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闇夜の護衛  作者: 彩霞
第六章 

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第99話 深夜の襲撃

「どうした、ユーイン?」


 アルフィ以外の者に自分の体を触れられるのを嫌がる子が、自らソフィアの手を取ったので、さすがの彼女も驚いて目を丸くする。


「あの……、その……」


 何かをうったえようとしている表情に、ソフィアは持っていたこんを後ろにいるアレクシスにやって持っていてもらうと、ユーインの手を両手でそっと包み込んだ。


「私は大丈夫。それよりも、必要なときはここから逃げなくちゃならないから、ユーインとアルフィはいつでも出られるように着替えて。いいね」


 ソフィアはユーインとアルフィを交互に見る。

 彼らはそれぞれこくりとうなずいたあとに、ユーインが心配そうに「負けませんか……?」と尋ねてきた。そのお陰で、彼の行動の意味が何となく分かった気がした。


(スビリウスはジェレミア伯爵家を襲ったと言っていたからね。もしかするとそのときに嫌なものを見ているかもしれない……)


 ソフィアには、ユーインとアルフィがスビリウスに屋敷を襲撃されたときの詳しいことは分からない。

 だが、彼女のことを気に掛けるということは、当時同じように身をていした者がやられたのかもしれないと想像する。


「ユーイン」


「はい」


 ソフィアは彼の名を呼ぶと、両手を包み込んだ手に少しだけ力を込め、自信に満ちた顔で笑った。


「私はリョダリだよ。大丈夫。負けない」


「……本当ですか?」


「うん。本当だよ」

 

 そしてもう一度だけぎゅっと握ると、彼女は手を離してこれからのことに備えるように促した。


「さ、早く準備をしな。時間がないからね」


 ソフィアはユーインとアルフィがうなずくのを確認すると、アレクシスから棍を受け取ってもう一度窓に近づいて外の様子をうかがった。先ほどあった明かりはすでになくなっており、人影もない。きっと宿屋の敷地の中に入ってきたのだろう。


「アレクシス。定位置についたら明かりを消せ。明かりがあると相手に知られる」


「分かった」


 アレクシスは、ユーイン、アルフィと共に二つのベッドの間に身を隠したとき、ソフィアの指示通り持っていたランプの火を消す。

 一方のソフィアは廊下側の扉の前に移動し、扉に顔を近づけると耳をそばだてていた。


(来たな)


 はっきりとした靴音は一人分しか聞こえないが、それにまぎれて潜めた足音が複数人分聞こえる。相手はこちらに気づかれないようにしているのだろうが、潜めた足音があるせいであやしさが確信へと変わった。


(音がしている足音は宿屋の者かもしれないな。扉を開けたとき関係ない人間が立っていたら、私が手加減すると見込んでたてにしようとしているのかもしれない)


 ソフィアは自分の予想に、にやりと笑う。


(これから突入してくる奴らの中に、追って来ていた四人組の誰か一人でも参加していたら、今度こそ宣言通り肩に弾を撃ち込んでやろう。私を甘く見たことを後悔させてやる)


 足音が扉の前で止まると、コン、コン、コンと三回叩く音が聞こえた。


 だがすぐには返答をしない。


 もう一度扉を三回叩かれたとき、ソフィアは間を置いて、「はい」と応えた。間を置いたのはベッドから出てきたようによそおい、少しでも相手を油断させるためである。


「夜分遅くに失礼いたします。宿屋の受付の者ですが、用があって参りました。こちらを開けていただけないでしょうか?」


 若い男の声である。落ち着き払ったような言い方にソフィアは眉を寄せる。


(宿屋の受付の男ではないのか?)


 扉の向こうにいるのがどちらなのかが分からないと、ソフィアの最初の攻撃も強くしたらいいのか手加減したらいいのか分からない。

 だが、あまり考えすぎていると怪しまれるので、彼女は上品な夫人のような高くてちょっと眠そうな声で答えた。


「こんな夜分に何の用ですか? 説明していただかないと開けられません」


 すると相手は「そうはいきません」と明るい声で答えた。


「何故です?」


 ソフィアが不審さをまとった声で尋ねると、扉の外からガチャリと鍵が開けられる。


(そう来るか……)


 宿屋の受付をおどしたのか、管理室から奪ったのかしたのだろう。

 こちらが内側から開けないと見込んで鍵を持ってきていたらしい。用意周到である。


「……」


 緊迫した雰囲気がただよう中、ソフィアは棍を軽く握りじっと扉の取っ手を見つめる。外側からくるりと回されるのが見え、あと数秒で開く――と思った瞬間だった。


 部屋の窓ガラスが、ガチャーンッと派手に割れたのである。

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