ファイル4 可憐の行き先は生命進化推進興業所
今回の話でようやく舞台となる研究所の名前が登場します。今回もあんまり進んでないな。
可憐に届いた手紙を広げた俺はどんな内容かを確認するために目を通すと驚愕した。何故なら手紙の内容は、
『 天道、旧姓天草可憐様、7月26日、午後14時に
伊豆諸島の1つである八丈小島にある生命進化推進興業所にお越し下さる様、
お待ち申しております。
追伸 御母堂である天草可奈博士がご存命であり、お会いしたいと願っている事を
記述しておきます。』
と記されていたからである。
正直、この手紙の内容はふざけているとしか思えないが、単なる悪戯と切り捨てる事が出来ないのは、可憐の旧姓を記している事や生命進化推進興業所という単語が載っていたからである。何故なら可憐の母親である天草可奈という人は、生物学の科学者で、生命進化推進興業所というところで亡くなったと生前親父から聞かされたことがあったからだ。当然可憐も知っているので、その事に気付いたに違いない。
もう1つの手紙には家から生命進化推進興業所までの行き方が、詳しく記載されていた。幼子にも分るような内容はどうみても可憐を目的地に行かせたいというのが理解できた。
「なぁ真心、可憐に送られてきた手紙はこれで全部なのか?」
「え?あ、うんそうみたいだよ。後はその場所までの通行費と思われるお金が入っていたって。」
通行費まで入っていたと言うことは、もう完全に当たりだろう。それにしてもこの手紙の主は何の目的で可憐をこの生命進化推進興業所という場所に来させたかったのだろう。
「それにしても可憐ちゃんって昔の苗字は天草って言ったんだねぇ~。それにお母さんは天草可奈さんって言うんだぁ~。」
俺がそんな事を考えていたら真心が呑気な事をほざいたのだが、それに我関せずで携帯ゲームをしていた部長が反応した。
「天草可奈?・・・可憐の母親は天草可奈なの?」
「え?ええ、そうですよ。と言うか部長は天草可奈を知っているのですか?」
「まぁ多少はね。生物学方面ではそれなりに有名人だったみたいだから。」
部長の言葉に俺はそこそこの驚きを感じていると、真心がお気楽そうな声で、
「じゃぁ部長、この可憐ちゃんが向かったこの生命進化推進興業所というのはご存知ですか?」
と尋ねると部長は片眉を上げた。
「・・・可憐は生命進化推進興業所に行ったの?」
「そうみたいですよ。生命進化推進興業所に来て欲しいと書かれていますから。」
「・・・その手紙の持ち主は絶対何か思惑がありそうね。」
そういうと部長の知っている範囲内でだが、その生命進化推進興業所について説明してくれた。それによると生命進化推進興業所というところは、文字通り生物の進化を調べ発展させるための研究をしている研究所であり、国内の大手の製薬会社の1つと、ヨーロッパに本社がある外資系の大手製薬会社が共同で出資しているが、国も若干融資しているそうなので半国営と言った感じの民間研究所だそうである。
「と言ってもこの外資の方は軍と一緒になって生物兵器を研究しているのではないかという良からぬ噂のあるところなんだけれども・・・ね。」
部長の説明に俺達は成程と頷いた。部長はそしてと言って可憐の母親である天草可奈も、この生命進化推進興業所に勤めていたと説明したが、そこら辺は俺も聞いていたので驚きは無かったが、その次の部長の言葉には驚く事となってしまった。
「この天草可奈博士は、生命進化推進興業所で何かの発見をし、それに基づいたプロジェクトをしていたみたいなのだけれども、その過程で事故にあって亡くなったというのだけれども、実はこのプロジェクトを巡って内部でごたごたが起きて、それによって事故に見せかけて殺されたのではないかと言う噂もあったみたいよ。どちらにしろ生命進化推進興業所も色々と曰く有り気で、可憐の母親である天草可奈の事故死もそういう噂がある。そんな所に天草可奈の娘である可憐が招かれるなんて、何か明確な目的があるのは間違いないでしょうね。」
部長の言葉に俺は改めて可憐に手紙が来た時に、内容を問わなかった事を後悔した。しかしその事を言ってももう意味が無いので、俺は考える事にしたのだった。
可憐の母親が死んだ場所であるいわくありげな研究所、生命進化推進興業所。この時の俺はこの研究所になんとも言えない不吉なものを感じたのだが、後になって思えばその感覚は間違いではなかった。
次の話ぐらいで研究所に行こうという感じになります。そういう意味ではまだプロローグの後半ら編と言った感じですな。