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ファイル7 到着、生命進化推進興業所

 色々と用事があったのと、モチベーションが上がらないのとで、かなりの間が空いてしまいました。

 「へぇ~、ここが八丈島なんだ」


 真心の言葉は俺の言葉でもあった。俺達は今現在、八丈島空港を出てすぐ前にある大通りにいる。

 ただの思い込みかもしれないが、空気が都会と違う感じがした。

 部長は「ちょっと用事がある」と言って愛ちゃんを連れて、ロビーの受付けのところで係員の人と話をしていた。

 まぁ何にしてもさっさと生命進化推進興業所に向かいたいところである。

 それにしても外のここから空港のロビーにいる部長達を見ていると、周りの人間が、部長達をジロジロ見ているのが理解った。

 まぁ、飛行機乗る前のあっちの空港でも同じだったけれども・・・。しかも見ている人達の視線は変わったモノを見ているような感じであった。まぁどちらもコスプレしているような服装だからなぁ~。

 そんな事をぼんやりと考えていると話が終わったのか、部長達も空港の出入り口から出て俺達のところにやってきた。


 「部長、何をお話していたんですか?」

 真心の質問に部長は、俺も驚く事を言った・


 「まずは1週刊ほど前に可憐が来ていたかどうか、駄目元で聞いてみたのよ。」


 そう言って今年の2月頃に卒業する部長を含む3年生の卒業アルバム写真の1つとして部の全員を写した写真を取り出した。第2文学部の全員といっても5人だけだが、可憐もちゃんと写っている。


 「写真を見せて、この娘がこの空港に来たかどうかって聞いてみたのよ。」

 「その質問に答えてくれたロビーの受付けの人、よく覚えていましたね。普通は分らないというはずなのに。」

 

 俺の言葉に部長も「そうね」と肯定し、


 「今、私達が立っているこの大通りで、いかつい顔をした警備員2名と研究員と思われる生命進化推進興業所の職員が、ずっと待ってなかったら覚えていなかったそうよ。その3人が可憐が空港から出たところで、自分達から近づいて職員と思われる男が、ヘコヘコと頭を下げていたそうよ。」

 「でも良くその人達が、生命進化推進興業所の職員の人だって分かりましたね。」

 「・・・単にその3人が乗って来ていた車のところに、大きく生命進化推進興業所って記載していただけの事だそうよ。」


 真心の質問に、部長は苦笑して肩を竦ませながら答えると、真心は「そーなのですかー部長」と返していた。というか真心、お前その頭の悪そうな返答どうにかしろよ。そう思っていると他に何を聞いたのかと真心は尋ねていた。


 「後は、生命進化推進興業所への行き方よ。どのようなルートがあるかって・・・ね」

 「え?、でも生命進化推進興業所のホームページに交通図も乗っていましたよ。」

 「?!・・・か、確認のためよ。べ、別にその事を忘れていたんじゃないのだからねっ!」


 動揺しながら答える部長に俺達は、ああ、その事忘れていたんだなと心の中で思った。そもそも今の反応は明らかに部長のキャラじゃない。

 俺達が思っている事が部長にも伝わったのか、いつも尊大で余裕のある態度を取っている部長が、


「ほ、ほら、生命進化推進興業所がある八丈小島に渡るための船着場に行くためのバスがあるからさっさと載るわよ。」


 些か焦った様に、話を打ち切って逃げるようにバスの停留所に向かって早歩きで、移動したからである。

 とは言え、余計な事を突っ込んでヘソを曲げられても困るから、俺は真心と愛ちゃんの両方を肩を竦めると、2人もちょっと苦笑いをして部長の後を追った。

 そしてバスに乗り、暫くしてから動き出したバスに揺られて、ぼんやり外の景色を見ていると船着場の停留所に着いたので降りた。ちなみにバスの中でも他の乗客から部長達は奇異の目で見られていた。まぁそんなコスプレのような目立つ服装していたらな。

 

 停留所に降りた俺達は、そのまま八丈小島に船渡しをしてくれる事務所に入り、運賃を払って小型のボートに乗ることになった。ちなみに帰りは生命進化推進興業所のところにある電話でここの事務所に電話したら迎えに来てくれるらしい。

 ちなみにボートを運転してくれる運転手と少し話をしたのだが、あんまりこの生命進化推進興業所に向かう人はいないらしいのだが、1週間前に生命進化推進興業所の職員と警備員が俺達と同年代の女の子を連れて、生命進化推進興業所が用意していた小型ボートに乗って八丈小島に向かったという話を聞いた。

 俺は、いや俺達はそれを聞いてそれは可憐の事だとすぐに理解できた。やっぱり可憐は生命進化推進興業所に向かったのはもう間違いなしの確定だろう。そう思うとちょっとだけ安堵の気持ちも出た。

 間違いなく可憐は生命進化推進興業所にいるのだから・・・。


 他にも3日程前に身なりのいいご老人を昼前に、俺達と同じくらいの3人の娘の集まりを八丈小島に船渡ししたそうだと聞いた。もっともそのどちらからも帰りのための迎えの連絡を受けなかったそうであるが・・・。

 まぁもっともその後に運転手が続けて言った様にその爺様や3人の女の子達はまだ用があって生命進化推進興業所にいるか、生命進化推進興業所が帰りの船渡しをしたのだろう。俺はその話はあんまり関心が無かったので何気に聞いていただけだった。


 その後、無事八丈小島についた俺達は、生命進化推進興業所がある八丈小島の反対側を目指して、整備された歩道をえっちらおっちらと歩いていた。

 もっとも俺や真心、愛ちゃんはそれなりに汗が出ている程度だったが、唯一部長だけは半分グロッキー状態だった。体力無さ過ぎと思ったが、それは俺、そして意外な事に真心も空気を読んで言わなかったが、


 「部長は体力が全然ないんですね。」


 と何と愛ちゃんが空気を読まずに言いやがった。案の定、その直後、部長から「うるさい!」と怒鳴り声が返ってきた。というか愛ちゃん、たまに空気が読めずに直球に言ってしまうところがあるな。そんな風に思っているところに部長が、俺達をキッと睨みつけてながら声高に言った。


 「そもそも私の身体は繊細かつデリケートにできているのよ。お前達と一緒にするな!」


 いやいや部長、あんたがただ運動不足の体力不足なだけだからとこの時、俺達3人の心の声がハモった。その後、部長はずっと不機嫌そうな表情をしながら、息をぜぇぜぇ切らせながら歩いていた。


 「結構いい時間になったな。」

 何だかんだいって俺達は、とうとう生命進化推進興業所の正門に辿り着いた。時計を見たら15時過ぎである。

 部長はここで力が尽きたのか、道路に座り込んでしまい、真心と愛ちゃんが部長のお守りをしている。

 俺はこのまま生命進化推進興業所の敷地内に入っていいのかなと守衛所のところに行って見ると誰もいない。 

 「誰もいませんね。」と俺が言うと「え?誰もいないの?」と部長が聞き返してくる。俺が頷くと、部長は暫く考えていたが、よっこいしょと言って立ち上がり、


 「誰もいないんだったら仕方ないわね。このまま入るわよ。」

 「えっ?!いいんですか勝手にそんな事して!?」

 「部長、勝手に入って問題にならないのですか?」


 そんな事を言った部長に、即座に真心と愛ちゃんが尋ねた。しかし部長はさぁ?と返しただけだった。


 「まぁいようがいまいが、もともと私達はここに可憐を連れ戻すのが目的だったのだし、守衛所に誰もいないから帰ろうなんて訳にはいかないでしょ。見つかって文句言われたら、守衛所にいないお前達が悪いと言ってやればいいのよ。」


 そう言って部長はのろのろした足取りで、正門を通って敷地内に入った。そんな部長に、「さすが部長、そこに痺れる~憧れる~」と言いながら真心も正門を通って行ったので、俺も可憐を連れ戻すためだと割り切って敷地内に入った。愛ちゃんだけは「ホントにいいのかな?」と首を傾げていたが、とことこと俺達の後を追ってきた。

 そして敷地内を少し歩くと遂にホームページでも見た生命進化推進興業所に辿り着いた。しかし何故か正面出入り口はシャッターによって閉鎖されており、まるで俺には俺達の行く手を塞いでいる様にも見えた。


 俺はこの不可解な様子に、柄にもいえぬ悪寒が走ったがそれは間違いではなかった。すでに生命進化推進興業所の内部は圧倒的な戦慄と恐怖そして絶望が待つ異空間と化していたからである。そして俺達はその片鱗を、これからまもなくすぐに味わう事になるとはこの時は予想もしてなかった。

 今回は今までの話で一番長いです。

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