第5章
数ヶ月が経った。失意のうちに、私は心の中で幾度もセラフィーマとの訣別を誓った。しかし小さな町のことだ。私は幾度も、あの店で、この辻で、セラフィーマと顔を合わせねばならない羽目に陥った。私を見るたび、彼女は目を逸らした。私も彼女の姿を見ると、あの酒場での出来事がまざまざと思い返されるのであったが、不思議と怒りは感じなかった。それよりも私の心を満たしたのはそぼ降る雨のような悲しみと、身を焦がされるほどの憧れのみであった。だが私は知っていた。私はその悲しみからも憧れからも、解放されねばならないということを。でないと私の生きる道は、幸福だった子供の時代、あの想像遊びの中、いとおしい過去の時間の中に取り残され、そこから前へ進むことができなくなってしまう。私はそれを、本能的に恐れた。私は昨日までの自分自身を甘美な過去の中に切り離し、先へ進もうと足掻いていた。そしてとうとう、私はセラフィーマから完全に離れることを決意したのだ。即ち、首都の大学へ行き、もうアルマには戻るまいと、私は決心したのである。
「父さん、僕はやっぱり首都の大学に行きたい」
ある夕べの食事の際、私は父に切り出した。父は目を丸くしていたが、私の決意を喜んでいたようだった。
「とうとう決めたのだな、マキシム!」
父は僕に手を差し出した。その手を握り返しながら、僕は頷いた。
「あら、セラフィーマはどうするの!愛しい愛しいセラフィーマは?」
妹が咄嗟に叫んだ。私は軽く微笑み、肩を竦めた。私の様子を見て、母は何かを察したのだろう。母は妹を軽く小突き、私の方へ向き直って言った。
「大学へ行くと、数年は帰って来られないわね。おまえの決心を嬉しく思うけれど、寂しくなるわ。学校の先生にはもう話したの?」
「ううん、まだだよ。父さんと母さんに先に話そうと思って」
私は答えた。それは本当だった。私は自分の決意について、失われた愛について、私を最も理解する人、とりわけ父に話したいと思っていた。私は父に話したかった。セラフィーマを愛したこと、彼女が私の真心を皆の前で嘲笑ったこと、今でも彼女への断ち難い思いに苦しんでいること。私は父に問いたかった。父もまた若い頃に、この苦杯を嘗めたことがあるのか、そこからどのようにして大人になったのか。それは忘却の彼方に押し遣られたのか、それとも彼はまだ、失われた時、追憶の海に涙することもあるのか?しかし私はこれらの問いを、何故か発することができなかった。私が問えば、きっと父は答えてくれたに違いない。だが何故か、私はそうすることができなかったのだ。
「おまえは、自分で自分の身を処すことを覚えた。もう大人というわけだな」
父はそう言うと、私のためにグラスを用意し、我が家では父だけに許されたウイスキーの瓶を傾けた。グラスの底が、みるみるうちに琥珀色に染まった。
「さあ飲め、マキシム。おまえも男になったというわけだ」
父に勧められるまま、私はゆっくりと、強い香りのする琥珀色の液体を少しだけ口に含んだ。初めて口にする酒の味だった。辛いような甘いような、不思議な味がした。それは激しく、それでいて哀調を帯びた、あの祭の日のジプシーの音楽に似ていた。そしてその最中にいた、燃えるような緑色のセラフィーマの瞳に。そう、この時、まさにこの瞬間、私は大人になったのだ。追憶に涙することを覚えたこの時に。