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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第二章

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第25話 最初の戦い

 借馬屋しゃくばやには、受付所や馬小屋などの建物以外には、ほとんど隠れるところがない。馬が怪我をしないよう、障害物を作らないようにしているため、仕方のないことである。


 隠れられるとすえれば、馬が出て行かないようにするため、道沿いに備え付けられている一メートルほどのさくと、道の中央を区切るために植えられている灌木かんぼくくらいである。


 相手もここが様子を見るのに適していると考えるだろうが、幸いまだ来てはいない。ソフィアは灌木に身を隠しながら、柵のほうへ向かい、道の様子を確かめるため、そっと顔を出す。


 すると、入り口に停めた馬車の前で数人の男たちがこちらに背を向け、馬車に付けたランプを頼りに話をしているのが見えた。


(暗闇の中、危険に飛び込もうとするとはね。度胸があるのか、無謀むぼうなのか。それともそうするしかないのか……)


 ソフィアは内心嘆息しつつ、相手の様子を伺う。

 どうやら借馬屋の前にいるのは、スビリウスではなさそうである。


 彼らならこちらに背を向けて話すようなことはしないだろうし、そもそもオブシディアンの仲間を見つけることを考えれば、ここでは襲撃はせず、ソフィアたちを泳がせた上で動くと考えられるからである。


 つまり、出入り口に突っ立っている男たちは、リブームで負けたがユーインやアルフィを手にしようとしている者の手先ということだ。


 ソフィアは革の手袋をはめた左手でこんを軽く握ると、いつでも素早く動けるように準備する。そして、気配を消し相手の様子を探った。


 しばらくすると、ソフィアのいるほうへ四人の男たちが歩いて来た。


 それぞれ仕立てのいいスイーヴィル(=動物の毛で織ったスーツのこと)に身にまとい、手には拳銃が握られている。新月の暗闇の中だが、光があろうともなかろうともソフィアの「目」にははっきりとそれらの状況が見えた。


(自動式か)


 ソフィアは彼らの手に持つ拳銃の種類を見極める。

 ほとんどが弾が自動装填されるものを持っていたが、一人だけ回転式のものを手にしていた。


(回転式だ。狙うならあっちだな……)


 ソフィアは顔を引っ込めると、柵から十メートルほど離れて丁度植え込みが切れるところに身を潜め、わずかに立てる相手の足音を聞きながら、自分との距離を測る。


(もう少し引き付けて――今!)


 ソフィアは音もなく物陰から飛び出ると、こんを振るって一番近くにいた男の足元を軽く払った。


「うわっ!」


 足元を払われた男は尻もちをつき、拳銃を握っていた右手の手が緩む。ソフィアはその隙を見逃さず、軽く蹴りを入れて拳銃を手放させた。


「痛っ!」


「どうした!」


 男のうめき声に仲間が反応したが、ソフィアはその間に尻もちをついた男の後頭部をこんで打ち、あっという間に気絶させる。

 さらに振り向きざまに、背後にいた男の鳩尾みぞおちに向かって、鋭くこんを打ち込んだ。


「ぐあ……!」


 手加減はしたが、相当な痛みは伴う。

 打たれた男は苦しみのあまり鳩尾を抱えながら悶絶もんぜつし、その場に倒れてしまった。


「何者だ!」


 三メートルほど距離のあるところにいる男が、そう声を上げた。先ほど仲間に声を掛けた男のようである。


 相手は暗闇では見えないため、音を頼りにソフィアがいるであろう辺りに銃口を向けていたが、気づかぬうちに仲間がやられたせいか気が動転しているようで、拳銃を持った手が震えていた。


(それでは私は撃てない)


 ソフィアは男の精神的状況を一瞬にして見極めると、さっと体を屈め、たん、たんっと二歩ほどで男との距離を詰める。


「なっ!」


 男は、暗闇の中で誰かが自分に近づいたと分かったようだったが、ソフィアの動きが早くて何もできない。

 その間に彼女はくるりと男に背を向けると、彼の右腕を掴んで自分の右脇にはさんだ。男が何が起こっているのか分からない中、男の腕を捉えたまま、ソフィアは体ごと一気にじった。


「ぐわあ!」


 脱臼だっきゅうし神経と筋肉が切れたため、男が痛みに悲鳴を上げる。

 しかしソフィアは構わず、絶叫する男の下っ腹へさらに強烈な膝蹴りを入れた。


「あ……」


 男が痛みで気を失うそのすきに、彼の手から回転式の拳銃を奪うと、それを右手に持ち、流れるように最後に残った男の眉間に銃口を向ける。


「誰に雇われているか教えてもらうか?」


 低い声でそう尋ねる。銃口を向けられた男は、仲間がやられたにもかかわらず冷静だった。ソフィアが発した声を頼りに、彼女のほうに銃口を向けて、同じように尋ねる。ただし、ソフィアの姿を完全に捉えていないせいか、銃口はゆらゆらと動いていた。


「こちらもそれを聞きたいですね。あなたは何者なのですか?」


「聞いているのはこちらだ。返答によっては、撃つ」


 すると男は、余裕なのか、己の冷静さを保つためか、ふっと笑う。

 そのとき男の背中がぱっ、ぱっ、明滅した。どうやら手に持っている喫煙用の点火器を自分の背で点けたり、消したりしているようである。


生憎あいにく、雇われている身なのでね。ご想像にお任せしますよ!」


 途端、男が後ろのほうにすっと体を避ける。そのとき連続して銃声がしたかと思うと、彼女の足元に数発の銃弾が撃ち込まれた。

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