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こちら異世界派出所前。  作者: caem
season 3【秋】忌々しい。 美味しいモノが待っている。
47/63

第5話 もうちょいッスから!!


「う~ん、これぐらいで良いかなぁ?」


 曖昧だけど、自信はある。


 キッチンで味見をしている。

 ()の大好物は知っていた。

 純白のエプロンは少しサイズが合わないにしてもーー、その佇まいはまるで若奥様のようだった。


「ん、美味しい♪」


 きっと誉めてくれるだろうーー、(ダーリン)なら。

 あえて無防備にしている。

 とびっきりのサプライズで迎えたかったから。


 限りなく丸裸に近い。

 恥じつつ、願望にかなり近づけようとしている。

 彼女は精一杯、頑張っていた。

 裸エプロンという恥ずかしい姿で。

 

「おかえりなさい、どうしますか?」


 ごはんにしますか? お風呂にしますか?

 それともーー

 (/ω\)キャー


 ……LはラブのLだった。

 この瞬間に、萌える愛は越える。

 ワタシ(・・・)にしますかなんて、そんなのは言えるハズもない。

 

 カンカンカン。

 聞き慣れた足音とそして「ただいま」。

 きっとビックリするだろう。

 サプライズハッピーを届けようとしていたのに。


「トオル様、お帰りなさい♪」


 ガチャー、開いた扉からは予想に反していた。

 彼女の微笑みに反して凶悪な眼差しが向けられている。

 つまり、招かれざる客(・・・・・・)だった。


 ひょんな宅配便ーー、チャイナドレスに身を包んだ大猫熊(ジャイアントパンダ)の姿がそこにある。


「はーい♪ あら、可愛らしいお嬢さんねぇ」


「ど……どちら様!?」


 正直、驚くだろう、誰でも。

 面を喰らった彼女の反撃を許さずに、すぐさま。

 

「さぁ、お眠りなさい……♪」


 最初に嗅いだ香りは酷くキツかった。

 俊敏な動きで背後を取られる。

 まさしく拉致監禁する犯罪者の手慣れた手つき。

 クロロホルムというーー、睡眠誘発材。

 どうやらそれ(・・)はこの異世界(・・・)においても有効らしかった。

 

「むぐぅ!? …………スヤァ」


「うふふ♪ 完璧ね♡」


 


 ☞ ☞ ☞




 許されざる行為にほかならない。

 いち警察官(・・・・・)として。

 ランクアップした刑事(・・)になった今でもーー。


 まるでパンドラの箱を開ける気分だった。

 というより今や犯罪者に荷担しているーー、その時点でアウトであっただろう。


 長年働いていたが、こんな所など知らない。

 況してや、辿り着くことなど有り得やしなかった。


 これは瞬間移動(テレポート)能力を有する大熊猫(ジャイアントパンダ)によるチートに過ぎない。


 トオルはただ、人質となってしまっていた和凛を救う為に。

 湾岸署のなかでもとくに超極秘裏にされている。

 中に閉じ込められているのが何者なのか知らない。

 

 厳重に封印されている鍵穴をあけようと懸命に汗水流している。


「ああでもない、こうでもない……いや、これか? ……違うなぁ」


「ねぇ、まだなの~?」


「もうちょい……もうちょいッスから!!」


 切羽詰まったその状況で、突然聴こえてきた。

 それはまるで抑揚のないーー、冷たそうな声だった。


 ーーマルチKEY(・・・・・)を使いますか(・・・・・・)ーー


 主人公(トオル)ですら忘れかけていた。

 神のごとき、メッセージが頭に鳴り響く。

 ただ牢獄をこじ開けようとしていた彼にとってはじつに有難い。

 神秘的かつ、真理を告げようとしている。

 

 時間稼ぎをしているワケではないーー、真剣そのものだった。


 妙にチャイナドレスの似合うパンダ。

 スリットから覗かせてくる、そのふわふわの毛並みが喧しい。

 邪魔をしてくるのも、忘れるほど。


「ンもうっ、早くしなさいよ!!」


 混乱しかねない。 まずどこから整理しよう。

 そしてそれからーー、どうすれば逆転できるのだろうか。

 先輩達(・・・)に都合が取れないのが物凄く悔しかった。


 いまはただの裏切り者。

 トオルは警察官としてあるまじき行為。


 ーー犯罪者の一味として荷担している。

 独房に匿われている極悪人の逃亡を手伝っていた。






 カチャリ。

 開いた分厚い扉の隙間からーー、か細く。

 それはあまりにも痛々しい?

 長く伸びた人差し指だった。


「い…………てぃ…………」


 かつて観たことがある。

 満月をバックに自転車の籠で。

 宇宙人とのファーストコンタクトだったのかもしれない。


「おかえりなさいませ、王様(キング)!!」


 そこから先は、あまりにも混沌(カオス)と過ぎていて。

 いくら異世界に馴染んでいたとしても。

 正直、トオルは付き合い切れなかった。


「これって悪夢でしかないんじゃない??」


 いまや同情を買うしかない。

 それは切実な感想でもあった。

 グレイタイプのーー、宇宙人がそこにいた。


ちょっぴり悪ふざけしております。

(^_^;)

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