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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第五章

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第91話 女護衛士たちが向かう場所

 アベルの言う通りで、女たちが兄弟たちを連れて行く可能性のある町は三つある。行き先が絞り切れない場合はそれぞれが町の出入り口を見張るという手もあるが、後々合流する手間を考えたらどこか一つに決めたほうが何かと都合がいい。


(女護衛士だったら、兄弟をどこに連れて行こうとするだろうか……)


 イグマンは今朝の女の話している態度や考え方を、腕組みをしうなりながら思い出す。


(相手がどういう者なのかが分からないから、行動が予想できないな……。せめて女護衛士が「オブシディアン」の仲間なのかそうでないくらい分かっていたら、もう少し行く場所を絞り込めるのだが……)


 その瞬間イグマンはあることに気づき、はっとして呟いていた。


「もしかすると、北へ向かうんじゃないか……?」


 すると、エレイン、アベル、ヨハンは顔を見合わせたのち、一斉にイグマンの顔を見た。誰もが根拠を示してほしいという表情を浮かべている。


「何故です?」


 エレインが代表して問う。


「男女二人連れが、どういう理由で兄弟を手に入れたのかはまだ分からない。だが、俺の勘だと、あの女は兄弟を守ろうとしていた」


「守る?」


「そうだ。『ようやく手に入れた景品』というよりも、『守らなくてはいけないもの』として扱っているように思ったんだ」


「どうしてそう思ったんです?」


「『もしあの兄弟に手を出そうとしたら、その前に私はお前たちののどっ切きる』と言ったことさ。本気なのが分かる。余程手出しされたくないということだろう」


「イグマンさまの言い分は分からないでもないですが、それとこれとがどう繋がって、行き先が『北』となるんです?」


 小首をかしげるエレインに、イグマンは「もしオブシディアンの連中なら、東に行くと思うんだ」と言った。それには彼も同意する。


「ジェレミア伯爵家の子どもでしたものね。確かに、あの女たちがオブシディアンの仲間であるならその可能性はあると思います。ジェレミア伯爵家はセルディア王国の東側の町に本邸ほんていがありますから。ですが、今朝の対峙だけではオブシディアンの関係者かどうかまでは分かりませんでしたよ?」


 だが、イグマンは「そうかな?」と言って、その考えを退けた。


「え?」


「もしあれほどの強くて勘のいい女がいたら、スビリウスが乗り込んだときにジェレミア伯爵や妻、そしてあの子どもたちも助かっていたんじゃないかと思うんだ」


「しかし、偶然あの屋敷にいなかったということもあるかもしれませんよ?」


 アベルの問いに、イグマンはうなずく。


「そう思うのも分からないでもない。だがジェレミア伯爵が本当の戦略家で、あの女護衛士を雇っていたのだとしたら、間違いなく屋敷に置いておいたはずだ。何故なら屋敷が本部だから。もしそこが壊滅したら復活することができなくなってしまう。現に、スビリウスにやられたジェレミア伯爵家は悲惨な状態になっている」


「それなら、ジェレミア伯爵は戦略家ではないということも考えられるのでは?」


 アベルの指摘に、イグマンは盤上ゲームのリブームをたとえに出して説明した。


「リブームで言えば、全てが勝利に繋がる手ではなかったということだよ。ジェレミア伯爵は戦略家だ。そうでなければ、スビリウスはあそこまで追い込まれることはなかった。ただ、相手にも油断があったということ。スビリウスが反撃できたのも、あちらに弱さがあったからだ」


「ということはあの女護衛士は、オブシディアンの関係者ではないものの、何かしらの理由で兄弟を助けたということですね?」


 エレインが確認するように聞いたので、イグマンはうなずいた。


「俺はそう考えている」


「しかし、イグマンさまは『北』とおっしゃいましたよね。何故『北』へ向かうとお思いなのですか?」


 アベルが不思議そうに尋ねる。ジェレミア伯爵家に行くならば、「北東」だと思ったからだろう。北東には、ジェレミア伯爵の屋敷がある。


「実はな、ジェレミア伯爵の屋敷は警官が管理していて、誰も出入りできないようになっているんだ」


 すると意味を理解したアベルはふっと笑った。


「では、行っても無駄なのですね」


「無論『北東』と大雑把にいっても、あそこには細かい町が沢山あるからそこに向かうというのもあるだろう。だが、子どもを連れて一気にそこまで行くとも思えない。距離が長すぎる」


「だから『北』……」


「そうだ。それにトレントより北にあるアドリスの街には、王家派の貴族たちが多いと聞く。支援を求めるなら、そこが有効だと思わないか?」


 イグマンは、エレインたちの顔を見る。先ほどまで苦悩していた表情を浮かべたが、一筋の光が見えてきたことで、明るい笑みを浮かべていた。

 全員がうなずくのを見ると、イグマンは彼らに指示をする。


「では、今日の午後に北へ向かう。各自、準備をすること。いいな?」


 その一言で、エレインたちは一斉に動き出した。

 イグマンの予想が当たるかどうかは分からない。だが少なくとも、今日の昼過ぎに分かるはずである。

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