フェイル11 俺達の考えついたゾンビ撃退方法。
お待たせしました。2013年、最初の投稿です。今回も説明っぽくなっているかもしれません。
「ねぇねぇ光君、考えても何も浮かばないなら、今持っている武器の確認とかしようよ~。」
少し考えていたが、これと言っていいアイディアが浮かばず、どうしようかと思案していたところに、真心が意見を出し、それも一理あると思い、俺達は持ってきた鉄パイプを見た。
ぱっと全体を見たところ、これといった以上はなく問題無いようだが、隣のガレージにいるゾンビ達相手には、少し心許無い。他に武器がないかと思っていると、
「ああ、そう言えば私、護身用にスタンガン持ってきていたのよね。」
部長がそう言って自分のバックを開けて少し中を調べていると、テレビなどで見たことがある黒い箱のようなもの、スタンガンを出してきた。
「部長、護身用に持ってきたんですか?」
「ええ、そうよ。天道がトチ狂って襲いかかってきた時のためにね。」
「そんな事しませんよ!!」
愛ちゃんの疑問に、トンでもない返答を返した部長に俺は思わず叫んでしまったが、悪くないはずだ。
「冗談よ。お前にそんな度胸なんてありそうにないものね。とはいえ最近は物騒なので護身用にと思って・・・ね。それにこのスタンガンもちょっと洒落っ気出していくらか改造したりして、金も掛かっているから使わないと、勿体無いでしょう。」
部長の返答に、俺は思わず落ち込みそうになったが、部長が気になる事を言ったのでその事について質問する事にした。
「・・・部長は、今、そのスタンガンを改造したって言ったんですけど、何を改造したのか訊いていいですか?」
「簡単よ。要は普段のスタンガンよりも最高出力で出せる電圧が高いだけ。まぁでもこの出力でスタンガンを当てた場合、心臓とかが弱い人はショック死する可能性が高いそうよ。」
「・・・それって危険なんじゃないですか・・・?」
「・・・まぁ、否定はしないわね。」
部長はそう言いながら肩をすくめた。そこで今度は愛ちゃんが部長に質問した。
「部長、そのスタンガンはゾンビ達には効果があるのですか?」
「さぁ、どうかしらね。人間だったら間違いなく効くと言えるのだけれども、相手はゾンビだから何とも言えないわ。」
部長に返答に愛ちゃんは「そうですか」とだけ返したが、どこかしら落胆した様にも見えた。まぁ、確かに強力に改造されていると説明を受けたのに、肝心の場面では使えるかどうか分からないと言われたらなぁ~。
部長もそれを感じたのか、いささかバツが悪そうだった。そこに真心が手をあげて訊ねた。
「じゃあ部長、そのスタンガンを使ってゾンビ達を水浸しにしてから、そこにスタンガンを当てて全部を感電させる何て事は出来ないんですか?」
「「「は??」」」
真心のいきなりの案に俺たちの声を重なった。というのもスタンガンを見て、スタンガン→電流→以前映画で見た敵を感電させて倒すという場面を思い出して、自分たちもできないかと思ったらしい。
「・・・思い出した過程はともかくとして、これで電流を流してもあのゾンビ達を倒せるかどうかは分からないわね。もっと強力なモノがあれば別だけど。そもそもゾンビ達を水浸しにするというけれども、どうやって水浸しにする訳?」
「えっ?!あそこに水の入ったペットボトルとかバケツとかありますよ。それにガレージに蛇口もあるみたいだし、そこにあるホースを使ってゾンビ達に水をぶっかけてもいいんじゃないですか?」
部長の問いに真心はこの物置部屋の一点を指差しながら答えた。
真心が指を指した方を見ると、確かにそこにはバケツや水の入ってペットボトルが3本ほど置かれていた。その少し隣にはホースも巻かれて置かれている。
どうも俺達はこの物置部屋を見渡した時は、緊張やゾンビ等の恐怖などで周りがよく見えていなかったのだろう。
しかしそれならばよく真心は、こんな状況なのによく周りを見渡せる状態にあるな。まぁ、こいつは基本天然で、のほほんとしているからな。さっきもとぼけた返答をしていたので、こんな状況でも俺達よりは精神的に余裕があるのだろう。
だけど正直、今回だけはその真心ののほほんとした性格が救いとなっているのは確かだった。正直言ってちょっと真心にときめいたかもしれないぐらいだった。
それから俺達はもう一度、部屋の中を見渡すと使えそうな物を見つける事ができた。というよりも最初、外からこの物置部屋に入ってきた時よりも精神状態が多少、マシになって周りをよく見渡せる様になったというべきかもしれない。
そして見つけたものはバッテリー2つだった。しかも都合がいい事にコードも発見し、それをバッテリーに繋いで、プラスとマイナスのコードの線を重ねると、バチバチと青白い火花が飛び散った。
「これならばいけそうね。」
「でも部長、このバッテリーの電流でゾンビを倒せるんですか?」
「う~ん、倒せるとは言わないけれども、ダメージは与えられるんじゃないかしら。少なくともバッテリーの電流をちょっと川に流したら、多くの魚が気絶して上がってきたらしいし・・・。それを二つ流したらそれなりのダメージは与えられるはず・・・。」
「そーなんですかー部長。」
愛ちゃんの質問に部長が答えると、また真心が抜けた様な返答を返した。でもこの状況では逆に緊張が少し抜けていいかもしれない。
先ほどの真心の言動を見て、俺はそう思うことにした。
「それでは作戦を説明するわよ。まず愛はそのホースを持って隣のガレージに入ったら、そのまま水道まで走って蛇口に差し込んで、栓を思いっきり開けて、ゾンビどもに水をかけなさい。
天道、お前はそこの荷車にバッテリーや道具箱とかを入れて、隣の部屋に押しなさい。」
「部長、どうして荷車にバッテリーとか道具箱とか入れるんですか?そのまま持っていった方が早いんじゃないですか?」
「確かに真心の言う通りなんだけれども、バッテリーの電流が何処まで効くか分からないし、ゾンビ達が思ったより早く私達の方に来るかもしれないから、その時に荷物を入れて重くなった荷車にぶつけたら倒れるか、ダメでも怯ませる事は出来るでしょう。」
部長の説明に真心だけでなく、俺たちも成程と思った。
「続けるわよ。真心はまずはここでペットボトル2本ぐらいの水をバケツに入れて、それを持って。それともう一本、ペットボトルを持って行きなさい。そして愛がゾンビを水をかけ始めたら、お前もゾンビ達に対して水をかけなさい。いいわね?」
「いいですけど、これぐらいの水じゃ、ゾンビ達を水浸しには出来ませんよ部長。」
「別に出来なくていいわよ。それをするのは愛なんだから。真心にそれを頼んだのは私達とゾンビ達のいる間に水を通して欲しいからよ。そうしないとゾンビ達に近づいて電流を流さないといけなくなるでしょう。」
「ああ成程、そーなのですかー部長」
「そうよ、そして私は鉄パイプを持って行くわ。そして電流を流して奴らを弱らしたところを、鉄パイプで一気に襲撃して倒す。もしくは荷車を奴らにぶつけて怯んだところを一気に畳み掛ける。作戦としてはこんな感じよ。いいかしらお前達?」
部長の言葉に俺達は頷いた。後は行動あるのみである。
俺達はこうしてゾンビ達を倒す行動を開始したのだが、この生命進化推進興業所内ではゾンビとの戦闘は基本行動の1つとなると、俺達はまだそこまで思い至る余裕がなかった。
バッテリーの電流を川に流してのあたりは、生前、祖父の知り合いが実際にして川魚をとっていたそうです。