰まで伸びている金髪ロングストレートをくるくると右手で触りながら、もう片方の左手で10数枚の書類を取り出していた。


「……パルフェ姫、それはなんだ?」

「あなたも数日中に貰うであろう、ラムネール姫からの完璧(パルフェ)な提案書なのでして。彼女の頭脳なら、こんな事でも可能でしょうなのでして」


 パルフェ姫から書類を受け取ったルカツドン工場長は、それを見て息を呑む。


 ‐‐‐‐完璧(パルフェ)。まさしく、完璧(パルフェ)であった。

 10数年にも渡る五か国間に繋がる商売などを始めとした12の契約事項、それが全て無と化しているのだ。いや、全てがより良い形で解決している。


「(流石は、アルブレンド・ラムネール。女だからと、継承順位は低めだが、彼女の頭脳は優に100年先をいっている)」


 正直なところ、この会談はただの茶番だ。5人が仲が良いことを国外に示すための茶番でしかなく、会談で得られたと思われている解決策などは全てラムネール姫が考えたものだ。

 コールフィールドで、新たな農作物を作るようになったのも。

 ブックブックに、貯蔵されている詳細な情報が書かれた書物が寄贈されたのも。

 アイアンフォースにて、新技術の化学装置が作られるようになったのも。

 テトラポットの茶葉の歴史どころか、それ以前に茶葉そのものの品種改良にも着手。

 ‐‐‐‐万能、彼女を言い表そうと思えば、そういう単語を使わなければならないだろう。彼女がちょっとした暇つぶしで行った相談で、いったいどれだけの偉業が為されたのかは計り知れない。


 惜しむらくは、そんな彼女に国を良くしようという気が一切ないという事だろうか。あと、彼女の身体の一部が19歳という年齢にしてはまったく成長していない、まったくの絶壁というところだろうか。

 神もまた凄すぎる才覚を与えたが、それでも身体に関してはそこまでではなかったみたいである。


「お前が本気でやれば、世界の頂点なんて簡単に取れるだろう。ラムネール」

「いや、だわ。モナカルトちゃんまでそんな事を言い出すだなんて。わたし、国造りに一切興味ないのよ。そう言うことは継承順位1位の、【アルブレンド・シュトロムース】兄様に任せときゃ良いのよ」

「……それでラムネールが納得なら、良いけどよ」

「そうっ! それにこの会合は皆で仲良くするのが目的。親が仲良しなら、子もみーんな仲良し。それがこの会合の目的なんだし」


 実際、その目的を額面通りに受け取っているのは、ラムネールただ1人。

 後の4人は‐‐‐‐こういった会合に出席していて、他国との繋がりがある事を利用して継承順位を上げ、王位を手に入れようとしているのである。


「今はね、この共和国にはココアちゃんも来てるみたいで、私、嬉しいの。

 留学しているコビーちゃんも合わせて、2人とも大好き。私の、お気に入りだったりするわ」

「(可哀想な、コビーちゃんとココアちゃんとやら)」


 ラムネールは異常なまでの、化け物じみた才覚の持ち主である天才。その上で、国づくりなどの政策にまったく興味を持たない、未来や将来に期待していない。

 そんな人間が"お気に入り"と称して、構われる人間がどのような性格思考になるのか。大人びた喋り方になるくらいなら良いだろうが、もし仮に彼女の主義まで、未来や将来に対してさしたる希望を持たない正確になってるかと思うと忍びない。


「(過ぎたる才覚は、凡人にとっては猛毒だ。こんな強烈すぎる光があったら、確実に性格が歪んでしまっても仕方があるまい。それだけ彼女は、才能が強すぎる)」


 ルカツドン工場長は、そんな事を思いながらラムネールを見ていた。

 こういった、異常なまでに強すぎる才覚の持ち主とか、自分よりも明らかに強すぎる者との対応も、これから先、国の代表を担うのならば必要となってくる事だから。


「‐‐‐‐もうあかんわ」


 と、今の今まで喋らなかったダージリン姫‐‐‐‐艶のある黒髪が特徴の、和服を着崩した格好で来ている姉御さんは、口を開くなり、そんな言葉を吐き出した。


「ごめんな、みんな。うち、もうダメみたいやわ。この会談、抜けさせてもらいます」

「……どうしたの、ダージリン姐。それは全然、完璧(パルフェ)じゃないと思いますよ」


 いきなり脱退を宣言したダージリン姫に対して、この中でも一番仲が良かったパルフェ姫が歩み寄って、脱退を止めようとしていた。


「……パルフェ、うちはな。もうあかんねん。この会合はそれぞれの国の代表、つまりは長になるんを目的とした会合や。

 けどなぁ、庭園国テトラポットの長に未練はないんや。あの古臭い錆びた伝承だけを心の支えにしとる、そんな国をうちは継ぎとうなくなったんや」

「嘘……それは完璧(パルフェ)な回答ではありません。この会合は元々、ダージリン姐の提案から始まったのに」

「堪忍してな、パルフェ。やけどなぁ、それだけやないんや。

 みんなに報告があるんや、今日ここに来たんわ、皆に報告があるから。それはな‐‐‐‐」



 「‐‐‐‐こういう事や」と、ダージリン姫はそう言って"ざくりっ"と剣をパルフェ姫に突き刺していた。


「「「「‐‐‐‐っ!?」」」」


 刺されたパルフェ姫、それだけではなく他の3人にも大きな動揺が襲う。


「なっ、んで……ダージ……リンねぇ……」


 がたり、とパルフェ姫は音もなくどさりと、倒れていた。

 刺されたお腹から大量の血がどばどばと流れ落ちて、大きな血溜まりとなっており、その中に倒れたパルフェ姫の身体が、彼女の着ていた真っ白なドレスが真っ赤に、深紅の色に染まっていく。


「むっ……ダージリン姫ちゃん。あなた、今なにをしているのかをちゃんと理解してるの?」

「そんな事を言ってる場合じゃないぞ、ラムネール! 魔法が使えないよう、安全対策を施された部屋で、こいつ、どうやって武器を?!」

「おいっ! 何とか言いやがれっ!」


 3人がそれぞれ、非難の言葉を浴びせる中、浴びせられた当人であるダージリン姫はと言うと、けろりとした、むしろ晴れやかな顔で3人を見ていた。


「勿論、分かっとるわ。こないな事をしでかしたからには、継承権はく奪では収まらへん。

 良くて投獄、悪うて死罪、やろな。見せしめにはそれくらいせんと、あかん。

 ‐‐‐‐でもなぁ、うちはもうそんなこと、ちーとも怖ないねん。何故ならな」


 そう言ってダージリン姫は、長い着物で隠れていた足を見せて‐‐‐‐


「‐‐‐‐世界は、今からうちらが取るからや」


 ‐‐‐‐右足に取り付けられた、"淡く光る金庫"を見せつけるのであった。

カフェオレ( ;∀;) "ピギュピギュ!(訳;人多すぎ! 覚える気ないよ!)"

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