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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第三章

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第46話 ジェレミア家の屋敷

    ★


 二か月前のあの事件から、ユーインとアルフィは屋敷に戻っていない。

 そのため父や母、グレンがどうなったのか、そのほかの使用人たちは無事だったのかを聞きたかったのである。


 だが、アレクシスの答えはユーインが求めていたものではなかった。


「それは……、今は話せないんだ」


 ユーインはぎゅっと眉を寄せる。


「どうしてですか? 僕が聞いてはいけないことだからですか? それとも」と、ユーインは一度言葉を区切ってから、小さく「恐ろしい話だからですか……?」と続けた。


 武装した男たちが、一斉に入って来たのだ。


 さすがのユーインも、あの状況では屋敷にいたほとんどが怪我をしていただろうと思っている。もちろん、父や母も例外ではないのは想像にかたくはない。


 全てのことを聞ける覚悟ができていると聞かれるととてもうなずけはしないが、皆がどうなったのか分からないというのも、自分が地に足をついていないような感じがして落ち着かないのだ。


 ユーインは緊張しながらも、アレクシスの答えを待つ。

 すると彼は意外なことを口にした。


「そうじゃないよ。調査中のことでまだ何も分からないんだ」


「調査中?」


 怪訝けげんな声で尋ねる彼に、アレクシスは静かにうなずいた。


「そう。だから申し訳ないけれど何も言えない」


 話しはそれでおしまい――そんなふうに言われた気がした。

 だが、ユーインは納得できなかった。事件からはだいぶ時間が経つ。何か分かっていることがあってもいいはずだ。


 そのため、ユーインは質問を重ねた。


「でも、もう二か月も前の話なんですよ。何か進展があったって……父上や母上がどこにいるかとか、知りたいのに……」


 しかしアレクシスの返答は変わらなかった。ゆっくりと首を横に振り申し訳なさそうに同じ返答を繰り返す。


「ごめんね。二人の家族のことについては、今言えることは何もないんだよ」


 ユーインは下唇をちょっと噛んだあと、思い切ってアレクシスに「僕に隠しごとをしているわけではないですよね?」と聞いた。

 子どもだからといって話せないと思っていないか、確認したかったのである。


 アレクシスはしっかりとうなずいた。


「うん。そういうことじゃないよ。はっきりとしたことが言えないし、私も知らないことが多いんだ。だから言えない」


 真摯しんしな言葉に、ユーインは自分の気持ちが徐々《じょじょ》に落ち着いていくのを感じる。

「分かっていないのが自分だけではない」と思うだけで、一人ではない気がしたからかもしれない。


「そうなんですね。分かりました」


 ユーインがふうっと息をつくと、アレクシスがあごでこんなことを言った。


「でもそうだな……。二つだけ、君たちのことで話せることはある」


「何ですか?」


 ユーインが身を乗り出して聞くと、アレクシスが「座って話そうか」と言う。もしかすると長くなるのかもしれないと思い、ユーインは彼の向かい側の席に座った。


「言いにくいことだけれど、まずジェレミア家の屋敷は燃やされてしまったんだ。だから、ユーインたちが家に戻ろうしてもすぐには戻ることはできない」


「え……⁉」


 ユーインは驚いて目を丸くする。

 自分が見ていたときまでは、焼けるようなにおいなどはしなかったので、まさかそんなことになっているとは思わなかったのである。


「私も直接見たわけではないから、本当のところは分からない。だけど、新聞で読んだ内容と私の命令で直接見に行った使用人から聞いた話によると、石造りだから外側は残っているんだけど、中の損傷は結構酷いということだ。それから君たちのお父上が持っている別宅も、全て調査の対象になっていて入ることができない。それは君たちも例外じゃないんだ」


「どうしてですか?」


 納得がいかない、というふうにユーインは言う。

 自分はジェレミア伯爵の息子であり、第一後継者である。それなのに伯爵が持っている別宅にすら入ることすら許されないというのが信じられなかった。


 アレクシスは「気持ちは分かるよ」と、ユーインの気持ちを察しながら言葉を続けた。


「大きい事件だったこと、少なくとも十数人による犯行だったこと、そして犯人全員が逃亡したことで調査が難航なんこうしているんだ。屋敷を襲った犯人を捜そうにも、屋敷が焼かれてしまっているせいで有力な証拠を見つけられないでいる」


「でも、大人数だったってことは分かっているんですよね?」


「屋敷に入るまでの庭に無数の足跡が残されていたからだよ。消した痕跡こんせきは残っていたけど、さすがに草が踏み潰されている状況を見たら、一人や二人の犯行ではないことは屋敷の中を見なくても分かるからね」


「……」


「それと並行してユーインたちのお父上が誰と関係があって、うらみなどを買っていないかなどを調べるために、資料を探しているんだ。犯人を絞るために」


「そうなんですか……」と、呟いてからユーインは小首を傾げる。


(あれ……?)


 そのときユーインはアレクシスの言葉に引っかかりを覚えた。

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