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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第三章

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第57話 夜明け

     ☆


 ソフィアは一通りのことを済ませ、対峙していた四人の男たちから離れると、馬に駈歩かけあしを指示してセレレインの森を一気に駆け抜けた。


 両脇に並ぶ木々が、目のはしで流れていく。それを感じ、後ろも気にしながらしばらく進むと、木でおおわれていた空が急に開けた。森の出口である。


「……」


 セレレインの森から出ると、ソフィアは一度馬を止めて辺りを確認した。

 予定通り、追手は付いてこなくなったようだ。とはいえ体勢やら、作戦やらを練り直し出直してくるだろうから、「追ってこなくなった」としても一時的なものだろう。


 だが、次の準備に取り掛かるための時間は作れた。上出来である。


(ひとまず忠告は通じたようだな。それにあの四人には、「恐れ」を植え付けられたはず。闇夜にはっきり相手を見ることができるなんて、見えない者からしたら恐ろしいからね)


 ソフィアは肩の力を抜いて、はあ、と嘆息たんそくする。


(先代のグロリア侯爵の元にいたときに習わされた演技が役には立ったが、正直ああいう言葉攻めをするのは得意じゃないんだよなぁ……)


 こんで真っ向勝負をしたほうがソフィアとしてはずっと楽なのだが、追手の男たちと話をせざるを得なかったので仕方がない。


 わざわざ演技という面倒なことをするのは、相手の動揺を誘うほかに、追跡を避けるための目眩めくらましでもあるからである。あくまで今の自分は「ソフィア」ではなく、「ジェームスに仕える女護衛のレイグス」。そのためユーインたちが安全なところに行くまでは、「レイグス」という人物として振る舞わなければならない。


(まあ、これもアレクシスの指示だし、私とリョダリに迷惑がかからないように考えてくれてのことだろうから仕方がないとして、相手は地の果てまでユーインたちを追いかけようとしている。諦めさせるには、アレクシスの持っている人脈だけでは頼りないだろうな……)


 ソフィアはふうと息をつくと、右に見える東の空が青くなっているのに気づいた。


(そろそろ夜明けだ……)

 

 ソフィアは馬に歩くよう、太ももを彼の胴に当てて指示を出す。素直に従った馬は、速足はやあしで歩き始めた。


(ごめんな、沢山走らせて。もうちょっとだけ頑張っておくれ)


 ソフィアは心の中で馬に謝ると、今度は手に持っていた一本のこんの接続部を回す。町に入るまでにバラバラにして、短くしておくつもりだからだ。


 この辺りは旅人がよく出入りすることからソルドーへ入る商人や旅人はもちろん、住んでいる者も護身用の武器を持っていることがほとんどである。治安がいいとは言えないからだ。


 そのため、ソフィアが棍を持っていること自体は問題ない。


 だが、あからさまに出していると、警戒されてしまうこともある。


 ソフィアは棍を三つに分けると、ズボンの後ろのポケットから黒くて薄い綿袋を出す。その中から一本の長くて丈夫な麻紐あさひもを取り出すと、三本の鉄の棒を手早くくくった。こうすれば、馬の上で揺れてもカチャカチャとぶつかる音がしなくて済む。


 そのひとまとめしたものを綿袋に仕舞うと、袋についている紐を使って、右肩からななめ掛けした。


 これで棍は問題ない。


 そして彼女はもう一つ、手に持っていた拳銃も袋に入れる。男から取った自動式のものだ。

 先ほど使って銃口じゅうこうが熱くなっていていたが、手袋越しなら触れるくらいにまで冷めたので、一緒に入れても問題ないだろう。


(拳銃、持ってくるのはあまり気が進まなかったが、何かしらの手がかりをつかめるかもしれない。痕跡こんせきなんか残すような奴らじゃないから無駄骨になるかもしれないけど、ユーインたちの一件が済んだらアレクシスに調べさせよう)


 ソフィアが武器を仕舞い終えたころ、ちょうど町の入り口に辿たどり着く。

 東の空は先ほどよりも明るくなり、新しい朝を迎えようとしている。

 淡い青と紫色の色が頭上に広がる下で、ソフィアは馬をあやつり、宿屋へ向かう西側の道へ入って行った。

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