第6話 良いですよ~だ……ふ~ん、だ……
まぁ……薄く伸ばしたのりのような茶番です(おい
まったりペースで、同時進行している別作品とは少し違うテイストを盛り込んでいるつもり。
御容赦くださいませ……
( ノ;_ _)ノ
「もう、先輩……しっかりしてくださいよね~……」
「わりぃ。トオルちゃん……ヨロシク頼んますッ!」
立場は一転、下克上。
トオルは、『伏せ』の体勢で懇願する先輩刑事の失態を埋めるべく、勤務に励む。
腹部を晒さなかったのはプライドが高い犬種なのだろう。
クゥンと哭き、謝罪の意を示すユージに、何処と無く愛嬌を感じてしまう。
思わず頭を撫でようとしたが、その犬はあくまでも先輩なので、ぐっと我慢し、敬うに徹する。
実は先程、先輩刑事のユージが机の中も調べたと言っていたが、一部嘘をついていたのだ。
1ヶ所だけ開かない引き出しがあったのを内緒にしていたらしい。
眉間に皺を寄せて注意深く訝しむまでもなく、トオルはなんとなく雰囲気で察していた。
手先が器用な事で署内では有名なユージでさえ解除出来なかった机の引き出しに、トオルは手に入れたばかりの『masterkey・type1』とやらを早速使ってみようとした。
アイテムBOXという名の上着のポケットをまさぐり、鍵を手に掴む。
引き出しの鍵穴に向けて差し込むと……
---『masterkey・type1を使いますか?yes/no』---
と再び脳内にメッセージが流れ込む。
その手間に、もう既に面倒臭さを感じたトオルは手早く『yes』を選択。
するとカチリと鍵穴は音を発て引き出しは開いた。
その中には、やはりくるくると回転し浮かぶ1枚の『地図』があった。
また面倒臭い行程を踏まねばならないのかと嫌気がさしたのだが、致し方無く、ルールに則る。
---『map・type1』を入手しました。アイテムBOXに入れますか? yes/no---
はいはい、と半ば諦めたかのように、トオルは適当に心の中で呟いた。
ヂャッカ。
機械音は瞬間、鳴り響く。
[ ◇『map・type1』◇ 『zone・廃墟』の全体地図を見る事が出来る。使用回数は無限。取り出し可能。 ]
視界に浮かび上がるデジタルな升目のひとつが更に埋まった。
先程の『masterkey・type1』に続き、数マスを置いて注ぎ込まれていた。
正直、胃袋の中は空っぽなのだが、また先程のように失態を晒す羽目にはなりたくない。
上部にあるカーソルを地図に合わせ、選択肢の中から『取り出す』をチョイス。
突然、机の上に大きな地図が顕れた。
「お♪ 流石トオルちゃん。お見事ッ!」
ぱふぱふと拍手をして御機嫌を取ろうとするユージを他所に、トオルは地図と向かい合う。
「地下……地下……無いなぁ……ん? ここ……妙だなぁ」
薄惚けた地図を元に、指でなぞる。
トオルは机の上に拡げた階下の図面と睨み合い、答えを導きだそうと検討していた。
明らかに、地下への階段といった記号は記されていなかったが、気になる謎の空間をトンと軽く人差し指で叩く。
「多分……この辺が怪しいんですけど……」
先輩達は興味深く除き込み、タカが推測を告げる。
「確かに気になるな。もしかしたら……隠し部屋かもな」
「ま、行きゃあ分かるっしょ♪」
軽い返事で応えるユージ。
最早、先程の謝意はこれっぽっちも感じられない。
前の世界でも同じだったが、利用されてしまった事にいちいち腹を立てていてはキリがないので、敢えてトオルは大人しく彼に従う。
「ですね。行ってみましょう!」
心強い戦力が増えたので、トオルは取り敢えず乗っかる事にし、3人の刑事達は1階の現場へと向かったのである。
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「……ここか……見た感じ普通の壁だけど、な?」
ユージはペタペタと辺りを手探り、探索している。
肉球の跡が付着しては新たなアートが壁一面に刻まれてゆく。
「いや、これ見てください。ほら……明らかに部屋が有りますよ……」
極力小さめに折り畳んだ地図を片手に、掛けてもいない銀縁眼鏡をくいっと持ち上げる仕草で秘書のように演じるトオル。
その偉ぶった感に少し鬱陶しさがあったので、ユージは軽く彼の額に指を弾く。
「あ痛ッ……くない」
「ナマ言ってんじゃないよ~、トオルのくせに」
「そうだぞ、トオルのくせに」
のび太ではないのに、その言い草が彼の立ち位置をよく表現していた。
その台詞に酷く傷付いたトオルは、もう帰って飯にでもしようかと諦めかけたが、ふたりをこのまま放置して課長犬にガウガウと叱られるのも嫌だったので敢えなく留まる。
「はぁ……良いです、良いですよ~だ……ふ~ん、だ……」
ため息混じりに子供のように愚痴り、トオルは自身で辺りを調査し始める事にした。
「んっと……何か無いかな~……」
一先ず、地図をアイテムBOXに仕舞い、注意深く眼を凝らす。
感覚を研ぎ澄まし掌で壁一面を伝わせた。
すると、またもや例の音声が脳内に語りかけてきた。
---『map・type1』を同期・version.upをしてsearch機能が実行可能になります。実行しますか?yes/no---
……言っている意味がよく分からなかったが、便利そうな響きだったのでトオルは気軽に採用してみる。
時計回りにデジタルラインは円を描き始め、やがて完了と表示された。
画面の片隅にsearchの文字が点滅している。
「これか、な?」
指で優しく撫でると突如、透き通るようにして壁の内部が脳内に映し出されてゆく。
「うわ……何これ……」
俺は人間を辞めたと叫びたいトオル。
まぁ、これはこれである意味、先輩達と同類になれたかな?などと現実逃避に浸る。
次々と浮かび上がるビジョンに酔いを感じながらも、懸命に行く末を見守る。
ピピピと音が鳴り、壁の1箇所に赤い線が集中しては何かを示し出した。
取り敢えず大体の場所は判明したので、瞼を抑える事で視界を切り替える。
余程、精神を削られた様子で、トオルはふらつき、腰を下ろしてしまった。
「おいおい……本当に大丈夫か?」
タカはそんな彼の様子を見て、割りと真剣な表情でクゥンと心配そうに肩に手を掛ける。
ちなみに、ユージは外の様子を窺っていた。
未だ、犯人のワゴン車は停まったままであるのを確認している。
「だ……大丈夫……です……はぁ……はぁ……」
それもその筈。
何せ、つい数分前に胃袋の中身を全て吐き出してしまい、空腹なのが更にトオルを苦しめていた。
次いで、謎の現象に侵略されているので実際には本人が感じているよりも疲労困憊しているのだ。
それでも、必死に己を奮い立たせ、トオルは先程の怪しい箇所へと身体を引き摺らせる。
「こ……これか……?」
壁のかなり下の方に極僅かに凹みが見受けられた。
ふと、指を押し込んでみるが、反応は無い。
---『masterkey・type1』を使いますか?yes/no---
言葉を発するのも辛そうに、トオルは意思だけで許可し促す。
「「うおッ!?」」
突然、音も無く開かれる壁面。
即座にその場から離れ銃を構えるユージ。
タカは倒れる寸前のトオルを庇うようにして抱き締めていた。
傷付けるような暴言を吐きながらも、何だかんだで彼を信頼しているのがふたりの良いところだろう。
「よくやった、トオル。あとは任せろ!」
地下へと続く階段へと勇ましく足を運ぶ先輩達のふわふわの尻尾を眺め、トオルは意識を失っていったのであった。
次回は11月4日は土曜日辺りに。
ではっ!
基本的に、此方の作品は日にちは疎らながらも。
宣告した18時00分を投稿時間にしたく存じ上げまするるる~……
( ノ;_ _)ノ