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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第二章

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第22話 借馬場

 馬車が借馬場しゃくばやの外へ出て行く一方、ソフィアたちは敷地の奥にある受付所と馬小屋のほうへ小走りで向かっていた。


 だんだんと、動物特有のにおいが香ってくる。馬小屋が近づいているのだ。


 長らく捕まえられていたユーインとアルフィの体力を考えると、あまり急かしたくなかったが、この辺りはさえぎるものがないため、できるだけ早く建物のあるところへ二人を連れて行きたかったのである。


「もう少しだ。頑張れ」


 ソフィアがユーインとアルフィの後ろを走りながら、励ましの声を掛ける。二人は、ランプを持ったアレクシスを見失わないようにと、必死に走り息切れをしていたが、ソフィアの声にそれぞれが頭を縦に振ったのが彼女の「目」には見えた。


 スビリウスに捕まっても、ここまで耐えた二人である。ソフィアは彼らに気骨きこつを感じた。


「私は受付をしてくる。ソフィアは二人の傍にいてくれ」


「分かった」


 ほんのりと明かりの灯る受付所まで来たが、ソフィアとユーインたちは入らない。 


 ソフィアは二人を「こっちだよ」という小さな声で導くと、馬小屋のちょっとした隙間に入り、身をひそめた。こうやって出入り口にソフィアがいれば、ユーインとアルフィは守ることができる。


 二人が息を整えている間に、ソフィアは馬車から持ってきた荷物を背中から下ろすと、その中から金属の棒を一本取り出した。それは先程途中までくっつけたものの残りの部品である。くっつけたほうは手に持っていたので、最後の部品を合わせた。


(よし。これでこんができた。あとは何が起きても対処できる)


 ソフィアは自身の準備が完了すると、ユーインとアルフィに少しだけ近づき「寒くはないか?」と聞いた。


 着替えをしたはいいが、服が彼らに合っているかどうかは分からない。

 しかも、セルディア王国の秋口は日が差しているときはとても暖かいが、夜は肌寒い。それにこれから馬に乗って移動するので、現時点で寒いのであれば少し考えねばならないと思っていたのである。


「大丈夫です」


「はい、寒くありません」


 ユーイン、アルフィの順番に答えた。


 ソフィアが安堵あんどし「それならいい」と答えたところで、ランプを持ったアレクシスがちょうど受付所から出て来る。

 暗闇の中だと場所が分からないだろうと思い、立ち上がって「こっちだ」と声を掛けた。


 ソフィアたちの居場所に気付いたアレクシスは、駆け足で近づく。


「早かったな」


「万一のことを考えて、事前に連絡はしておいたんだ」


「珍しく準備が良いな」


「珍しくは余計だ」


 アレクシスが少年のようにむっとした顔を向けソフィアに言い返してから、すぐに真面目な顔になって次のように尋ねた。


「それよりも、どういう組み合わせで乗る?」


「馬は何頭借りている?」


「念のため三頭確保してあるよ」


「そうか……」


 オウルス・クロウの会場でのユーインの態度を見る限り、アレクシスと彼は一緒に乗ることは出来ないだろう。


 想像するに、成人男性に対して恐怖があるのだ。

 そうなるとソフィアと一緒に乗る方が賢明だと思われたが、大丈夫であるかはまだ分からない。もし無理であれば、ユーインが一人で馬を乗りこなさなければならなくなる。


 しかし、それでも馬で動くことを決めたのは、馬車で街道を抜けるのが危険であると判断したからである。

 

 ソフィアは腹を決めると、しゃがんでユーインたちよりも低い視線になり、これからの予定について小さな声で話し始めた。


「ユーイン、アルフィ、よくお聞き。これから私たちは後ろの追手を振り払うため、街を移動すると言ったね。私たちは最初、馬車に乗ったまま街道を進むつもりだったんだ。けれど、そのままだと襲われる可能性が高く、逃げることも難しいと分かったからここにきている。つまり、馬を借りて乗馬して隣町に行くつもりなんだよ」


「ソルドーまで?」


 アルフィが呟いたので、ソフィアは口に人差し指を当てて、「静かに」という合図を送ると続けた。


「アルフィ、行き先のことは今は外では言わないようにしよう。誰が聞いているか分からないからね」


「ごめんなさい」


「いいんだ。私も言わなかったのがいけないね。それから、外では私のことは『レイグス』、彼のことは『ジェームス』と呼んでくれ。忘れたら何度でも尋ねていいからね。とにかく、ここを乗り切るまではできるだけ相手に情報を与えないようにするんだ。いいね?」


 アルフィは縦に何度も頭を振り、ユーインは「分かりました」と静かに答える。

 ソフィアは二人の様子を見て、うなずいた。


「さて、馬を乗らなくてはいけないことになっているんだけど、アルフィはジェームスと一緒に乗ってくれ。大丈夫かな?」


「はい」


 しっかりと答えたアルフィに対し、ユーインは不安そうに「あの、僕は……?」と尋ねた。


「ユーインは私と乗るか、それとも一人で乗るかだ。人と一緒というのが難しければ一人で馬に乗ってもいい。ただし、それには乗馬経験が必要だし、その上、新月という暗闇の中を道なき道を行くこともある。それをできるかどうかだ。どうする?」

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