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こちら異世界派出所前。  作者: caem
season1【春】やりきれない。殉職刑事が異世界進出。
5/63

第4話 ……やってらんねぇよ……

短めです。

ちょい下ネタっぽく、汚い表現あります。

m(_ _)m

 先ずもって、100%足音は消せないであろう。

 錆び付いた足元、階段の一段一段を慎重に歩み登り続ける。

 音が出ていないのは、何故ならば。

 革靴を脱ぎ、靴下で歩いているからだ。

 トオルは今、両脇に自分の靴を挟み込み、銃を片手にするという情けない格好を曝していた。


「……これ、絶対に見られたくないなぁ……」


 親、意中の女性、勤務先の同僚、そしてあのふたりの先輩などには絶対に見せてはならぬ。

 どうか、どちらにも、いや、犯人にも見られないようにと強く強く祈りながら。


 その祈りはどうやら神に届いたようで、無事に二階の入り口へと辿り着き靴を履き直す事に成功した。

 いそいそと準備を済ませたトオルは、再び警戒体制をとる。


 目の前のドアノブにそろりと手を掛け、ゆっくりと回してみる。

 鍵は掛けられておらず、扉は開かれ淀んだ空気が外に溢れ出た。


 半分だけ顔を出し、覗き込む。

 相変わらず、闇が拡がってはいたが、陽の光は時間の経過と共に廃ビルの中身を照らし出していた。


 視線の先には最奥に、割れていない窓が一つとそれに導かれるようにして長い廊下が続く。

 瞳を細く閉じ、ようく目を凝らしてみると廊下は途中で左右に分岐しているらしかった。


「……あちゃー……面倒だなぁ……」


 いっそのこと、先輩達を見習って好き勝手に走り回ってやろうかと無謀な考えが過るも、自分では結果は伴わないだろうと諦める。

 何せ、それが原因でこの異世界へと来る羽目になったのだから。


 あくまでも、冷静沈着に。

 決して、暴走する事なく。


 心に喝を気合いを入れ直し、トオルはゆっくりと屋内へ廊下へと足を踏み入れた。


 壁にギリギリの隙間を開けて背を預け左手に持つ銃を右手で宛てがう。

 左足を一歩踏み出しては、右足をくっ付けるように引き込み。

 吐息を潜めながら足音や気配を消しながら、一歩また一歩と慎重に進む。


 漸く、第一の廊下の分岐点まで辿り着くのに普通なら10秒も経たないところを5分は掛けたのではないだろうか。


 トオルはそうっと先ず左後方を覗く事にした。

 端まで続く廊下がまた有るのではと危惧していたのだが、少し進んだ所は偉そうな重厚な扉で封鎖されていた。


 対し、右前方はほぼ正面の廊下の先の様子も同じくして、重厚ではないものの扉で封鎖されていたようだ。


「なんかボス感があるから……あっちにしよっと……」


 敢えて、いや、本能に従い質素な作りの扉を選択する。

 自分が不甲斐ないからではない。

 先輩達を立てる為なのだと心の中で言い聞かせてみる。


 決して自分は主役ではないと。


 トオルは再び慎重に歩み始め、何事もなく、質素な方の扉の前に辿り着いた。

 そして、直ぐ様に気付く。


 女性と男性を示すシンボルマークに。


「何だよ……トイレじゃんかよ……」


 ホッとひと安心し胸を撫で下ろしたのも束の間、それは突然襲い掛かってきた。


 『尿意』である。


 追跡中の車の中で缶珈琲を飲んでいたのは先輩だけではなかった。

 寧ろ、二人分を用意したのは彼自身なのだから。

 というか、賭けに負け、奢らされたのだが。


「あぁあぁあぁ……もうっ……誰もいませんように……ッ」


 構わずトオルは男性用のトイレに駆け込んだ。

 最初に目にしたスリッパなど無視して、あんぐりと大きく口を開けて待っている便器の前に立ち塞がる。


 もうどうでもいい。我慢できない。


 勢いよく『社会の窓』。

 チャックを開け引き下ろし、ぼろんと立派な逸物を一気に引きずり出す。

 数々の女性を驚かせ虜にした喰わせモノがドンと物申す。


 ポカーンと開いた口が塞がらず。


 便器は、彼の迸る一切合切を呑み込むしかなかった。

 まるで留まることを知らず注ぎ込まれる飛沫は美しい虹を描き。

 やがて柔らかい湯気が大量に、その大きく開けられた咥内に拡がってゆく。


「ぅあぁぁぁ……ふはぁぁぁ……」


 一頻りナニを済ませ、恍惚に酔いしれる。


 ブンブンと景気よく得物を振り回し、その咥内はトオルの廃棄物で汚れに満ち足りてしまった。

 早く浄めて欲しいと、よくやったと、頭を撫でて欲しそうに上目遣いで主張する便器。


 可愛いヤツめと、登頂部のスイッチに手を伸ばし、下着に『息子』を仕舞い込もうとした。

 その時だった。


 背中越しに感じる異様な気配。


 冷や汗は額から頬へと伝い、逸物はしゅんと萎え縮こまる。

 トオルはそのだらしなく縮みきった下半身をそのままにして、振り向きざまに銃を構えた。


「な……何だ……これ……」


 薄く黄色に染まる液体が、2メートル程の大きな塊と形成し、ぶよぶよと気色の悪い動きを繰り返しては、彼・トオルを覆い尽くさんと立ち開かっていたのだ。


 その色と臭いが連想させる。

 名付けるとするならば『尿スライム』といった所か。


「う……そだろ……ッ!!」


 『尿スライム』とやらは突如、身体のあちこちから触手のようなモノを生やし、目の前にある物全てを包み込もうとする。


 だが、トオルは一瞬の隙を見逃さなかった。

 一箇所だけ大きく開いていた空洞を瞬時に察知し、頭から飛び込んでその場から回避する事に成功したのだ。

 トイレの床だが多少の汚れは致し方無い。

 命には変えられないのだから。


「くっ……そ……ッ!!」


 致したのは、糞ではない。


 取り敢えず、用を済ませた息子にサヨナラを告げ、身なりを整える。

 すかさず、銃を構え直し立ち向かおうと、なけなしの勇気を奮い起こした。

 しかし、『尿スライム』とやらは彼に襲い掛かってはこなかった。


 あわれ、便器よ。

 『尿スライム』はとても美味しそうにトオルが吐き出した廃棄物をごぶごぶと飲み干している。


「今のうちに……ッ!!」


 蹂躙され続ける相棒に別れを告げ、彼はトイレを後にした。


「……はぁッ……はぁッ……何だったんだ。今のは……ッ!?」


 まさか、この周辺の廃墟無いし、廃ビルの至る所に余す事なく蔓延っているのではないかと。

 先程感じた脅威に、恐ろしさに、股下の袋の皺はキュッと縮み上がる。

 トオルは、この異世界に連れてこられた事に、今を以て悔やみ心の中で涙を流した。


「や……やってらんねぇよ……」


 正直、現実世界で殺人犯を相手にした方が全然マシだと謂わんばかりに、悪態を付くトオル。

 それが結果で死んでしまう方がよっぽど楽だと。

 だが、そんな甘い考えを他所に、唐突に現実は突き付けられる。


 背中を丸めて屈み、息を整えようとしていたその時だった。

 ふたつの銃口が彼に狙いを定める。

 その殺気により思わずトオルは銃を手放し、降伏の意を示した。


「……ん? 何だ、トオルかよ~……」


 彼は今。

 ふたりの先輩に取り囲まれ、身動き一つ出来ずに立ち尽くしていたのであった。

まだ1日目が終わってないんだぜ……

ガハッ(吐血


次回は来週予定……多分(笑)

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