第9話 まだ続けんの?
振り返ります。
「あん時ゃあ、よくもーー」
ポキポキと指を鳴らす。
ふわふわの毛並みから。
ーー誰もが忘れている。
それはSEASON1の第7話(※注)
ーー踏みつけられた靴の感触は。
リアルタイムでは数年経っていたが、あの醜態はいまだに覚えていた。
忘れることなどできない。
後輩に美味しいとこを奪われてしまったことなど特に。
ユージの忌々しい記憶に対して、まるで記憶になかったかのようだった。
「いや、お前なんて知らねえな。つぅか……まとめてかかってこいやぁ!!」
吠えている。
異世界転移を果たしても、それは変わることはなかった。
根っからの犯罪者であり、ムカついたヤツは徹底的にぶちのめす。
彼は暴虐のカリスマ性に突出していた。
「いや……俺ひとりで十分ですけど?」
「はぁ? ざけんな……ッ」
二の句は告がせない。
瞬間、巨体が激しく宙に舞う。
的確に捉えた。
ユージの一撃ーー、膝が目標の顎を。
「ぐはっ!?」
「おっと、オネンネするにはまだ早いゼ??」
「クソがぁ! ナメんなよ、コチとら……」
全身銃火器に成り果てた。
世界を吹き飛ばすほど極悪な自爆装置すら身に付けている。
ただ、その選択肢を選ぶ隙などまったく与えることはなかった。
(U´・ェ・) (U´・ェ・) (U´・ェ・)
「お前にはまるで才能がない!!」
いつも地面を舐めていた。
雑草みたいに。
ただ未熟さだけが日々ーー、それでも必死に。
「まだまだぁぁぁ……!!」
「そうだ!! かかってこい!!」
それはまだ刑事になるずっと前の地獄。
今でさえ飄々としているが、かつてユージは努力のひとだった。
「何を目指し、何をしたい!? どやさぁぁぁ!!」
「ぐはあっ!!」
歯が立たないことは分かっていた。
一矢報いたいが、実力に差がありすぎている。
立ち上がるのも苦しい。
それはまさしくーー、かの四字熟語だった。
「満身創痍とは、そのことをいう」
「あれから色々あったけどーー、この分野で負けやしねぇぜ?」
速度では誰にも負けない。
縦横無尽に、蹂躙する。
予測も予知も、反射条件すら上回る。
第1ラウンドはあまりにも一方的だった。
「出番、無いよね~」
次に託した。
トオルはただ、今や観客席で眺めている。
柔らかい感触に酔いしれつつ、テレビドラマのワンシーンを見るぐらいに。
さて、次が楽しみだ。
「いやーー、まだ前戯だからね、ハハッ☆」
「よっしゃ、次は俺の出番だな」
「任せたぜ、タカ」
「あ~ら、男前じゃあな~い♪」
チャイナ服のよく似合う大熊猫と、牙を剥くドーベルマン刑事。
第2ラウンドが始まろうとしていた。
だが、それはやがてひと波乱を巻き起こすこととなる。
「正直さぁ…………はじめからこうすりゃあ良かったのよね~」
そこにはすべてを取り込んだーー、異形の姿があった。
プツプツ、ぶくぶく、ごうごう、ぐらぐら。
阿鼻叫喚というのに相応しい。
準備していたあと数話分をまるっきり省かれてしまった。
ただ正直、あり得ない光景だった。
「悪い子はいねぇぇぇがぁぁぁ……」
すべてを呑み込もうとしている。
どうすりゃ良いのか分からない。
警視総監ですら、お手上げだった。
あぁ、全部終わったと諦めていた矢先。
トオルは閃いてしまった、逆立ちするまえに。
「はっちゃけた!!」
彼にだけ授けられたスキルを活かす。
主人公として、やれるだけのことはやるしかない。
「えぇ~っと……これだ!!」
彼にしか知らないボタンを押した。
『そのふっかつのじゅもんはまちがっています』
何度目だろうか。
やり直して、やり直して。
また、やり直してリスタートした。
「ウソだろう? まだ続けんの?」
トオルはいつものように。
授けられた異能力の使い勝手が悪いことに気付かされるのであった。
「クッソ……ってーー、あれって……ウソだろ…………」
全土を覆い隠すほどではない。
だが脅威には違いなかった。
目視は出来たから決して未確認とはいえないだろう。
それは所謂ーー、|未確認飛行物体(UFO)が湾岸署の頭上にやってきた。
どうしたって、よく分からない。
とりあえずーー、神様なんていない。
それだけが事実だった。
ちょっと手を加えました。
さらにカオスになっております。
(^_^;)




