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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第二章

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第31話 セレレインの森

     ☆


 ソフィアたちは借馬屋しゃくばやの東にあるもう一つの出口から出ると、五メートルほど進んだところにある形の悪い十字路から、北西のほうに続いている道に入った。


 この辺りの道は大通りのような石畳いしだたみになっておらず、道幅もせまい。よって馬車は通らないが、代わりに小さな荷馬車が頻繁に行き来をする。そのためある程度は道ができるため、徒歩や馬で通る分には十分である。


 そしてここを進んでいけば、「セレレイン」という名の森のほうに続く。さらにセレレインの森に入ると、途中で分かれ道に出る。


 左に進めば「ソルドー」のほうに着き、右に進めば「ルテ」と呼ばれるソルドーの東隣の町に辿たどり着く。


(選択肢を二つにしておいたほうが、いざとなったときに切り替えができるし、追手も混乱する。それに……)


 ソフィアは裸馬の部分に乗りながら、借馬屋で別れたアレクシスに仕えている老齢の馭者ぎょしゃを思い出す。


(どれだけの追手が『見せかけ』に引っかかるかは分からないが、あちらに向かったのがスビリウスでさえなければ、馭者ぎょしゃは夜が明ければ解放される。こうすれば、アレクシスの大切な仲間を一人助けることができるだろう)


 見た限り、アレクシスに仕えている老齢の馭者は、先代のグロリア侯爵のときから仕えている人物である。何度か闇取引オウルス・クロウが開催される会場までの送迎でお世話になったことがあったので覚えていた。


(そろそろ若い者に交替をしてもいいだろうが……、信頼できて、かつ、仕事もできるとなるとそうはいないのかな)


 馭者の仕事を辞めるべきだといっているわけではない。闇取引オウルス・クロウやスビリウスに関わるときまでしなくてもいいのではないかと思っているのだ。


 闇取引オウルス・クロウに関わる仕事は、普通の業務よりも神経をすり減らす。


 何故なら主人の名前はおろか、顔や身分すらも明かしてはいけないからである。

 よって自分の行動もつつしまなければならない。

 仮に「グロリア侯爵家に仕えている馭者」であると知られてしまったら、「グロリア侯爵」がオウルス・クロウに出入りしていることがバレてしまうからだ。


 そうなれば、またたく間にグロリア侯爵の手にした品物から、おかしな噂が出始める。盗品の美術品なら「窃盗」の罪を被せ、人間の商品であれば「人を奴隷化している」と非人道的なことを責め、社会的地位を落としていくのである。


 スビリウスは、相手の状況を利用して「噂の収束をさせてほしかったら金を寄こせ」と、高額な金額を要求するのだ。

 狡猾こうかつな連中なのである。

 

(まあ、私が考えることではないのだけれど……)


 ソフィアは小さくため息をつくと、後ろを振り返った。

 少し振り返ったところに、アルフィとアレクシスが乗った馬が付いてきている。さらにその先に視線を向けたが、どうやら追手はまだ追いついていないようである。


(さすがに馬までは用意していなかったかな)


 油断はできないが、馬車から馬に乗り換えたことで、多少の時間稼ぎはできたようだった。


 また彼女の中で、足を引っ張るであろうと計算をしていたユーインもアルフィは、思った以上に乗馬の訓練をきちんとさせられていたようで、落ち着いている。


 ソフィアは周囲の気配を読みつつ、ランプを付けていても道の状況が分かりにくいアレクシスに都度気を付けるところを指摘しながら、森の中へ入って行った。


 セレレインの森に入っていくと、わずかに緑の香りがしてくる。ソフィアは緑の匂いを感じながら、常歩なみあしで森を進んでいた。


(月が出ていると、花も開くから甘い香りも匂ってくるんだけどな)


 秋に入り始めた今の時期であれば、月が出ている夜にラウという真っ白な花が咲く。すると虫を集めるために放つ甘い匂いが、人をも楽しませてくれるのだ。


 しかし今宵は新月。よって花々は閉じており、その香りはしない。


(少し残念だな)


 ソフィアは心の中で肩を落とす。


 彼女の部族が住む国境付近の「とある場所」には、ほとんど草木がない。


 最初からそうだったわけではなく、今から百年ほど前の第七代セルディア国王スヴァーナが、国境の辺りの見晴らしをよくするために、サハナ王国との境にあった「ルビリア」という豊かな森の木を全て切り倒してしまったのである。


 サハナ王国からの難民が勝手に入ってこないように、傍にあるがけの上から見張るためだった。

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