第14話 解釈の仕方
ソフィアがちらりとアレクシスを見る。すると、「言ってくれ」というように、しっかりとうなずいた。隠しても仕方がないということだろう。
彼女はユーインたちのほうを向くと、事情を説明した。
「君たちのことを横取りしようとしている奴らさ」
「横取り……? どういうことだ?」
怪訝な声で聞き返されるが、無理もない。
「オウルス・クロウ」のルールを知らなければ、この状況は飲み込めないからだ。
「そうだな。今の状況について説明するには、私たちがいた劇場で何が行われていたことも話したほうが分かりやすいだろう。ただし、難しい内容になるだろうし、腹が立つこともあるかもしれない。それでも聞いてもらえるだろうか?」
「……分かった」
ユーインがこくりとうなずいたので、ソフィアは言葉を選びながら話し始めた。
「まず、先ほどまでいた劇場では、『オウルス・クロウ』という闇取引が開催されていた。そして君たちは、ゲームの景品として出品されていたんだ。それをこの人——」
といって、ソフィアはアレクシスを右手の親指で示す。するとユーインとアルフィが、同時に彼のほうを向いた。
「アレクシスが、事前に情報を仕入れていて、君たちを助けることを考えていたんだ。私はその助っ人として呼ばれて、ゲームに参加した。何とか勝ち抜いて、決勝までいったが、その勝ち方がおかしかったんだよ」
「何がおかしかったんだ?」
ユーインがソフィアのほうに視線を戻して尋ねる。
「相手は私と互角だった。それなのに、急に緩い手を打ってわざと負けたんだ。多分、『負けろ』という指示があったんだろうと思う」
「指示って、誰からの?」
「ゲームに参加していた人の主人だよ。ああいうのは、ゲームが強い奴を雇って参加させているのさ。だから、観客席で様子を見ている主人が、何らかのサインを出して指示を出しているんだよ」
「……でも、何でわざと負けたんだ?」
彼の問いに、アレクシスが説明をする。
「『オウルス・クロウ』にはいくつかルールがあってね。景品を手に入れたあとについても決めごとがあるんだ。その中に、『景品を手に入れた者が会場を出たあと、夜明けまでは、交渉などを用いて他の参加者が手に入れることも可能とする』とある。でも、『交渉など』というのが曲者でね。解釈次第では、『交渉しなくても夜明け前までならどんな手段を使っても手にしていい』ってことになっている。ゲームで勝てるか分からないようなときは、早めに切り上げて、夜明けまでの時間を少しでも長くしたほうがいいからね」
そこまで話すとユーインは、はっとした。
「だから、横取り……?」
「そういうこと。早い話、この馬車を襲っても構わないということになる」
「そんなっ! それなら早く逃げないといけないんじゃないか!」
ユーインは立ち上がって抗議する。傍で聞いていたアルフィはびくりと体を震わせたが、ソフィアもアレクシスも至って冷静だった。
「逃げているよ。でも、それほど焦らなくてもいい。街を走っている間は手を出してこないからね」
「何故だ」
ユーインの短い問いに、ソフィアは視線を左に逸らす。そこには厚手のカーテンがかかった窓があり、車体の動きに合わせて揺れている。
お陰で外は見えないが、この辺りは貴族が支援している慈善事業の施設や、店などが並んでいることを、彼女は知っている。
「『オウルス・クロウ』に絡んだ事件は、彼らの息がかかった警官が処理をすることになっているんだ。だが、大事になれば彼らだけでは始末が付けられなくなる。つまりここで騒ぎになれば、『オウルス・クロウ』と取引をしていない警官も捜査に混じってくるということだ。そうなれば『オウルス・クロウ』が表沙汰になり、事の収集に時間も人も金も割くことになる。そうなった場合、問題を起こした『オウルス・クロウ』の客人は金を用立てなくちゃいけないんだ。そういう決まりになっているんだよ。だから、人のいるところでは下手なことはしないのさ」
ユーインたちを安心させるために言ったことだったが、彼は違う点で突っかかった。




