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04 勇者

前回のあらすじ


よわよわスキルが判明したので魔法に期待したい。

「闇魔法ですと相手の移動を遅くする〈遅延(スロウ)〉の魔法や、相手の視界を奪う〈遮視(ブラインドネス)〉の魔法。水魔法ですと地面を水で満たして周囲を泥沼にする〈泥沼(スワンプ)〉の魔法などですかね。」


「デバフと足止め特化じゃねーか!!」


全く使えないとは言えないが、大抵のゲームだとデバフ担当は序盤にちょろっと活躍してそのまま他のサポーターに食われて消えるか、もしくは本当に一切出番無く、「コイツ何処で使うの?」くらいの感じでベンチから一生出られない。少なくとも俺的にはそんなイメージ


「いや、さすがになんか有用な攻撃魔法とかも……」


「えーと、すみません…私、水属性には詳しくなくて……手のひらサイズの水の塊をぶつける〈水球(ウォーターボール)〉くらいしか……」


あ、やっぱ外れ魔法っぽいな。


「…ふむ、他であれば伝説や伝承の類いで稀に見る国を呑み込む程の津波を生じさせる〈津波(ディザスターウェーブ)〉、もしくはかの魔王が放ったとされる眉唾物の魔法、〈天地荒嵐(テンペスト)〉の辺りであろう。」


「……なんか全部本当にあるか微妙とかってタイプじゃね?」


「「……」」


……黙られるとこっちが困る。いやこれさぁ……マジでどうしようもないんじゃね?


「ははは、何を仰りますか二人とも。勇者様であればどちらも軽く習得出来てしまうでしょう。何せたった数人で魔神を消滅させた伝説を持つ英雄。魔力量が我が師を凌駕するという時点で、魔法に焦がれる万人を塵芥とする凄まじい才覚ですよ!」


突然饒舌になったガーゼスさん。何というか…俺の魔力量の話になった時点から若干視線が凄かった。…そう考えてみれば確かにそうかもな。宮廷魔術師っていうめちゃくちゃ高位の役職に就いてそうなおじいちゃんよりも、ぽっと出の俺の方が魔力量は高いってのは充分異常なんじゃね?


「…ふむ、確かにガーゼスの言は正しいな。それに、魔法とは習う物では無く創る物と、我も師より教わった。水魔法の文献が少ない事も、あまり関係は無いだろう。」


なるほど、そもそも水魔法に関する本やらが少ないから習いづらいって事か。ってことは外れでは無い?いや…習得が遅い時点で外れっちゃ外れか。


「そう言えば、闇魔法の方はどうなんです?」


その瞬間、三人の空気が変わった。

何というか…絶対にやっちゃいけないことした後の空気みたいな感じ?


「…300年前、【暗月】を名乗る者が世界に甚大な被害をもたらしおった。そのせいで一時闇魔法そのものを禁忌として排他する事態が起きたらしいのじゃが…その時にほとんどの文献が消失してしまい、今や伝承に残る程度しか無い。」


「知っておるとすれば長命な種族…やはり1000年は生きるとされる森妖精(エルフ)…或いは竜公国を統べる知恵ある王竜達(ドミネイト・ドラゴン)であれば知るやも知れぬが…。」


んー、この世界の情報技術かなり遅れてるな…魔法はあっても情報は全部紙保存だもんな…。まぁ地球の歴史でも敗戦国の文献全部燃やして歴史改ざんとかザラだしな……


…ふと、会場全体が静かになり、視線が一点に集中しているのに気付き、俺も自然とそちらを見る_


「は?」




Name『北瀬 優輝』lv1


Skill

勇者(ヒーロー)》《聖剣召喚インヘリテッド・ソード》《天恵(ブレス)



「ッ……」


その文字列は、特別な力に憧れていた厨二心を更に沸き立たせるにはあまりに適した一撃だった。

特に聖剣はヤバすぎるだろ!だって聖剣だぜ聖剣!!!

木の棒振ってぶんぶんして喜んでた少年達にとって、おもちゃ屋さんで売ってる謎に華美な装飾が成されたプラスチック製の光る剣とかは憧れだろ?

つまりそういうことだ。本物はヤバい。


と、沸き立っているのは俺以外。

さすがに俺は自分との能力の落差に絶望する。

さて、ここで能力のおさらいだ!俺のスキルは全部で3つ。


まず、自身の性別を変える《性別転換(トランス)》!特に隠し効果は無い!文字通り性別を変えるだけ!次に物質を変形させる《錬成(アルケミー)》!よく使われるのは物を砕くとき!薬を作ったりするときには最高のスキルだぞ!最後の力はとても凄い!《唯一の収納(ストレージ)》読んで字のごとく、一つだけ亜空間に何かをしまえるスキル!出し入れ自由かつ重さや大きさに制限なし!


「いや…あまりにクソすぎ。」


悠真が俺の肩をぽんぽん叩いて来たが何の慰めにもならないし、逆にムカつくからその顔やめろぉ!!




とまぁ見事なまでに玉砕した。

そんな俺が今居る場所は大書庫である。


国の重要文書が保存されて…る訳では無いが、大抵の本はここで読める。勇者の英雄譚は大抵六法全書ほど分厚く(鈍器じみて)ないので、割とすぐに読めた。しかし睡眠時間を削ってまで得た情報としてはあまりに利が無い(クソ)だ。


「唯一分かったことは聖剣の能力…」


優輝で何代目かは知らんが、歴代の勇者の能力を引き継ぐらしい。例えば優輝で10代目だとすれば優輝のも含めて10個の能力が秘められているってわけ。

その内ひとつは少なくとも英雄譚で何度か書かれてた輝く光の剣の力だ。闇を切り裂き、希望を描く光の力。


「まぁ、抽象的すぎてどんなのかは分からんが。」


読んでいた本を畳み、棚に戻す。

時間を削って得られたのは俺とは何の関係も無い勇者の情報だけ。まぁぶっちゃけ探しても闇魔法に関する本が無かったからしゃーないけども。


「もうさっさと寝よ。」


「もうよろしいんですか?」


「ん?あぁ、大丈夫。遅くまで付き合わせちゃって悪かったね。」


「いえ、これも私の仕事ですので。」


無表情で淡々と話すのは女体化し、背の低くなった俺の身体から見ても更に背の低いメイド服の少女。ただし背の低さよりも目を惹くのは右半身の殆どに巻かれた包帯だ。

更に眼帯までしているのだから、その徹底ぶりが窺える。


異世界に来て割とキャラが濃いめのやつを見てきたが、この娘がナンバーワンかも知れない。それぐらいの見た目インパクトがある。

さて、この少女についてひと言で表すとしたら、『俺の専属メイド』である。

アルカナム王国の王城には無数の客間があるから、図々しく俺たちが寝泊まりしてもなんら問題は無いらしい。

しかし問題は俺である。大浴場にも最後に入らされることからも分かる通り、俺の性別どっちなん問題が勃発した。客間は男女で階が分かれてるが、俺は何処に置いとくか?よし、とりあえず両方から離れた所に置いておこう!って意見で纏まったのだ。


俺の居ぬ間にクラスメイト達で勝手に!!!!


そんな離れた場所にいる寂しい俺の栄誉ある世話係に任命されたのがこの少女。


「んじゃ、おやすみウルナさん。」


「はい、おやすみなさいませ勇者様。」





と、快適な睡眠をした翌日…


「はぁ…あ″ーー!!もう無理だぁーー!!」


俺は外れ枠とチート持ちの力の差を思い知る事となった。

あまりにも不自然なねじ込み主人公の状況紹介&メイド紹介。

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