第1話 まぁ、お茶の子さいさいッスよ
とあるメディアが食いつきそうだった。
『雪男はいた!!』と。
きっと後で複数の証言者にモザイクがかかる。
だがガセネタではなかった。
(っ'-' )╮ =͟͟͞͞☃
揉めば揉むほど気持ち良い。
始めは生温かったが徐々にーー誰もが興奮することだろう。
ただ、それは決して下ネタなどではない。
ホッカイロを考え、作った人は凄いと思う。
そして、それはこの異世界でも当然のように流通していた。
いま到来した季節は4番目ーー、春夏秋を経て。
ひどく吹雪く雪山でなら尚、重宝されている。
四季折々ーー
常にモテることに努めていた彼からしてみれば馬鹿馬鹿しいとさえ。
だが、仕事だから。 しょうがないことだった。
「なにボサッとしてんだ!?」
「トオル、そっちに行ったぞ!!」
いつもなら、そんなのは気にせず。
出会った先からナンパしているハズだった。
ゲレンデでの的中率は、ほぼ100%。
口達者ーー、それは彼の代名詞とさえーーー
「退けやぁぁぁ!!」
むさ苦しい同性にはなんら興味すら覚えない。
荒々しく叫ぶ輩にたいして、するりと。
「はい。確保」
キンキンに冷えきった手錠をはめた。冷たい。
未確認生物ーー、雪男を目の当たりにしても動揺せずに。
ゲレンデの支配者はまるで自分だと謂わんばかりに。
「よっしゃ、よくやった」
「まぁ、お茶の子さいさいッスよ」
今どき聞いたことがない。
"へそで茶を沸かす"にも等しい。
そんなの、熱くってしょうがないだろう。
「しゃあない、珈琲でも奢ってやるか」
「アザーっす」
雪山での窃盗犯を捕まえた刑事たち三人はようやく休憩所にたどり着く。
そこで目にしたのは懐かし過ぎるーーカップラーメンの自販機だった。
当時かつて、スケートリンクの片隅などで目にしていた。
「なんで…………そればっかナンだよ!!」
全部シーフード味だった。
醤油味だって要るだろうよと、トオルは。
珈琲ばかり充実していた自販機に憤りを隠せなかった。
緑や赤のうどんすら見当たらない。
この世界が狂っていると感じたのは、この時が初めてだったのかもしれない。
(U´・ェ・) (^ω^U)
「あ。動いた」
優しく触れると、確かに胎動を感じる。
これは確実にーー、アレだ。
身に覚えもないのに、どうしてなのか。
「ちょっと……アンタ!!」
「ひぇぇぇ……ごめんなさいッッッ!?」
この異世界で初めて恋したひとーー、ドラゴンのベニーが玄関口で睨み付けてくる。
ただトオルは、マーメイド族の和燐がせっせと編んだマフラーを首に回しながら。これはこれ、それはそれなんですよと言い訳がましくするしかなかった。
「いってきます!!」
「いってらっしゃい♪」
ーーと、勢いよく飛び出したら突如。
予想外な光景が待ち受けていた。
ずずぅん。ずずぅん。
ビカビカビカ。
ぎゅうん、ぎゅうん。
「ぐぎゃああああ、ぅおおおおおん!!!!」
これってアレじゃあないかな?
怪獣ってヤツだろ?
尻尾から始まり背筋を伝う蒼白い。
睨まれただけで失神しかねない。
まるでG○DZILLAみたいなヤツが目の前にいた。
つい先日雪男と出逢い、それだけでも衝撃的だったのに。
何千枚だろうが始末書で済ませられるなら、今すぐにでも引き返したい。
「どうしたんですか?」
いってきますのハグをしてしまったから。
トオルは最早、あとに戻れなくなってしまった。
「もしかしなくても、これって夢だよねーー」
遥か彼方から向かってくる。空飛ぶ亀の姿を目にした。
夢の対決を観れるのならばーーこれはこれでありなのかもしれない。
そういえば東京タワーの天辺に巨大な繭があったような気がする。
ただそんなことよりもーーー誰も気づいてはいなかったのだろうか。
あわてふためく通行人たちは、蒼空が真っ二つに割れていたことに。
「これって…………俺だけ??」
光輝く羽を背負い羽ばたく天使と、油断したら呑み込まれてしまうほどの禍々しい悪魔の眼差し。
愉悦に浸る何かがいたのは間違いなかった。
「ちょっと和燐ちゃん、もう一回だけ」
「はい、トオルサマ♪」
振り向き様に抱き締めた。
覚悟を決めるために。
ーー修正しました。
間を空けたら登場人物の名前を間違えるとか。
あるあるですよねー(え?)どうかご勘弁を!




