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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第六章 

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第93話 もう一つの勢力

 ソルドーの町の南側には、ジオグンの街がある。大きな街までの経由地点となっているソルドーには、周辺の町の人々が集まってくるため、北から南に向かって宿泊施設が充実している。


 ほぼ真っ直ぐにジオグンに続く横幅の広い道があるため、馬や荷車が通りやすくなっている。基本的に道の右側を通る者が北へ向かい、左側を通る者が南へ向かうようになっていて、ソルドーの道のことをよく分かっていない者でも、誰かしらが必ず前や反対の道を通っているので周りの様子に合わせて進めばいい。


 そしてソフィアたちは北へ向かうため、右側の道に沿って馬を進めていた。


「宿屋が何件も続いていますね」


 ユーインが町並みを眺めながらそう言った。

 彼が言うように、この通りの両脇には宿泊施設が転々としながらもずっと先まで並んでいる。大体が二階か、三階建てで、建物の壁も道に沿って作られている塀も白が多い。そのままだと少し殺風景な印象があるが、宿屋の中には季節ごとに咲く色とりどりの花が植えられてあったり、道沿いの建物のないところには街路樹が植えられていたりするので、逆に白い建物に植物の色がえて明るくて穏やかな雰囲気がある。


「そうだね。私たちが泊まったところはジオグン街に近かったから、泊まる客も多い。だから辺り一帯が宿屋だったけれど、ここはトレントやクロウリアから人々が入って来る通り道だから、そんなに必要ない。だから道沿いにだけ宿屋を作っているのさ。一本西の道に入れば、ソルドーで生活している人たちの住宅地が広がっているんだよ」


「そうなんですね」


「それと、宿屋ばかりでもないんだ。泊まる必要はないけれど、途中で水がなくなったり、間食用の食べ物がなくなったりしたときのために、旅に必要なものを売っている店もあるんだ。ほら、あの辺なんかはそういう店になっているんだよ」


 ソフィアが左側のほうを指さすと、ユーインはそちらに顔を向けた。そこには店の出入り口には小袋に入った商品が並んでいるのが見える。


「本当ですね」


「あとは多くはないけど修理屋なんかもある。商人は多くの荷物を持ってジオグン街へ行くから、その途中で荷車の車輪が取れたり、綱が切れたりすることがあるんだ。そこで品物が良ければ、ここでまた商品も買ってもらえるし、ソルドーはそういう人々の出入りによってうるおっている町なんだよ」


 ユーインはソフィアの説明を聞き、少し考えてから次のように言った。


「他の町から入って来る人たちの求めているものを、ソルドーの町で用意することで、この町は栄えているんですね」


「そういうこと」


「すごいなあ……」


 ユーインが感心して、町並みを楽しそうに見ているときだった。

 そのとき、ソフィアの首筋にぴりっとした視線を感じる。

 はっとして振り返ったが、後ろには商売を終えた数人の商人が荷車に乗り馬に引かれている人たちがいるだけで、あやしい人影はいなかった。


「レイグス、どうした?」


 ソフィアが急に後ろを振り返ったので、アレクシスが不思議そうに尋ねる。

 しかし彼女は胸のほうに流していた三つ編みを背中に払うと、「いや、何でもない」と言って笑い、進行方向に向き直って変わらない速度で歩を進める。


(気のせいではないな)


 どうやら、後ろに追手が付いて来たらしい。

 だが、夜明け前に対峙した男たちとは違う気配である。一瞬しか感じられなかったが、細い糸を切れる寸前まで引っ張っているような、張り詰めた雰囲気があった。


(スビリウスも、この子たちを取り戻すのに必死のようだね)


 ソフィアは目から笑みを消すと同時に己の気配を周囲に紛れ込ませ、相手の出方をうかがい始めた。


     ☆


「見たか、セラ。何だあれ」


 嫌悪感をにじませながら呟いたのは、旅人の服を身にまとい、茶色で短髪の青年リル・ノックスだった。彼は馬の歩を止め右端に寄ると、くらの上で大げさに震わせた自分の体をいたわるように、腕を背中に回す。


只者ただものじゃないみたいだね」


 リルの後ろに馬を寄せた、もう一人の青年セラが、指通りの良さそうな短い黒髪を揺らしうなずいた。セラというのはリルだけが使うあだ名で、本名はセレイラ・リーという。


「ちょっと気配を出しただけで振り向きやがった」


 リルがセレイラを見ながら大仰おおぎょうに腕をさするのを見て、少し笑いながら同意した。


「相当戦いに慣れているって感じだ」


「だな」


 リルは短く呟いたあと、腕をさするのをやめる。そして、面白そうなものを見つけたかのように、にやにやと笑った。


「楽しく暴れられそうじゃないか?」


 セレイラに尋ねると、嬉しそうにうなずいた。


「うん。思い切りやれそうで、僕も今からわくわくしている」


 リルは、うん、うんと大きくうなずくと、両腕を頭の後ろに回してため息をついた。


「分かるよ。最近、やりがいのある奴がいないもんな」


 リルがそう言うと、彼らの隣を後ろから来た商人たちが「こんにちは」と挨拶をしながら追い抜いて行く。

 リルはにかっと笑って「こんにちは!」と少年のような元気な挨拶をし、セレイラは控えめにしながらも柔らかな笑みを浮かべて「こんにちは」と応えた。


 彼らの身なりが旅人で、顔立ちもそれなりによく明るい表情を浮かべているからだろう。商人たちはリルたちの態度の良さに気を許し、「元気な若者だなぁ」と言いながら先に進んでいく。


 しかしその快活な青年たちこそが、これから伯爵家の後継者とその弟を捕まえようとしている闇組織スビリウスの一員であり、フロイドが放ったもう一つの勢力だったのである。

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