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恋する瞳

作者: 海の底

最近、とめどなく溢れて来るような感情に日々を支配されている。


私は貴方が好きだ。

満月の夜貴方を思っている。

月の光はカーテンの中の私には届かず、その美しい輝きを私ではなくそこいらに留まりつつ吹く風を照らしている。


私の目には星が飛ぶ。

貴方をこの目に移す度、銀河は金平糖となって降ってきて、その甘い香りを振りまいて踊る。

そのたび胸だけは苦しんで、私を幾つもに引き裂く。

私は貴方を閉じ込める。

この目にずうっと閉じ込める。この感情の中、はたまた私のカメラの中に。

それが故に、ふと虚しい。

瞬きをし、すぅ、と瞼を開くその度に、私は貴方の瞳に気付かされる。

貴方の瞳には、まっしろな砂糖でできた星達が待っている。

あの娘のようにまっしろな星達。彼女らは貴方があの娘を瞳に映すのを待っていて、一度あの娘が移されたならばそれはもう喜んで踊って自らを溶かし、貴方の瞳に甘い酔いを与えて散っていく。

あの甘さが大嫌いだ。

憎らしい。私以外を映す貴方の瞳がひどく憎らしくて堪らない。

貴方は甘さに酔うたびに、その美しさを破壊されていく。貴方を失って、甘さに酔っているだけの汚れたいきものになっていく。

私がそれを嫌だと思うたびに、砂糖の星達はきゃっきゃと笑って、やっぱり甘さを振りまいていくのだ。


全くもって不毛な恋である。

あの娘の髪も肌の色も、喋り方も性格も何もかも、私とは似ても似つかない。

あの娘の抜けるような茶色をした髪が羨ましい。

そう思いながら私は曇天を誘うような私の黒髪を毎日睨むのだ。

あの娘になりたい訳では無い。

私を私として、その目に映して欲しい。私に、一度でいいから貴方の瞳の星々を溶かさせて欲しい。

いいえ、そんな願いが叶う筈も無く、私は胸だけを苦しめている。

そうして日々だけを過ごしていた。汚れゆく貴方を見る日々を。


そうして私は決めたのだ。

貴方を必ず、殺すということ。

肉体を崩してごみにするというほんとうの意味ではなく、醜くなりゆく貴方を殺す。

だから貴方を全部ここに、私に閉じ込めて、永遠に美しく繋いでいく。

今の貴方を、顔も姿も全部まっくろに汚す。

曇天に貴方を隠すのだ。

あのまっしろな星達がこれ以上貴方を汚さないために。


つまりは、貴方を私に閉じ込めるために、


私は、貴方を食べることを決めた。


どうか待っていて、私は貴方を美しいまま殺めて、貴方のすべてを余すことなく食べてみせる。

そうして私は貴方を手に入れる。貴方を美しいまま生かす。

少し強引だけど、許して、お願い。

私は星達を手に入れる。

あの星達を溶かしてみせる。


どうか待っていて、愛しい貴方。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 少し話の筋が唐突な感はありましたが、文章が詩的なのであまり気になりません。 [一言] 作品の理解の大部分を読者の想像にゆだねているのだな、と読んでいて感じました。
2017/09/24 21:53 退会済み
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