表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇夜の護衛  作者: 彩霞
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/85

第43話 先手

「追手が来たのか?」


 不安そうに尋ねるアレクシスに、ソフィアは「いや」と否定してから言葉を続けた。


「だが、そろそろ来るころだろうと思ってね。その前に先手を打っておこうかと」


「先手?」


「そうだ。リブームの戦法のようにね」


 そしてソフィアは荷物袋をから一旦分解したこんを手探りし、彼に質問をする。


「ジェームス、君はこの先をどう乗り切るつもりでいる?」


 尋ねられたアレクシスは、少し考えてから答えた。


「とりあえず、数日間は宿屋を転々とするつもりだ。レイグスには悪いが、護衛はもちろん私の相談相手として付き合ってもらう」


「それから?」


「安易な考えかもしれないけど、そうしているうちにいつかは追手をけると思うんだ。さすがのスビリウスも、数日間もこの件に関わっていられるほど余裕はないと思うから。そして最終的には、ユーインたちを用意している屋敷か、もしくは我が家に来てもらうつもりでいる」


 ジェレミア伯爵の家が、現在どうなっているのかはソフィアには分からない。

 しかし、アレクシスが別の屋敷を用意しているということは、ユーインとアルフィは元の家に戻れない状態にあるということだろう。


(ジェレミア伯爵邸の状況をアレクシスに聞きたいところだが、まだユーインが起きているから話してもらうわけにもいかない、か……)


 ユーインが聞いたら立ち直れなくなるような話だろうということは、彼らがスビリウスの捕虜になっていた時点で想像がつく。


 そのため、ソフィアは不明瞭な部分については想像しながら、アレクシスの作戦の穴を指摘した。


「悪いが、その提案は却下きゃっかだ。まずここ数日逃げたとしても、用意していた屋敷にはいけないと思ったほうがいい。スビリウスがずっと付いてくる可能性がある限り、落ち着く場所を作ったらそこが確実に狙われる」


「だったら、屋敷じゃないところならいいか? 貸家を借りて、とりあえずそこに住むとか? こうなることもあろうかと思って用意はしているんだ」


 ソフィアは三つに分かれた棍を全て取り出し終わると、否定した。


「駄目だな」


「どうして?」


「警備が手薄になるだろう」


「ちゃんと護衛も付ける」


「君のことだから、きっとそうするだろう。だが、その護衛たちがどこの所属なのかが分かってしまったときは?」


 つまりグロリア侯爵家が用意したものだと分かれば、今度はアレクシスや彼の家族、使用人たちがねらわれるかもしれないということである。


「……」


 アレクシスが急に黙ったので、傍で話を聞いていたユーインが困ったような顔をした。自分たちに関わることで、何か良からぬことがあると感じ取ったのだろう。


 彼の不安を振り払うように、ソフィアはアレクシスの返答を待たず、何でもないように淡々とした口調で続けた。


「どちらにせよ、今はどこかに落ち着くことは考えないほうがいい。一旦彼らをくなり牽制けんせいするなりしなければ、状況は不利になる一方だ。あっちは復活したばかりとはいえ、この件に関してはいくらか捨て駒を用意しているだろうしね。だから逃げるだけじゃなくて、こっちからも仕掛けて数を減らしておいたほうがいい」


「まさか……戦うのか?」


 驚くアレクシスに、ソフィアは不敵に笑うと三つに分かれたこんを持って立ち上がり、一つ付け加えた。


「そんな心配そうな顔をするな。言っておくが、私がここを出たら君が二人を守るんだぞ」


 途端に驚きと不安の表情を浮かべる。


「え……」


「『え』、じゃない。すでにここまで来ている奴らもいるかもしれないし、潜んでいるやつもいるかもしれないだろう。とにかく、この件をやり出したのは君なんだから、やることはやってもらわないと。嫌だったら別の信頼できる奴を連れてくるんだったんだな」


 ソフィアが困っているアレクシスを見て面白そうにふっと笑うと、彼は観念したようにうなずいた。


「……分かったよ」


「じゃあ、行って来る。私が帰って来たときは扉は、三回、一回、二回とたたくからな。それ以外は出るな。あ、ただサレンリー(=トイレ)は部屋を出て右手にあるから、行きたいときは構わない。その代わり、周りに注意すること」


「もし、宿屋の人が部屋を訪ねて来たら?」


「夜中には外が火事とか、騒ぎにでもならないかぎり来ないだろう。私も日が上り始めるころまでには戻るから大丈夫だ。それから今からの時間じゃ夕食は食べられないだろうから、腹が空いていたら非常食のジヨルやツリックを食べてくれていい。朝にはこの辺りで調達するからね。ただ、念のために半分は残しておいてくれ」


 ソフィアの指示に、アレクシスはしっかりとうなずく。


「分かった。気をつけてな」


「ああ」


 ソフィアは短く返事をすると、棍だけを手にして部屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ