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しるし2(詩集)

メヌエット

作者: さゆみ


たくさんの美しいであろう音色は、まるでネイルアートのように、わたくしの爪を染めようとするけれど、黒い手袋を外すことなど出来なくてよ。だって四分の三拍子が止まらないのですもの。


溢れる優しさがグラスに注がれて、わたくしの胸元に近寄るものだから、ふうっと息を漏らすとグラスの悲鳴が木霊するの。割れてしまえばいいのにと、にっこりするわ。葡萄酒色に変えるには何が必要かしら。


ターンして赤いドレスの裾がふわりと舞うとき、カードが立ち止まるとき、いつものわたくしなら、縋るような心持ちで、全身を傾けてしまったわ。あれもそれもこれも煌びやかで美しいせつなさの宝石のようだと怯えていたわ。


でも、わたくしはいつものわたくしではないの。ああ、全ての声色がわたくしを避けていくわ。感化するなんて馬鹿げているの。例えば透明度が限りなくゼロに近い調べを。美はあまりにも脆すぎて滑稽にしか思えないわ。


ゆったりと欠伸しながらターンするわ。だって四分の三拍子は止まらないのですもの。悪美の神は退屈だと嘆いているわ。ああ、わたくしは、激しい夢を見ることさえも赦されないのかしら。宮廷舞曲はつまらなくてよ。





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― 新着の感想 ―
[一言]  きらびやかな情景と醒めたお嬢様の心情のコントラストがうまく描けているな、と感じました。
[一言] こういった感性から紡ぎだされた言葉たちには言葉の感想が無意味に感じます。 美しく、黒く壊れていく、独特の世界でとても好きです。
[一言] お嬢様の黄昏みたいなものが感じ取れました。 きっと大変なんでしょうねぇ……。
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