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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第五章

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第87話 予想外の答え

「色々事情があって電話は使わないんだ。その代わりトレントの町には、商人たちがリョダリに連絡を入れる手段があるんだよ。そこで連絡を入れるさ。それに部族にも、私が何をしていたのか族長として報告もしないといけないしね」


「そうなんですね」


 アルフィがうなずいたあと、ソフィアは何かに気づいたような顔をして、アレクシスを見た。


「そういえば、君の屋敷は大丈夫なのか? まさか闇取引オウルス・クロウが終わってから、何日も家を空けるとは思っていなかったはずだろう?」


 闇取引オウルス・クロウの「横取り」は「夜明けまで」で終わるはずだったのに、スビリウスに追跡されてしまったことで長引くことになってしまった。そしてアレクシスがユーインたちに付き合うということは、その分屋敷を長く空けることになる。


 もちろん、宿屋の電話を借りて屋敷に連絡する手はある。

 だが、誰が聞いているとも限らないため気軽には使えない。

 そうなると、屋敷で「侯爵が戻ってこない」と騒ぎになるのではないかと、ソフィアが心配してくれたのだ。


「その件については、リューイが上手くやってくれる手はずになっているから、一週間はまず問題ない」

 

 アレクシスはそう言って笑う。

 スビリウスが追いかけてきたことは想定外ではあるが、念のため妻のリューイには、何かしら問題が起きて帰ってくることが遅くなったときの対応についても頼んでいるのでしばらくは何とかなる。

 するとソフィアも安心して笑った。


「リューイがやってくれているなら大丈夫だな。——よし。じゃあ、とりあえず全員がリョダリに向かう。そして追手を捕まえることができたら捕まえる、ということにする。異論はあるか?」


「ありません」


「ないです」


「ないよ」


 ユーイン、アルフィ、アレクシスがそれぞれ答えると、ソフィアはうなずいて、今度はアレクシスに指示をした。


「そうと決まったら、アレクシスは旅に必要な買い出しに行ってきてくれ。リョダリまでの地へ行くのに必要な物は分かるだろう? あとはかばんの中で減っているものを確認して調達を頼む。それと受付にフォンランという男がいるから、彼に馬の手配を頼んでくれ。『今朝、お茶を頼んだ女から伝言なんだ』とでもいえば分かるはずさ。私はその間にもう少し仮眠をとるよ」


「分かった」


 アレクシスはうなずくと、クプタに巻いてあった包装紙をそれぞれから回収し、紙袋にまとめる。そしてすぐに鞄の中をあさって、革袋の水や夜明け前までテーブルに置いてあった乾燥果実の数などを確認し始めた。


「あの、僕たちは……、お手伝いしたほうがいいでしょうか?」


 アレクシスが確認していると、ユーインはソフィアに尋ねる。何かしていたほうが気が紛れるというのもあるのかもしれない。

 しかし、さすがに買い物について行くのはまずいだろうとアレクシスが思っていると、ソフィアはベッドに入りながら思っていないことを口にした。


「ついて行きたかったらついて行ってもいいよ」


「え⁉」


 ユーインとアルフィが一緒に驚きの声を出す。


「何だよ、手伝いをしたいと言い出したのはユーインだろう。ただし、二人は駄目だ。どっちか一人だけ。それとアレクシスから離れないことを約束できるならいい」


 ソフィアはそう言うが、驚いたのは兄弟だけではなかった。


「ソフィア、いいのか?」


 スビリウスのことであるから、ユーインとアルフィの顔は知っているはずである。布や帽子で隠すにしても、追手見られたらどうするのだろうか。


 するとソフィアは欠伸あくびを噛み殺してから答えた。


「考えてもみろ。白昼堂々子どもを連れ去る奴がいるか。朝市には沢山の人が行きかっている。こんななかで騒ぎになったら、ソルドーの人間が追手を捕まえるぞ。スビリウスの使える駒だとしても、多勢に無勢。追手たちは捕まったら最後、密かにユーインたちを回収する任務が遂行できなくなるし、自分たちの釈放のためにスビリウスにも迷惑がかかることにもなる」


「なるほど……」


「ま、そういう騒ぎが起きて、ユーインとアルフィが私たちの元に戻ってきたとしても、顔立ちが似ていないから本物の親とは思われずに疑われて、面倒なことに巻き込まれる可能性はあるけどね」


 アレクシスはソフィアの最後の言葉に、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。


「結局付いて行っていいのか、悪いのか……」


「だから、一人ならいいって言っているだろう。人ごみの中でアレクシスが見失わず傍にいられる数だ。二人は無理。そしてユーインか、アルフィが付いて行くにしても、アレクシスから離れないことを約束できればいい。迷子になったら探すだけで時間がかかるし、そうなったら知らぬ間に追手に連れていかれるのは間違いないからね。じゃあ、あとは三人で決めてくれ。私は寝る」


 そう言うと、ソフィアは枕に頭を載せ、あっという間に眠ってしまった。

 ユーインとアルフィとアレクシスは、静かになった部屋の中でそっと視線を合わせる。どうするのかと目だけで相手の心情を伺っていたが、あまり時間がかからずユーインが一言言った。


「大人しく待っています……」


「僕も……」


 続いて同じく待っていることを決めたアルフィに、アレクシスは肩を落とした。


「そうしてくれると助かる……」


 こうして次の目的地までの買い物は、アレクシスだけがすることになったのである。

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