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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第四章

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第68話 十年前の過ち②——「セレイアヌ」という名の民族

「エレナさんの……母上のことを、お調べになったということですか?」


 ユーインの問いに、ソフィアは「少し違うかな」と言って続けた。


「私たちは、闇取引オウルス・クロウに出入りする前に、様々な情報をかき集めるんだ。その中に、警官が各管轄地の署内持っている行方不明者の情報を調べたり、各地にある人相書きを見に行くことがあってね。警官の行方不明者資料に関しては、開示してある情報であればセルディア王国の者であれば誰でも見ることができるから、よく確認しに行くんだよ」


「ソフィアさんも行ったことがあるのですか?」


「まあね。私は黒髪に黒い瞳だし、目鼻立ちもセルディア王国によくいる見た目とそう変わらないって言われて、二回か、三回くらいは……。ただ、情報の重要性が上がってくると、住所とか身分とかを書類に書いておかなくちゃならなくてね。そうなってくると私は無理だし、頻繁に出向いて警官に面が割れているっていうのもあんまりいいことじゃないって言われて、それ以来行ったことはないけど」


「なるほど、そういう仕組みになっているんですね……」


 ユーインは興味深そうにうなずく。

 役場の仕組みなどは実際に行ってみないと分からないことが多いため、話を聞いて面白いと思ったのかもしれない。貴族の跡取りとしては、持っていて損はない好奇心である。


「話は戻るけど、その警官が持っている資料の中にエレナの情報があって、『母親が行方不明者届を出していた』ことを侯爵は知ったと言っていた」


 先代のグロリア侯爵はお抱えの諜報員ちょうほういんを使って、闇取引オウルス・クロウのことを調べながら、行方不明者のことも調べている。

 ゲームの景品や競売の商品として出される人たちは、必ずどこからか連れて来られているからだ。無理矢理連れ去れる場合もあるし、子どもだと家出をしている子たちが標的になりやすい。彼女の場合は前者だった。


「資料によると、エレナは家族と町で買い物をしている間に、路地に連れ込まれてそのまま帰って来なかったらしい」


「ですが、どうしてエレナさんを連れ去ったのでしょうか?」


 ユーインの質問に、ソフィアは目線をせてから答えた。


「エレナは、セルディア王国の南西に住む『セレイアヌ』という民族で、瞳が明るい空色をしているんだ。肌の色は陶器のように白く、髪の色が金色でね。セルディア王国では珍しい色をしていたから、スビリウスに捕まってしまったのだと思う」


 セルディア王国では瞳の色が黒や茶色、灰色がほとんどで、髪も黒か茶色だ。

 貴族の中には、ユーインたちのように色の付いた瞳(フェルシュミズ)をしている者もいるが、それほど多くはない。


「セレイアヌ」は、セルディア王国の人々と血を交えていないことから、ほとんどが金髪で空色か明るい琥珀色の瞳をしている。そのため、セイレアヌの者たちの珍しくて美しい外見に価値を見出す者たちがいるのだ。

 闇取引オウルス・クロウは、そういう人間の欲望を利用して商売をしている。


 さらに悪いことに、セルディア王国にいるほとんどの民族は、国でその存在を認められていない。つまり保証されていないのだ。それは闇取引オウルス・クロウにとって都合がいい。


(警官の行方不明者名簿に載っていたのは、エレナの母親がお金を出したからだろう。認められていない民族は、本来警官を頼ることもできない。それでも一縷いちるの望みを込めて金を積んで頼んだのだろう。金額はどれくらいのものだったのか……。先代のグロリア侯爵は、それを想像して胸を痛めていたな……)


「……ひどいです」


 ユーインの肩に力が入るのが分かる。

 エレナを捉えて闇取引オウルス・クロウに出した者たちへの怒りはもちろん、スビリウスに捕まっている間に己が受けた屈辱くつじょくを思い出しているのかもしれないと思った。

 ソフィアはそれに気づかぬふりをして、「そうだな……」と言ってうなずいた。


「だから侯爵は、エレナを母親の元に返すために、彼女がどこへ連れていかれたのかを色んな伝手つてを駆使して捜したんだ。一週間後、ある伯爵家に連れていかれたことが分かった。美しい者を使用人にしたかったようだが、それはエレナの意志とは反する。だから、彼女をそこから救い出すために、作戦を実行する一人として私が選ばれた」


 ソフィアはそこまで言って、ハティルをまた口にした。

 口の中には爽やかな香りが広がるが、思い出される記憶から苦いものがにじみ出る。


(……ユーインには、全て本当のことを言う必要はない)


 ソフィアは喉をうるしながら、そう思った。

 エレナは伯爵家の使用人になったわけではない。彼の気味の悪い性癖のおもちゃとして使われようとしていたのである。

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