第10話 あたたかいなぁ
「好き勝手やってろ!」
そう言い放った。
まるで自分には関係なかったように。
YOH☆DAにはまだ残されていた。
階下を見下ろしつつ、一筋の光によって宇宙船へと導かれている。
「立て直したら……お前らなんて」
暗黒面の支配者としては、極め台詞に欠けるだろう。
実際、ただ逃げようとしていただけだった。
ひゅーんと。
まるで実家に帰宅しようとしている。
「ハハッ☆ ちょっとYOH☆DAさま!?」
焦り戸惑う。
部下を吸収し、抑えが効かない。
登頂部分だけを支配していた愛嬌たっぷりのネズミが救いの手を差しのべていたのだった。
「たしかに異能力は与えたがーー、なんの役にも立たなかっただろうが!」
「そ……そんなぁ……。ハハッ☆」
「ともかくーー、行けお前ら、殲滅しろ!!」
それは誰であれ、安全に帰宅するべく。
召還された宇宙船から、夥しいほどの何かが降り注いでいった。
各々、ふわふわもこもこ。
ただ湾岸署にいた警察官にとても似ていた。
「ン? ナンだぁ!?」
「真似してんじゃあねえよ!!」
彼らは自分たちは犬ではないと自覚していた。
それはほかの種族であったとしても。
見た目を気にすることなどなかった。
誇りを持っていたからーー、生まれたことに。
転移か転生か。
はたして、馴染んだ彼でも思い当たる。
各々がまるで同じ人種のように暮らしていたから。
トオルは、頭上から降り注いでくるその生物をよく知っていた。
それにーー、かつての記憶から。
柴犬、雑種。
ドーベルマンやマスタンチベティフ。
つまり、犬だった。
「可愛いなぁ……じゃねぇ! 気をつけてください!! 奴らはーー」
膨大な数だった。
犬好きなら天国だろう。
だが大きく違うのは…………くぱぁ。
4つに開かれる口、じゅるじゅると艶かしい引き裂かれた舌。
それは遊星からの物体Xによる蹂躙にしか過ぎなかったのだろう。
「ふしゅるるるる~」
「ワンワン!!」
「きゅうん、きゅうん」
いままでになかった。
次々と喰われてゆく。
異世界に舞い落ちるーー、未知なる存在。
「怯むな!! 立ち向かえ!!!!」
確実に安全地帯を確保されている。
警視総監からの咆哮に、やがて次々と声は失いつつあった。
「リセットボタン、押したいんだけど」
ーーセーブ機能に一部、不具合がありますーー
トオルの提言は即座に却下されてしまう。
これはいままでに類いをみない、じつに窮地でしかなかった。
「どうしよう……」
夢ならば良かった。
だが現実だった。
頭を抱えるしかなかったトオルに。
「ワタシに任せてくれませんか?」
優しく手を差しのべて、潤う瞳。
それは僅かばかりの、和凛からのささやかな提案。
顔が近いーー、お互いの瞳に映し出されている。
接吻するなら今だーー、それほどだった。
「信じていますから……いまでも」
コツンと。
額をぶつけた。
そしてーーー、溢れんばかりの光が辺り一面を埋め尽くしてゆく。
「あたたかいなぁ」
「エヘヘ♪」
ーー照合しましたーー
「いや、分かんないんだけど……まぁ何とかなるんなら」
ーーもっと密着してくださいーー
「ねぇ、トオルさま……もっと…………」
「ちょっ……こんなの…………」
異世界大戦争の最中、抱き合うふたり。
そこから目映いばかりの、鮮烈な光が轟いた。
そしてーーー。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
また一歩、踏み出した。
今日こそ、何もなければ良かった。
もう少し続きます。
どうか、お付き合いください。
(^_^;)




