第11話 そうじゃあないんだけど。
それは尽きないーー、生きてゆく限り。
客観的にみても、何が正しくて何が悪いとか。
神様でも全部裁くのは不可能だったのだろう。
とくに、彼の場合は理不尽過ぎていた。
「畜生が…………あんなに尽くしたってのに!!」
産まれた記憶などとうに忘れてしまった。
平和にしたいという、ただそれだけで。
忌々しいーー、その感情だけが沸々と沸いてくる。
復讐するために生き永らえてきた。
時には悪役や、正義の味方として。
主人公を育てる師匠として。
惑星から追放されても、意思を継ぐものを増やさねばならない。
そこから先はかなり長い。
ただ、この異世界で取っ捕まえられてしまった。
ジメジメとした密室で思い出すーー。
「この手のひらが好きなんです」
そう言われるまで、いったいどれだけの苦労を重ねてきたのだろうか。
好感度と思いやりーー、隙間を狙うことだけに長けていた。
YOH☆DAは他者の心を支配するという異能力に特化されていった。
気付けば、まるでよぼよぼの老人だった。
いろんな景色と世界をーー、銀河系を。
アパレルワールドにも飛び込んだこともある。
人気者として持て囃されたこともあった。
ただ悪い気はしない。
暗黒面に捕らわれてしまったという事実に気付かれなければ。
「やり直してやる…………何度でも、何度でも、何度でも!!」
宇宙人だからと、何だと言うのか。
YOH☆DAはこの異世界で誓った。
「駆逐してやる…………!!」
ーーーーと。
(U´・ェ・) (^ω^U)
ーー完璧だと、奴らに復讐するために。
だがそれを予想している者もいたのであった。
「どうしてこんなにーー、後を立たない!?」
「いや、まったくわからンないのですが!?」
与えられた文明の機器や、その他さまざま。
手段は選ばず、懸命に励む部下に叩きつける。
ただそれは怒号ではなかった。
「…………んん!?」
「トオル様、どうしたのですか!?」
朝食に何か不味いモノが混じっていたのか。
和凛は酷く気にしていた。
そんな彼女の焦る素振りを宥めるように。
「いやーー、悪夢を見ていた気分なんだ」
まだ続こうとしている。
頭の中に約20文字数ぐらいのパスワードを要求してくる。
もう一度、凄まじい睡魔が襲い掛かってきた。
それは古のパスワードだった。
ーーいったん、記録しますか? ーー
はい、お願いします。
ゆうてい、みやおう、きむこう…………。
一文字すら間違えてはならない。
「おお、しんでしまうとはなにごとぢゃ」
自信があるーー、玉座の後ろにきっと隠されている。
決して遊んではいない。
トオルは真剣そのものだった。
そして飛び込んできた。
幾重にも及ぶ環を潜りーー、こうした経緯をかいつまんでゆく。
いままで見てきたことと経験。
それらすべてをうまいこと、回収してゆくに過ぎなかった。
「奴らがいる限り……悪事は絶えない」
「だったら、こうしましょう」
トオルはあくまでも巻き込まれてしまった主人公に他ならなかった。
悪役ではない。
ただ首謀者は確実にいた。
「うむ、予定どおりだ」
異物を廃するために召還した。
当事者には一切気付かれることはないように。
統治者達はほくそ笑み、観客席が増えることだけに見いだしていた。
ーーぶるぶるっ。
「寒いですか?」
「いや、そうじゃあないんだけど……」
抱きまくらにしている。
和凛のぬくもりにーー、トオルはまた夢に導かれていった。
朝食は何かなぁ。
和食でも嬉しい。
かつて愛した遺影がまるで怒るように、ことこと揺れていた。
「まだ途中だから…………」
結婚などしていない。
だがセカンドシーズンだった。
枕にふたり、太ももを重ねている。
トオルは夢見ていた。
現実ではあり得なかった。
響き渡る教会の荘厳な音を。
指揮棒が揺れた。




