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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第二章

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第20話 馬車を追う者

     ☆


「《《先頭》》の馬車は、どこへ向かおうとしているのか……」


 前を走る馬車に付かず離れずついている馬車の中で、イグマンという中年の小太りな男が、進行方向の窓にかかったカーテンを軽くめくり呟く。


 答えを求めたわけではなかったが、向かい側から答えが聞こえた。


「この道を進み続けるのであれば、街を出ようとしているのかもしれませんね」


 イグマンがカーテンを閉め車内にあるランプに火を灯すと、答えた若い男のほかに、二人の若い男の姿が浮かび上がる。だが、彼らは黒いフードを深く被り沈黙をしていた。


「エレインもそう思うか?」


 エレインと言われた若い男は「ええ」と短く答えたが、淡いランプの光で照らされた佳麗かれいな顔立ちには、面倒そうな表情が浮かんでいる。


「どうした? 浮かない顔をして」


 尋ねられたエレインは足を組み、自分の右側にある厚手のカーテンのかかった窓のほうを見て、つまらなそうにため息をつく。


「本当に追いかけるのかなって、思っているだけですよ」


「仕方ないだろう、上からの命令なんだから。文句を言うな」


 同乗している他の二人もエレインと同じ、イグマンの直属の部下だ。


 しかしイグマンはスビリウスのなかでも、末端のほうに位置しており、上から仕事を命令されても詳しいことは聞かず、淡々と業務をこなさねばならない。


 今回は、オブシディアンの司令塔であったジェレミア伯爵の子どもたちをおとりに使い、残党をあぶりだす作戦を実行している。


 イグマンたちは、子どもたちを景品として持っていた者たちがオブシディアンの一員だったのかそうでないのかを判断し、仮にそうであった場合は始末するように命じられているのである。


 エレインは当然であるというように「分かっていますよ」と答えたが、すぐに「ですが」と続ける。


「オブシディアンに属していた者は、ほとんど片付けたはずでしょう。イグマンさまもそうおっしゃっていたではありませんか。まさか、私に言ったことを覚えていないのですか?」


「覚えているよ」


「じゃあ、どうしてですか?」


 エレインはイグマンのほうをキッと見て、さらに言葉を重ねた。


「そもそも兄弟を景品として持っていた奴らが、残党かどうかも分からないんですよ? それを調べるために、こそこそと追跡をしないといけないなんて……。残党でないと分かっても、交渉してあの兄弟を回収しなければならないし、面倒なことばっかりじゃないですか」


「仕方がないだろう。人が足りないんだ」


「そうは言いますが、私たちは追跡班であって情報班じゃないんですよ。それなのに、起こったこと、分かったことは一つ残らず報告。失敗したら、折角高く設定されてある報酬も減らされる上に、経費は全部こっち持ちって話じゃないですか。時間がかかればかかるほど、私たちの負担が大きくなるばかりなんですよ」


「まだ、減らされると決まったわけじゃないし、経費も出さないってことでもないと思うけどな」


 イグマンが言うと、エレインがむっとする。


「イグマンさまは、上を擁護ようごするんですね。でも、考えてもみてください。今回の仕事、私たちに何の利益があるんです? イグマンさまがお引き受けになったから私も彼らも付いてきましたけど、未だにこの仕事を引き受けた理由が分かりません」


 エレインがぶすくれて、再び大きなため息をついた。それに対し、イグマンはふっと笑って肩をすくめる。


「そうは言うが、俺には拒否権なんてないんだよ」


「ですが……」


「それ以上言うな。この空間にいる者たちは信頼できるが、壁を隔てた先が安全とは限らないんだ。お前たちは俺の指示に従って、スビリウスのために動く。それだけだ。できないなら降りろ。勝手に動かれて、怪我をされても困る」


 先ほどまでの勢いがなくなり、エレインは怒られた犬のようにしょんぼりとする。


「……分かりましたよ。イグマンさまが、そうおっしゃるのでしたら、最後までやり通します」


「俺の指示には従えよ」


「分かっています」


 エレインはそう言うと、再びカーテンのほうを向いて口を閉じる。イグマンはその様子を見ながら、小さくため息をつくのだった。

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