03 ステータス
メイドが居る生活って最高じゃね?
そして俺は実際にそれを体感している。
総じて顔面偏差値が高いこの世界ではあるが、王城付きのメイドというのはそう簡単になれる物では無く、そこそこ高いレベルの教養と容姿が求められる。
故に貴族の子女がメイドになるという事も少なくなく、現に俺に食事を届けてくれたメイドさんは伯爵家の三女だそうだ。
貴族なのに腰が低い。そして美人!いやぁ…マジで最高の生活だよね。
「みなみん~あまり動かないでよね。」
現実逃避は長く続かない。
野乃葉の声で我に返り、鏡に映る自分の姿を見る。
クラスメイトの女子に囲まれて髪をいじられまくる俺の姿を。
一言で言おう。俺の髪はクソ長い。
どれくらい長いのかって言うと、ちょっと屈むと地面に着いてズサーしそうなくらいである。
そこで適当に結ぶから紐か何かを貸してくれと野乃葉に言ったらこうなった。
気分は着せ替え人形だろうか?手入れをせずともサラッサラの銀髪は、アニメや漫画でしか見たこと無いし、ここまでの長さもアニメや漫画でしか見たこと無い。
「もう良いか?」
「ん~、まぁこれぐらいで満足したげるか。」
散々いじり回して良く言うよ、三つ編みお団子シニョンにツインテールと、散々やっといて最後は結局ポニーテールだ。ってよりもこれ以外で邪魔な髪を纏める方法が無い。ぶっちゃけ切りたいとこではあるが、女子に囲まれることを考えるとそこまで悪い気はしない……。
「んじゃ、そろそろ行こう。」
異世界召喚の王道…能力の開示である。
昨日の広間に集められた俺たちの目の前には、おじいちゃんこと宮廷魔術師ヘイベルと、その部下であるガーゼスさん、そして分厚いローブの上からでも分かる程の巨大なダブルメロンを持つこれまた魔術師っぽい地味メガネっ娘が居た。
そんなメガネっ娘も気になるが、1番に目を引くのは広間の中央にあるソレだ。
半透明の青白い巨大な球。その中心には核のような紅い宝石があり、常にくるくると回転し、謎の文字を紡ぎ続けている。
「皆様気になっておいでのようですので、先にそれについてお教え致しましょう。」
そう言いながらガーゼスさんが前に出てきて、その球に触れる_
Name『ガーゼス・クラエウラ』lv2
Skill
《魔法儀式》《魔力看破》《魔力共有》
それが球体の表面に突如として現れた文字列である。
名前にlv、スキルというように、まるでゲームのステータス画面のようだが、スキルの詳しい内容や、能力値のような物は存在しない。
「〈簡易看破術式〉を発動するための特異魔法宝具です。〈自己能力開示〉自体は誰でも行えるのですが、我々からしても皆様の能力を詳しく把握したいため、今回はこのような形を取らせていただきました。」
なるほど、専門用語が多すぎて良く分からんが、要するにアルカナム側はこっちの戦力を詳しく把握したいって事らしい。
まぁ、弱い人間を戦力に入れてもすぐ死ぬだけだしな。
「〈簡易看破術式〉にて皆様の特殊能力を把握し、ヘイベル様と私、そしてメロがそれぞれ皆様の総魔力量と魔法適性を調べさせていただきます。」
なるほど、スキルもあれば魔法もある。マジでファンタジーって感じだな!
すっごいワクワクタイムな気がしてきたぞ!!
「では、皆様お一人ずつ前に_」
「お前最初な。」「みなみん最初で。」「まずは南だろ。」
と、クラスメイトのほぼ全員が俺をぐいぐい押しながら名指ししてくる。
ふむ、これはアレだ。最初にやるの怖いからとかってやつじゃ無い。
「確かに…女体化スキル確定だからな……」
俺の女体化が何によってもたらされたのか、確かにそれは非常に気になる。
だったらもう最初に全部明かしちゃおうって感じ。
「はいはい、俺が最初にやるから押さないでくれ。」
と、俺はアーティファクトの前に立つ。
特に緊張はしてないし、なんならちょっと興奮してる。
俺が幻視するのは、『勇者』や『英雄』など、物語の主人公が持つ特別な能力。
いや、追放物みたいに一見弱そうで実は強い能力でも全然構わない!
「ッし!じゃあ行くぞ!!!」
俺は無駄に力を込め、青白い球体に触れる。
Name『小鳥遊・南』lv1
Skill
《性別転換》《錬成》《唯一の収納》
お、おう…良く分かんないけど、絶対俺の身体で悪さしてるのは《性別転換》だろ!!
何だよ《性別転換》って!そのまんま過ぎるだろ!?
これ絶ッ対、後から実は強いパターンとか無いじゃん!?
「小鳥遊様には…少なくとも戦闘向けの技能は無いようですね。」
「…え?じゃあ一縷の望みを懸けてこの《錬成》は?」
「物質の変形に関わる技能です。魔道具師を生業としている方々にはこの技能を有する場合が多いですね。」
ふむ、女体化スキルに生産系スキル、そして最後のは…まぁ多分収納系……
いや、これ俺お荷物過ぎじゃね?
「だ、大丈夫だ……ッ南、ひ……まだ魔法もあるw」
「おい、腹抱えて笑ってんじゃねぇぞ悠真ぁ!」
おめーもこうなるかも知れないからな!!覚悟しとけよ!!
さて、俺はおじいちゃんを差し置いて、ダブルメロンの持ち主、地味メガネっ娘のメロさんの元に向かう。
女子の視線よりも男子の視線が痛い気がするが_
_残念だったな!今の俺は合法女子高生!
属性過多なメガネっ娘に向かっていっても違和感はあんまねーんだよ!
「では、〈魔視〉えーと、小鳥遊様の魔法適性は……」
メロさんの瞳に赤い炎のような物が宿り、異質な視線のような物を明確に感じる…
「おー、凄いですよ!魔力量はこの国1番の魔術師であるヘイベル様を凌駕しています!それで、魔法適性に関しては……水属性と、闇属性…です。」
「いや……またなんかマイナーっぽいの来たなぁ。」
《唯一の収納》は名前の通り、1個だけ何かを出し入れ出来るスキルです。《錬成》で無理矢理全部くっつければどーにか色々入るかも知れない。