第14話 よっしゃ、あとは知らないっ
ーーー鋭く尖った牙が見える。
そもそもどうしてこうなったのだろうかと思い返す。
それはとある魔法使いによる影響だろう。
愛嬌たっぷりなネズミの姿がじつに忌々しかった。
「うお!? ちょっ、ちょっと!!」
最新のレジャー施設でも味わったことはない。
まだ、バンジージャンプのほうがマシだった。
目の前に大きく開かれていたのは、肉食獣の上顎と下顎らしかった。
「食べられて堪るかよッ!!」
必死に足掻こうとするも、きつく縛られたベルトはほどけない。
トオルはさらに、関わった人物の生き様に飛び込んでゆくのであった。
「うわあああああああああああああああああ!?」
(U´・ェ・) (U´・ェ・) (U´・ェ・)
斑模様に特色があり、しなやかで洗練された身体とーー。
時折覗かせる八重歯は、肉食獣のまさしくそれ。
その後ろ姿からはじつに誇らしい。
二人の先輩よりの、それよりもっと。
「ねえ、お兄ちゃん」
「ン? なんだい??」
仲睦まじい麗らかな日々を、ただ過ごしていた。
お互いの尻尾はまるで嬉しそうに揺れている。
シスコンーーと言われても否定はできない。
二人っきりの狼族だった。
そんな穏やかな日々はまさかーー、ドン底に落とされることとなる。
最愛の妹は首輪に繋がれていた。
「お兄ちゃん!!」
「みるくッ!!!!」
「ハハッ☆ 良いねー、本当にネ♪」
いまだに忘れられない。
自分の、最愛の妹の悲鳴は、絶叫は。
あのシルエットは。
「みるくちゃんって言うの~? ハハッ☆」
「あ~ら残念ねぇ、だったら二人一緒にしましょうか?」
「ン~~~、それは面白くないかな。ハハッ☆」
「やめろッッッ!! 」
妹が居たからこそ、精一杯頑張って生きていた。
父と母の記憶もない。
ただ、たらい回しにされてきた。
そんなーー貧相な暮らしを過ごしてきた矢先に。
「じゃあ、お別れだネ、ハハッ☆」
「うわあああああああああああ!!!!」
今でものうのうと生きている。
そしてそれはいつしかーー、無能だった警察へと矛先を向けることとなった。
「お前らも…………同罪だ!!」
ウルフウッド、レイノルズ。
彼はただ復讐を誓う。
ただ茫然とするしかなかったが。
「いやーー、関係ないんじゃあない?」
トオルは呟いた。
まざまざと見せつけられる彼の経緯と、その半生に。
若者の主張ーー、そんな気がしてならなかったが。
「あはははははは! まったく本ッ当にくだらないね、ハハッ☆」
まだ夢の中だったが、胸糞悪いのは否めない。
目覚める前に、いろいろ整理してゆく。
どうしてこうなってしまったのかーー、どうすれば解決されるだろうかと。
ーーーどこからやり直しますかーーー
そんなことが出来るのか。
はじめからやり直したかったけど。
神様、第3章からお願いしますよー。
途中から、いや始めから。
「ねえ、先輩ーー、アレって何スか??」
「ン? 何言ってんだお前?」
「相変わらず、ワケわかんねぇナぁ?」
満月の横に浮かぶーー、球体を目にしている。
不思議だった。
「アレって、俺だけにしか見えていないのかな……」
13日の金曜日。
斧を担いだウサギの姿は、まるで首狩り族のようだった。
今宵もまた睡眠不足。
夜勤というのは、まさしく地獄だ。
「夢オチだったのかなァ?」
たった3分のカップ麺を片手にして、箸が止まる。
眠たくって、仕方がない。
「よっしゃ、あとは知らないっ」




