【プロローグ】 なんじゃあこりゃあああッ!!
某ドラマ『あぶな○刑事』のキャラを元にしたコメディ異世界モノです(笑)
カンカンカンカンカンッ。
…………
真っ昼間だが、暗闇を、路地裏を叩き付ける革靴。
乾いた足音が地面を、激しく連打する。
時折、目にした散らばるゴミくずや汚物などを回避しながら、男達が吐き出す、熱い吐息で埋め尽くされてゆく。
所々に於いては、ネズミや虫が戯れる汚水が散らばっていたのだが、そこは器用にも、避けて走り抜ける。
その暗闇の中を駆け回り逃走を図る。
銃を片手にした男達が追う。
黒い革製のロングコートを着込んだ彼・凶悪殺人犯を追い込もうと懸命に励んでいた刑事達であった。
立ち止まり、咄嗟に、殺気は放たれた。
「ちッ……クソが……しつけえんだよッ!!」
顔面に斜めに走る傷跡はそれまでの人生を語る。
ヤクザっぽい輩。
男は振り向き様に、懐から銀色の輝きを放つ銃を取り出し、構え、追ってくる彼らに向けて発砲した。
表道には聞こえずとも、響き渡る銃声が野蛮さを告げる。
だが弾筋は反れ、未知なる死へと繋がる可能性のある跳弾なども致せずに、無事に、脇にあったゴミ箱にへと突き刺さり安堵する。
「無駄な抵抗は辞めて大人しくしろ!!」
「今ならまだ、刑も軽くなるぞ!!」
渋みの漂うダンディーな二人の刑事は咄嗟に壁に背を預け、ズレたグラサンを再び填め直しながら彼を説得しようとした。
辺りには様々な種類の配管が夥しく設置され、どうやら、表社会では有名な飲食店が建ち並ぶ商店街の裏路地らしい。
と、同時にもう一人の若手の刑事に首を振り、合図を送る。
言葉を交わす事もなく、コクリと頷き、仕草だけで了解を示した彼はなるべく気配を消しつつ近くの建物の裏口へと侵入した。
ところ狭しと、美味しい臭いで充満した調理場。
「アイヤー!?」などと驚き、その手を止める。
突然の侵入者に対して驚く中華包丁を奮う料理人達に対して、警察手帳を提示し、半ば強引に店の中を通る事にした。
店内を、調理場に現れた時と同じくして。
銃を片手にした彼を見て、食事中だった客が悲鳴をあげようとする。
慌てた彼は、先程と同じように、警察だからと静かにするように、と口数も少なく制御した。
表道に出た。
推測されるに、犯人は此方に逃亡してくる筈。
額から滲む汗を軽く拭い、唾を飲む。
行き交う通行人は何事か?と目を向けるも、直ぐにドラマ撮影か何かだろうと。
やがてスマホに夢中になるので気にする事はないだろう。
じわりじわりと。
路地の入り口、ないし、出口へと近付いて往く。
顔を半分だけ出して、中の様子を窺う……
「…………!?」
「………………!!」
「…………ッ!!」
会話は聞き取れなかったが、どうやら先輩達は上手く足止めをしてくれているようだ。
途中、銃声が聞こえたような気がしたが、先輩達ではない事を祈る彼。
何故かというと、あのコンビは毎度の如く、若手の刑事である彼に後処理を押し付けて逃げてしまうからだった。
まぁ、その都度、甘い誘惑に引っ掛かる彼も彼だが。
鞭と飴とはよく云ったものだ。
「ふーーーっ……よし。腹は括った。いくぞ。俺……!!」
先程、店内で騒がれたのでやむ無しと、懐に仕舞った己の相棒『コルトパイソン4インチ』を再び手に取り、路地に侵入する。
緊張が鼓動を揺さぶり高め、興奮を勇気へと変換させてみる。
足元を警戒し、周囲を見渡し、なるべく音を発てずに、慎重に突き進んで往く。
壁越しは左側、僅かに見えた、陽の光を帯びたコート。
多分に犯人の背中だろう。
よし。今しかない。
勇み足は、駆け足へと転回された。
「ッッつ!?」
「動くな!! 両手をあげろ!!」
犯人の背中に銃を突き立て、降伏勧告を促す。
してやったりと、どや顔を先輩達に魅せ付けた。
…………胸の辺りから、赤く染まってゆく。
犯人はコートの中から、隠し持っていた銃を左手で、振り向かずに、背後へと発砲したのだ。
「「トオルッ!!」」
先輩達は咄嗟に、二人同時に犯人に向けて発砲。
どさりと彼は地面に突っ伏した。
「おい! トオル!! しっかりしろ!!」
大声で語り掛ける先輩。
もう一人は旧式の携帯を片手に署に連絡しているようだった。
「はは……先輩……俺……ヤッちゃいました…………」
「おい! しっかりしろ!! もうすぐ! 救急が来るから!!」
「…………!!」
「……!」
次第に遠退く厳しくも暖かい声が、自分の死を確認させていった。
の筈だった。
ふと、目を覚ます若手の刑事、彼『トオル』。
咄嗟に起き上がり、撃ち抜かれ鮮血に染まる胸元を確認する。
傷がない。
どころか、痛みすら皆無。
思わず、頭の上に、はてなマークが浮かび上がり首を傾けてみる。
「確かに撃たれたんだけどなぁ……あ。犯人は……!?」
先輩方の心配はしないのが流石というべきか。
ゆっくりと立ち上がり、辺りを警戒しながら、歩みを進める。
だが、全くといって先程までの殺伐とした気配を感じられなかった。
こう見えて空気を読む事には長けていると彼は我ながらに自慢している。
今まで、散々危険な事件に巻き込まれてきたが、その悉くにおいて無傷なのは彼トオルぐらいだろう。
強いて言えば、後始末の方でクタクタになり、生死の境をさ迷う羽目になる事の方が多かった。
その度に先輩達に恨み辛みを吐き出しては、謝罪代わりに若い女の子を紹介してもらったものだ。
差し引きゼロとして、それはそれで美味しい思いをしたのだが、今を思えば……騙されていた事を悔やむ。
「おっかしいなぁ……」
夢でも見ていたのか?と顎に手をやり、立ち尽くし考え込む。
やがて、ゆっくりと歩きだし、とりあえず表道へと出たトオルは、あり得ない光景に思わず、ぱちくりと瞬きをしては、掌で目を擦る。
行き交うは……
ソフトクリームなどを片手に楽しむ、二足歩行する服を着た爬虫類。
もしくは、ふわっふわの毛並みの犬や猫やまたは馬の顔をした哺乳類達がまるで人間のようにスマホを片手に歩んでいた。
「へーい。彼女。乗ってかない?」
などと、車の中から可愛らしいネズミのドライバーが、グラマラスな猫の女子をナンパしている。
つんとした態度でそれを交わす猫娘。
ふと、空を見上げてみると、飛行機雲が靡いて往くので、やはり、現代で間違いないとは思ってみる。
だが、飛行機に混じって……
翼を生やした爬虫類の大軍が空を自由に飛んでいた。
ようく目を凝らしてみると、高層ビルの窓らしき場所から人?らしき客を乗せている。
新手のタクシーだろうか。
いや、こんなのは最新のニュースでも取り上げられていない。
「な…………なんじゃあこりゃあああッ!!」
現代の世界からは先ず考えられない光景が彼の前に立ちはだかっていたのだった。
週イチぐらいで気紛れに更新予定(笑)