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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第四章

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第58話 報告

 ソフィアが宿屋に戻ると、出たときと同じ者が受付の対応をしてくれる。お陰で事情を話す手間がはぶけ、ほとんど時間がかからず手続きを終えられた。


「階段の辺りはまだ暗いから気を付けてください」


 馬をもう一度預けたあとそのように言われ、明かりの灯ったランプを貸してもらう。

 ソフィアには必要はないが、「いらない」というのも変な話なので、お礼を言って受け取るとそのまま宿屋の階段を上った。 


 まだ夜が明けたばかりということもあり、宿泊している者たちも起きていないようである。建物の中はしんとしていた。


 周りに迷惑にならないように静かに階段を上ると、「383」という番号が書いてある扉の前に立つ。そして扉を三回、一回、二回とたたいた。


 寝ているだろうかと思っていたが、ほどなく扉が開き、アレクシスが迎え出てくれた。


「おかえり」


 ほっとした気持ちと嬉しさがにじむような声で言われ、ソフィアは胸の奥が柔らかいものに包まれるような温かさを感じた。


 だが、それを人に見せるような彼女ではない。アレクシスに対しては、ぶっきらぼうに「ただいま」と答えた。


「怪我はない?」


 扉を大きく開いてソフィアを部屋へ入れたあと、アレクシスはそれを閉じながら尋ねた。


「ない」


 すぐに返答すると、胸をでおろしたようにアレクシスは「よかった」と言った。

 彼はソフィアが戦いに関してとても強いことは知っているが、いつも怪我がないかを確認する。こういうところは、先代のグロリア侯爵と似ているなとソフィアは思う。


「追手はいた?」


 アレクシスの問いに、ソフィアはランプをテーブルに置いて、椅子に座ってから答えた。


「いたよ。四人一組になって動いていた。でも、私が見つけたのはそれくらいだな。あとは組織の人手が足りないのかなんなのか、彼ら以外の気配はなかった」


「そうか……。とりあえず、追手の人数を把握できたことだけでも良かったということかな」


 どうやらアレクシスは、ソフィアがただ単に追手の偵察に行ったとしか思っていないようである。


(まあ、いいか)


 銃を撃ったり、撃たれたりということもあったが、その話をすると拾った拳銃のことも話さなければならなくなり、長くなってしまう。


(話よりも、まずはアレクシスを休ませないと)


 ソフィアが出て行ってから気を張っていたに違いない。

 だが、アレクシスはベッドに行かず、ソフィアが座る椅子の傍に寄ろうとするので、彼女は「話す気がない」というつもりで靴紐くつひもを緩めながら言った。


「ずっと起きていたんだから、少し寝な」


 するとアレクシスがきょとんとした表情で「話があるんじゃないの?」と尋ねる。今後についてのことだろう。もちろんそれはアレクシスと話でどうするか考えなくてはならないと思っていることだが、今すぐに話さなければならないことでもない。


「それは一旦寝てからでも遅くない」


 ソフィアが答えると、アレクシスはちらっとユーインたちが眠っているベッドを見て再び聞いた。


「ユーインたちに聞かれてもいい話?」


 難しい話なら、自分とソフィアだけで話をすればいいと思っているのだろう。その気持ちも分かる。

 ようやく暗闇から抜け出したとはいえ、これから先、ユーインとアルフィには考えなければならないことが山ほどあり、辛いことが待ち構えていることも容易に分かる。


 そのため、できるだけ負担を無くそうと彼は考えているのだろうとソフィアは思った。


 しかし、それはアレクシスが傍にいればできることであって、常にそうできるとは限らない。寧ろ、難しいのが現状だ。


 ジェレミア伯爵が生きているのか、母親が生きているのか、家人たちはどうなのか。アレクシスはその状態を知っているのか分からないが、どちらにしてもいないことを想定して動かなければ、ユーインとアルフィは搾取さくしゅされるだけになってしまう。辛くとも彼ら自身が向き合わなくてはならないのだ。


 そのため、ソフィアはあえて厳しいことを言う。


「隠すことなんて何もないさ。今隠したって、いずれは話さなくちゃならなくなるんだからな」


 するとアレクシスは肩を落とす。


「まあ、そうだよね……」


 彼も頭では分かっているのだ。だが、心根が優しいため無下にはできないのである。そのため彼が厳しくできないことは、ソフィアが厳しくする。


「だから、話さなければならないことは、ユーインとアルフィが起きてから話す。だから寝ろ」

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