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長屋暮らしの鼠達  作者: 青門 陸
「世永 朔」になった日
1/2

序文

この世には行き場を失った者達が大勢いる。


各々が抱える問題は様々なジャンルに分類され、一概には言い切れないものが多い。


ただ一つだけ言うなれば、彼らは皆「失う」怖さを実感しているということだ。


それは「金」かもしれないし、「物」かもしれないし、「人」かもしれないし、「心」かもしれない。


それが何であれ彼らにとっては価値のあるものだったということは確かなのでしょう。


でなければそれを失った時、「後悔」の二文字が何百回と頭を駆け巡ったりはしない。


その感情は心に深く根を張り、それはまるで呪いでも掛かったかのようについてまわる。


しかし、失う怖さというのは経験しなければ持ち得ないものだ。


例えば今、人の不幸な身の上話をされても周りの反応はせいぜい同情が良いところだろう。


自らその世界に飛び込むような奴は馬鹿に過ぎないが、彼らはそうではない。


きっかけは何だったにしろ、唐突に投げ込まれた谷底はさぞ暗かったことだろう。


深い暗闇は心を狂わせ、体を蝕み、言いようのない重石が感覚を麻痺させていく。


いっそ狂ってしまえば楽なのでしょうが、表で育った彼らはどこまでも不器用で気高いく、それが出来なかった。


こちらから追い出され、だからと言ってそちら側には行ききれない。


表と裏の間に出来た小さな歪みいる鼠達。


常に「人」であろうとした彼らはその歪みの中に居場所を作ることも出来ず、ただただそこにいるだけだった。





だがこの世界に1人だけそうではない者がいた。


しかし彼女は光の中にいた彼らと違い、もともと裏の世界の生まれだった。


密売人でも、ヤクザでも、殺し屋でもない。


だけれども自分をこの世に繋ぎとめておく証明がない。


家族不明。年齢不明。名前不明。


感情はある。能力もある。


だが、存在がない。


この世には行き場を失った者達が大勢いる。




各々が抱える問題は様々なジャンルに分類され、一概には言い切れないものが多い。



ただ一つだけ言うなれば、彼らは皆「失う」怖さを実感しているということだ。



それは「金」かもしれないし、「物」かもしれないし、「人」かもしれないし、「心」かもしれない。



例えそれが何であれ彼らにとっては価値のあるものだったということは確かなのだろう。



でなければそれを失った時、「後悔」の二文字が何百回と頭を駆け巡ったりはしない。



その感情は心に深く根を張り、それはまるで呪いでも掛かったかのようについてまわる。



しかし、失う怖さというのは経験しなければ持ち得ないものだ。



例えば今、人の不幸な身の上話をされても周りの反応はせいぜい同情が良いところだろう。




自らその世界に飛び込むような奴は馬鹿に過ぎないが、彼らはそうではない。



きっかけは何だったにしろ、唐突に投げ込まれた谷底には恐怖と困惑が広がりさぞ暗かったことだろう。



深い暗闇は心を狂わせ、体を蝕み、言いようのない重石が感覚を麻痺させていく。



いっそ狂ってしまえば楽なのだろうが、表で育った彼らはどこまでも不器用で気高いく、それが出来なかった。



こちらから追い出され、だからと言ってそちら側には行ききれない。




表と裏の間に出来た小さな歪みいる灰色の鼠達。


常に「人」であろうとした彼らはその歪みの中に居場所を作ることも出来ず、ただただそこにいるだけだった。








だがその世界に1人だけそうではない者がいた。



出生、家族構成、年齢何もかもが謎に包まれた存在。



だがしかし密売人でも、ヤクザでも、殺し屋でもない。



だけれども自分をこの世に繋ぎとめておく証明がない。




感情はある。人間としての能力もある。




だが、存在がない。


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