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ゲム  作者: のた。
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 俺は“ゲム”によって、浮かんでいる。それは、中空を漂っているかのようだが、実際にはそれには実体などなく、質量を伴うような感覚を与えてくるだけだった。

東京の劇場の、畳の控え室の中で、相方の林とネタ合わせをしていた。そのネタは年末にある大きな大会の二回戦で披露する予定のネタだ。つまり、俺たちの命運を握っているネタなのだ。

林豊(芸名)の相方の松野健は183センチと高身長でスラッとしていた。が、その印象はどこか病的だった。

対して、林豊はその名前に相応しい、太々とした体格をしていた。が、165センチと男性にしては低身長で、どこかコミカルな印象を見た人間に与えるのだった。

『順風』というコンビで活動している二人。そんな二人は鏡の前で、自分達の所作を軽く確認しながら漫才の準備をする。良く通る林豊の声と、どれだけ張り上げても怖くない松野健の声は何もない無機質なその部屋の中で緩やかに反響する。

この劇場にいる人間はすべからく脳内麻薬にうなされたいと思っていた。出役も、観客も全員例外なくそれに満たされたいと思っていた。

「暴走機関車トーマスか……! こんな感じ?」

「いや、違うな。もっと歯切れ良く言ってくれた方がいい」

「暴走っ! 機関車かっ! ごめん。また間違えた」

「頼むぞ。ホントに」

「わかってるんだけどさ。どうしてもな」

「言い訳は分かったから。ちゃんとネタ通りやってくれよ」

「悪いな健」

「こんな生活は抜け出さないといけないんだよ」

「もう芸歴も七年目だし奢る機会も増えてきちゃったからな」

「お前だけならまだ笑えるけど俺まで借金することになったら笑えないからな」

「俺もいつかは返したいと思ってるんだ」

「そんなの当たり前だよ。俺は今すぐにでも返してほしいと思っているよ」

 惨めな生活をしている。芸人の世界では先輩が後輩にメシを奢るものだ。俺たちは年々払わなければいけない金額が増えている。

皮肉なことにこの国は良い国だ。夢を追いながら、親に心配と迷惑をかけながら、自分の生活費を払いながら、メシを奢ってやるくらいはかろうじて可能だ。

もちろん貯金も趣味もない。ハッキリと言えば未来さえ無いみたいに思える。俺は俺が書いているネタが面白いのかつまらないのかの判断すらできない。

ネタがつまらないからどこにも行けないのか。それとも、俺たちがつまらないからどこにも行けないのか。劇場まで足を運んでくるようなお笑いマニアは信用できない。なぜなら、彼らは笑うためにここに来ている。

 控え室の隅の、壁と畳の境界線に、小さな虫が溜まっているのを見た。羽虫というには少し小さい虫が、そこに滞留するように生活していた。

それを見て俺はまた“ゲム”に浮かばされていることを思い出す。俺とソレ以外には誰もいないみたいに、ゲムは俺のことを追いかけてくる。俺はゲムのせいでネタを書いている途中もくだらないことを考えてしまう。

くだらないことを考え、浮かんでしまうのだ。きっと、それが俺たちが成功できない根本的な理由ではあると思うのだが、それから逃げる方法がどうしても思い浮かばない。

解放されなければいけない。俺のことを縛っているゲムから解放されて、それに悩まされない日々が来ることを願う。そこに“トウソウ”は必要ない。逃げる必要も、闘う必要もない。

それが絵空事であることは十分に理解しているつもりだ。どうせ成功できないと思いながら、こんな日々を続けてどうなるというのだろうか。


 ――そろそろ時間だな。松野健はそう言って、立ち上がった。夜の劇場には数十人の人間がいた。もっとバリューがある芸人が出ている時には埋まる観客席。

成功した芸人は、テレビや、自分たちのライブで忙しくしている。ライブには配信という制度があり、中途半端にテレビに出ている芸人よりも、世間では全く知られていないがネタが評価されている芸人の方がよほど稼げる。

それは松野健にとっては残酷な現実だった。「自分たちが売れないのはみんながネタを求めてないからだ!」酔うとそんなことばかり言っていた彼は、配信によってネタが売れるようになったことで逃げ場を失った。

舞台袖にあるモニターで、前のコンビの『アラビアンリンスー』のコミカルな動きをした漫才をどこか覚めた目で見る松野健。彼はしゃべくり漫才を是としていた。

どうしても、会話のようなネタで成功したいのだった。小太りなのに俊敏な動きをすることで笑いを取っているアラビアンリンスーの宗像行方不明には世話になっていた。軽蔑などできるわけもなかった。

彼にとって、コミカルな動きとは誘惑でもあった。彼の中には、それをすればいとも簡単に人気になれるという、根拠はないのに色濃い想いがあり、それのせいでどうしても見下しきれなかった。

気持ちがわかってしまうのだ。先輩のアラビアンリンスーが、昔やっていたシュールで大衆受けなどしない芸風から、劇場にまで足を運ぶようなお笑い好きであれば笑ってくれるような動きのあるネタを選ぶようになった気持ちが彼にはわかる。

実際、宗像は芸風を変えてから、芸人としての収入が少し増えた。それでも、それだけで生活するにはあまりにも少ない金額ではあった。

「歯切れ良くだな? それでいいんだな?」

「そうだ」

軽く確認をしていると、二人の漫才が終わり、出囃子が鳴る。順風の好きなバンドの音楽が流れる中で、夢を追いかけるように、舞台に立った。そこは二人だけの世界だった。

空間を支配している感覚は、他に代えがたいものであり、筆舌に尽くしがたいような味わいがある。そんなものによって脳内麻薬がトバドバと出てしまう芸人たちは思ったよりも引っ張られてしまうのだ。

諦めることができずに先へ行こうと必死になる。生きているだけで必死なのに、夢にまで必死を求められてしまう。


「やっぱりYouTubeでもやるか?」

「どうせ誰も見ないって」

「そんなことはわかってるけどさ」

「やらないといけないことは他にもある。ネタに集中させてくれ」

「なら、大会落ちたらやるか?」

「は?」

「二回戦で、いや、三回戦で落ちたらやるか?」

「それなら今からやればいいだろ」

「なら、今からやるか?」

「そんなにユーチューバーになりたいなら勝手になればいい。俺がいなくてもやれることはあるだろうしな」

「ごめん。でも、考えておいてくれよ」

「とにかく、今は集中させてくれ」

 劇場はややウケだった。特に、俺がこだわりを持って林に変えさせた部分がややウケだった。それなら前の方がよかった。これを糧にまた先へ進んでいくしかない。が、本当にこのこだわりは間違っていたのだろうか。

漫才が終わって、帰り支度をしている途中、林はYouTubeの話をする。俺はこの話をするのが嫌いだった。なぜならば、俺のネタのことを否定されたような気持ちになるからだ。俺が作ったネタだけでは力不足だから、YouTubeの力を借りなければいけないと言われているみたいだからだ。

大会で落ちたらYouTubeをやるなんて、それだと大会で落ちることを望んでいるみたいじゃないか。とにかく俺は目の前の事にだけ集中したかった。そうしなければいけなかった。

力不足なのだと思う。そもそも根本的に芸人になるために必要な『ナニカ』が欠落している、もしくは不足しているから、他人を驚かせるようなネタを書くことができないのだと思う。

そのくせ俺にはくだらないこだわりがある。林の体型を考えれば、動きがある漫才の方が面白くなってくれるはずなのに、しゃべくり漫才にこだわって自滅しそうになっている。

もしかすると、合っていないのかもしれない。俺たちはコンビとしてやっていくにはあまりにも合っていないのかもしれない。だから、こうして惨めな生活、いや、惨めな未来が待っているであろう生活を送る羽目になっている。

松野健は先輩たちの姿を思い浮かべていた。それは、テレビに出たり、配信でウケている先輩の姿ではなくて、もうどうしようもなくなって、馴染みのアルバイトとウーバーで泥水を啜るように生きている先輩芸人たちの姿だった。高齢になるとアルバイトですら限られた場所しか選べない。

二人とも高卒だった。高校を卒業してすぐにお笑いの養成所へ通うことになったので、学歴などないに等しい。芸人として成功することができなければ、その先にはなにもない。

――笑えない。いつものように、誰にも聞こえない独り言を呟く。俺の現在位置は笑いの種にすることができる場所ではあった。が、俺にはそれで笑いを取れるだけの余裕はなかった。

イジられたら返すだけのテクニックは持ち合わせていたが、それだけでしかない。養成所で学んだのはプライドの捨て方だ。

こだわりの捨て方は教わることができなかった。もっと言えば、成功の仕方までは教わることができなかった。本当は全てが思い通りになってくれればそれが一番幸せだ、というのは今さら言うまでもないことだ。

「どうする? 飲みに行くか? 女子もいるぞ?」

「宗像さん! いいんすか?!」

「当然だろ。松野は?」

「俺は、ちょっとだけネタを詰めたくて。すみません」

「いいんだよ。俺たちはお前らに期待してるからな」

「ありがとうございます。せっかく誘ってもらったのに」

「大会が終わったらまた飲もう。お前の歌も聞きたいしな」

「あざっす」

俺は歌が好きだった。そして、それなりに上手かった。本当は歌手の才能の方があるのかもしれない。芸人の才能はとても見えにくくて、でも、確かに間違いなく存在しているものだ。

それに比べれば歌手、特に歌うだけの歌手の才能なんて誰にでもわかるものだ。きっと、それは今の俺にとっては楽な道なんだろう。見える世界に憧れてしまう。

林は帰り支度のテンポを早める。宗像さんはそれを微笑ましく眺める。二人とも似たような体型をしていて、後ろから見るとどちらがどちらなのかわからない。

そんな二人はよくコンパを開いていた。その結果はわざわざ言うまでもないが、やはり数撃ちゃ当たるという言葉の通り、何回かはいわゆるお持ち帰りをしたことがあるらしい。

芸人である以上はエピソードトークを何個か準備しているものだ。それを使えば、何も知らない女性を笑わせることくらいはできる。男はそこまで見た目が重視されることもない。

芸人なんて、女遊びをして、ギャンブルをして、酒に溺れて、ダメになっていく、太宰治のような生活観がお似合いなんだと思う。マイコメディアンたちはそれに類するような日々を送っている。やはり泥水を啜るような、乞食のような日常だ。

俺はそういう世界観が苦手だ。高卒のくせに、自分のことを高等な某だと勘違いしているのだ。捨てられないプライドをどうするべきなのかは未だにわからない。

 これもまた“ゲム”のせいなのだろう。どこまでも俺のことを追いかけてくるゲムは他人の心よりも自分の心を見つめさせようとしてくる。

そんな俺が他人の心を見ないと成功できない職業を選んだのは失敗だったかもしれない。しかし、それでも、夢というのは、どこまでも、荒野までも駆け巡ってしまうものなのだ。

松野健は自閉的な少年だった。自分と他人の間に明確な線があり、それが融け合うことなどなく、ひたすらに捻れが続いていた。

そんな彼の線が他人と交わる瞬間は漫才を見ている瞬間だった。他人と同じように笑い、他人と同じように操られる瞬間はそれだけしかなく、他の全てでは捻れているだけだった。

触れることがなかった線が触れ合った瞬間に、彼は世界と自分が共通のスキーマを共有していることを確認する。閉じ籠っていた世界に温もりがやってくる。

成長する過程で、自他の境界が曖昧になるような融合は自然と行われるようになった。それでも、未だにゲムという形でそれはまだ残り続けている。残り、浮かばされている。

それは抵抗しようにも抵抗することができないもので、いずれやってくるであろう解放の時を待つことしか松野健にはできない。しかしながらゲムに触れているのは悪いばかりではない。

それに触れることでしかわからないこともある。が、それにはもううんざりしている彼であった。お笑い芸人で成功しようとしている彼は、火の中に飛び込んだとしても、成功を掴み取りたいのだった。

 林のやり方が間違っているのだろうか。俺のボケ方が間違っているのだろうか。そもそも全てが間違っているのだろうか。

「暴走機関車トーマス」という言葉を歯切れ良く言わなければいけない理由とはなんだ? それをすることがどうして笑いに繋がるんだ?

ワード自体にパワーはあるはずだ。だから、本当はもっとウケてもいいはずなんだ。シンプルな言葉の組み合わせだから伝わっていない訳ではない。

列車の事故をネタにしているのがダメなのか? 不謹慎的な笑いになってしまっているのか? そうなると、もっと柔らかい展開を考えないといけない?

「暴走機関車トーマス」は、話が異常なまでに脱線してしまう松野健に向かって、林がツッコミとして使っている言葉だ。

そこへ至るまでに何度も「脱線」というワードを伏線的に入れていて、途中でも列車の脱線事故を持ち出して会話の脱線を咎める部分があった。 

彼は、脱線事故を引き合いに出して、会話の脱線を咎めていることが観客にマイナスの影響を与えているのではないか? と考えていた。

しかし、その考えこそがまさしくゲム的な考え方なのだった。そんなことを本気で気にする人なんてどこにも居ないはずなのに、居たとしても気にしてはいけないのに、松野健はそれを気にしてしまう。

彼はまた別のパターンの展開を頭の中で考え、実際にネタに起こしてみることにした。そんなことをする必要は、本当はないはずなのにそれをするのだった。

 さっきまでの熱気がまだ手のひらに残っている。俺はずっとこの熱の中にいるつもりか。この程度の反応であっても、確かに手応えを感じてしまっていた。そばにある幸せにばかりに心を預けていたら、どこにも行けなくなってしまう。

笑い声に心を持っていかれてしまうのが当たり前になると、それを何度も繰り返すことだけを考えるようになる。本当に大事なのは、どうやって成功するのかだ。

どうやって本当に価値のあるネタを書くのかだ。それさえできれば俺はどんな問題を抱えていたとしても、それこそ、ゲムによって浮かされていたとしても、どこへでも行くことができる。

ただ、問題は、ゲムによって浮かされている状態では面白いネタが書けないことだ。それ自体がゲム的な考え方ではあるが、そうとしか考えられない俺がいる。

それならば、やはりゲムから解放されることを考えなければならない。が、今の俺にはそんなことができるとは思えない。

そもそもゲムの正体は俺にもわかっていない。どうすることもできないような塊が俺から離れてくれない。このままたと自分の近くにしか手が届かない。

もっと遠くに手を伸ばさなければならない。そうしないと行き止まりのような人生を歩むことになってしまう。お先が真っ暗で、どこにも行けないはずなのに、運命に運ばれてどこかへと向かってしまうような人生。

「じゃ、また明日」

「明日な」

 林は宗像さんと一緒に劇場の大広間から出ていった。俺も帰宅しなければならない。家に帰って、ネタを詰めなければならないし、また新しいネタを書かなければならない。

どうして俺だけこんなに大変な思いをしているのだ。そんなことを思う時もあるが、結局は助け合うしかない。俺たちはお互いに一人で生きていけるほどに強い人間ではなかった。

簡易的なメモに今日の感想を残した。これを元に、また自分と、そして、頭の中にいる観客と向き合わなければならない。その観客は俺に対して優しすぎるようだ。

先輩や後輩に一通り挨拶をし、俺もこの場所から抜け出す。どこか息苦しささえある空間から抜け出した俺は、小腹が空いていた。が、それを我慢して、家へ真っ直ぐに帰る。

どこか蒸し暑いような気候が自販機のジュースを魅力的な物に見せてきても、やはりそれを我慢して真っ直ぐに帰る。俺は修行の最中のようだ。

もしもYouTubeを始めたらジュース代くらいにはなるだろうか。そんな誘惑がやってくる。が、先人たちの再生回数を頭の中で思い出すと、それはとても甘い考えであることがわかる。

売れない芸人なんて誰からも求められていない。そういう現実から目を背けて、希望よりも具体的かつ破壊的な期待に胸を寄せても、どうせ心象が濁るだけで、先に進むには至らない。

もう空は真っ暗だ。これからも努力を続けていかなければいけないことは知っている。が、夜道を歩くことに慣れてしまうのは悲しい。

こんな大人ではなかったはずだ。歓楽街も近いこの場所を歩いているのが日常になるのはあまりにも現実的すぎて、俺にとっては悲しい出来事だった。

いつまで熱に浮かされるつもりなのか。これはゲムではなくて俺の問題だ。別に逃げようとすれば簡単に逃げることができる、はずの相手だ。

少なくとも、解放される手段はわかっている。この現実から解放されるには、周囲の意見に負けて、みんなが言うところの現実と向き合えばいいだけだ。

俺は俺の現実と向き合っているにも関わらず、そんなことばかりを言われても困る。俺にとって、芸人として成功する未来は非現実的なことではないし、七年間もやっているのに日の目を浴びないというのもここでは普通だ。

どうやら俺たちはエリートではなかったみたいだ。でも、だからといって失敗すると決まっているわけではない。そろそろ雑草に花が咲いても何も不思議ではない。


 自分のことを考えていた松野健はガチャッと家の鍵を開けた。誰も居ない、ほとんど箱のような家は寝るためにある場所だった。

人付き合いが苦手な彼は芸人たちが暮らしているシェアハウスに入ることはできなかった。一人で、本当に狭い、浴槽のない家で暮らしていくことしかできなかった。これもまたゲムのせいだ。

部屋の明かりを点けた彼はすぐにリュックからネタ張を開く。そして、今回披露したネタの、暴走機関車トーマス辺りを何度も見返す。

そして、いくつかのパターンを書いてみるも、どうしても元の状態が一番いいように思えてしまい、無駄な時間を過ごすことに。

腹も減ったし、何をすればいいのかもわからないし、俺の人生はとうの昔に詰んでしまっていたのだ。このままこんなことをしていても、なんにもならない。

いつまでも夢の中で暮らせるわけもないだろう。どこかで、自分の人生のことを真剣に考えなければならない。それには、きっと燃え滾るような情熱が必要だ。

しかし、こんな生活に慣れ親しんでしまった俺には、情熱のようなものが欠けていた。どうしても熱くなることができず、どうせ何をしても無駄だと覚めた自分がくだらないことを言ってくる。

枯燥した俺は露の世を生きている。今にも破裂しそうな世界の上で、カラカラになりながら脳が欲しがるもののために生きているだけだった。

何もない部屋に寝そべった。そして、低い天井を見上げると、惨めな自分と目が合って、泣き出してしまいそうになる。

どうすれば俺はゲムから解放されることができるのだろうか。そして、それによって、今の俺では絶対に届くことがないような世界に届くことができるのだろうか。

答えを知っていたらすぐに答えているに決まっていた。つまりは、俺は何をすればいいのかがわからなくて、ひたすらに困っているのだった。

狭い部屋は寝そべるだけで埋まる。どうにかしてもっと広い家に住みたい。そこで自由を手に入れたい。趣味を見つけたい。

いや、お金も、余裕もなくて捨ててしまった趣味を再開したい。ゲームをまたやりたいし、外食にも行きたいし、とにかくやりたいことはいくらでもある。

いくらでもあるそれを選べるような立場になりたい。選ぶことによって捨てたいんだ。捨てられるように捨てるのではなくて、自分の意志で趣味を捨てたいんだ。

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