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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第三章

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第53話 付いて来る者

(何だ、この気配……)


 エレインは馬の速度を落とし、気配がどこからきているかを探る。


(どこだ? どこにいる?)


 頭や首を動かして確認したいところだが、気にしていることが相手に気づかれてしまうためあまりしたくはない。

 仕方なく視線だけ動かして暗闇に目をらす。


 だが、前方にも左右にも感じられない。

 この辺りは町と森を繋ぐ道の近くであるため、建物も少なくなってきている。


(建物に隠れているっていうのでもなさそうだな。ということは、後ろから付いてきていると考えたほうがいい。……試してみるか)


 エレインは馬の速度を常歩なみあしから、再び速足にする。

 すると漠然としていた気配が、はっきりと背後から近づいてくるのが分かる。予想した通り、どうやら重い気配を放つ者が自分を追っているようである。


(強盗か?)


 め事があったとしても、暗くて何が起きているか分かりにくいだろうし、分かったとしても月もない夜である。目撃情報は当てにならないだろう。


 警官が捕まえることはでいないと踏んで、エレインからみぐるみはぎ取ろうとしているのかもしれなかった。


 だが、エレインはそうやわな人間ではない。

 裏社会で傭兵ようへいとして生きているのだ。自分が襲われることに対する恐れなどない。ただ、誰だか知らない者についてこられると仕事に支障が出てしまう。


(振り払えるか?)


 多少危険ではあるが、後ろに付いてくる者を何事もなく回避かいひするには、走る速度をもっと上げて振り払うしかない。


(幸いもう少し行けば森に入る。一度通ったお陰で大体注意するところは分かるし、何とか走れるだろう。付いてきているのが誰だか知らないが、この暗闇で森の中を駈歩かけあしでついて来れるやつはそうはいないはずだ)


 エレインは次の行動を決めると、手に持っていた棒付きのランプの火を消す。

 馬の速度が上がるとランプの光は役に立たず馬の邪魔になってしまうため、棒からランプを外しくらにある出っ張りにランプを引っ掛けた。棒は伸縮できるもののため、縮めて腰につけているかばん雨蓋あまぶたと本体の間に通しておく。もしかすると揺れで落ちるかもしれないが、そうなったら致し方がない。


「よし」


 エレインは自分にだけ聞こえるように呟くと、一度深呼吸し、足を使って馬に駈歩で走るように指示を出す。

 すると馬は指示をきちんと理解し、一気に駆け出した。速度が上がり、風が顔に強く当たりはじめる。

 しかし、背後の気配はぴたりとくっついて来て追いかけてきた。


(ちっ、付いて来るか……)


 内心で悪態をつく。気配がより近づくことはないが、離れてもいかない。

 しかしそれも森に入るまでだと割り切り、エレインは後ろを気にしつつもセレレインの森の中へ入って行く。


(集中しろ)


 心の中で自分に言い聞かせる。

 明かりをつけていないため周囲がまるで見えない。


 先ほど通った道の感覚を記憶を頼りに進むしかない。

 だが、一歩でも間違えれば自分が馬から振り落とされて怪我をしてしまうかもしれないし、馬も怪我をすれば、その分の支払いをしなければならなくなる。それは何としても避けたい。


 だが、付いてきている者は、予想に反して中々は離れてくれなかった。

 エレインと同じ速度を保ちながらぴたりと後ろを付いてくる。並大抵の技ではない。


(くそっ。何なんだ? 闇で見えないはずなのに、何故付いてくる⁉)


 スビリウスの仕事をしている限り、予定外のことはよく起こり得ることだが、邪魔者が付いてくることは中々ない。その上、暗闇における馬の扱いは、悔しいが相手のほうが上だ。

 そのせいでこの問題を自分だけで処理しきれないことに、エレインはだんだんと苛立ちが募ってくるのを感じる。


(こうなったら、銃を使って威嚇いかくするか?)


 このまま行くと、分かれ道に突入する。その先は一本道だが、万一もう一つの道から誰かが来たら事故になってしまうだろう。

 

 その前に速度を落とさなければならないが、そこは付いてきている者を振り払うには最後の場所でもある。


 上手くしないと、その先の川べりで確実に追いつかれる。

 簡単にはやられるつもりはないが戦いになれば無駄に体力を消耗しょうもうすることになり、それこそ追跡に影響が出てしまう。


(あんまり弾の無駄遣いはしたくないんだが……)


 エレインが右手を手綱から離し、ふところに入っていた拳銃けんじゅうを取り出そうとしたときだった。

 目の前にランプの明かりが見えたのである。


(三つ……? もしかしてイグマンさまか?)


 エレインは懐に入れた右手を手綱に戻すと、後ろの気配を振り払うように、その光へ突っ込んで行く。

 だんだんと距離が近づき、見慣れた顔が見えた瞬間、エレインは手綱と太ももを使って馬に速度を落とすように指示をして一気に速度を落とした。


「誰だ!」


 聞こえた声は、まさに頼りになる上司のものである。


「イグマンさま!」


 エレインは上司の脇を通り過ぎると、馬首をめぐらしてすぐにイグマンの隣に並んだ。

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