4話 勝負と奇策(中編)
美桜の場には後衛にフレエル、ボグナー、アルボの三体に対し、俺の場にはユニットが一体もいない状況から始まった五ターン目のスタート。
「資源を五つ使い、《葉獣アル・パード》召喚!出た時効果により山札から《黄泉の天獄龍デス・フリーディア》を手札に加え、さらに資源二つを使い、《カース・ストーム》を使用し、手札を全て墓地へ置き、墓地に置いた枚数だけ引く――だから、二枚捨てて二枚引く」
「なるほどね、ともちゃんはデス・フリーディアの召喚時効果で自分の場のユニットを減らすというデメリットを『帰還』で場に戻すことでデメリットを消そうとしているんだね」
読まれている。それもまるで前にもこのデッキと戦ったことがあるような口振り。――ということは対策も出来てるってことを指す。
「でも、私はそんな簡単に出させないよ!!『対抗』スペル《死を振り払う浄光》!!私に奇襲なんかかけようとしても無駄だよ」
《死を振り払う浄光》は相手のターン中に相手の効果によっていずれかのプレイヤーの墓地が二枚以上増えた時に手札からコストを支払わないで使うことが出来、『相手の墓地にあるカードの枚数を数え、全て持ち主の山札の下に置く。その後、数えた枚数分カードを引く』という墓地利用するデッキに対して有効で、さらに手札切れを起こしやすくなる美桜のデッキには相性がいい。おかげで美桜の手札は浄光一枚だけだった手札が六枚になってしまった。
「これで古城エリアお得意の『帰還』は出来ないね」
「あ、あぁ……エンドだ」
「スタート、ドロー、セレクトで資源をチャージして……行くよ、《古代魔砲バルザトル》を後衛中央に召喚!『先導』により召喚酔いしない上にバルザトルの効果で後衛にいても攻撃可能!!パワー5000のバルザトルでパワー3000のアル・パードを攻撃!戦闘時に入るけど『対抗』カードはある?」
「ない」
「じゃあ、このままバトルしてバルザトルが勝ったため、ともちゃんの領地を一枚攻略。これで私がリードだね」
「『反撃』ユニット《遍く茨龍グラパルド》を前衛の左へ召喚し、出た時効果で美桜の資源二枚を墓地に俺の山札から二枚資源に置く……――これでバルザトルからケルガヌスの流れは変えられたはず、さらに次のターンで俺の資源は十になる。これで次の引き次第ではフレエルを封じれる。」
「ヤバいな、グラパルドを引き当てちゃったか」
途端、聞きなれない男の声が入る。気付けば、いつの間にか俺たちの周りには人集りが出来ていた。恐らくこの声はギャラリーからの声だろう。
《遍く茨龍グラパルド》は領地から手札に加わる時にかわりに場――ウィロードだと戦場に出す効果を持っていて、召喚時効果はさっきの通り、相手の資源を二つ削り、自分の資源を二つ追加する効果になる。さらに自分のターンに資源を六つ以上使うと相手のユニット一体を問答無用で資源へ送るという効果を持つ大型ユニットだ。
「他に後衛にいても攻撃できるユニットがいないなら俺のターンに入るが……」
「いいよ、私はターンエンド」
俺はターンを進行している間、美桜は考え込んでいた。恐らくはさっき場に出てしまったグラパルドで計算を狂わされたのだろう。
そこで俺はさらに追い打ちを掛けにいった。
「資源を八つ使用し、スペル《ホープ・レス》。お互いの手札を全て墓地へ」
「あっ!浄光が落ちた……カース・ストームで手札変えてくると思ったのに」
「さらに今手札から墓地に送ったことにより《妖樹傀儡フシュー》を墓地に置く代わりに戦場に出して、出た時効果で自分の資源を二枚破壊して、山札に送られたデス・フリーディアを再び手札に加える。そして、資源を六つ以上使ったので美桜の場にいる《彩花の天使フレエル》を資源に置き、ターンエンド」
美桜のターンに回り、スタートとドローを行い、セレクトフェイズは何もせずにメインフェイズに移った直後、美桜の口が開く。
「昨日と今日で見違える程に強くなったね、ともちゃん……――でも、私の切り札が《雷霆獣ケルガヌス》だけじゃないってこと教えてあげる!!」