28 弱者の生存法
すんごいゴチャついてきた。
このシナリオ考えた私は凄い馬鹿だ。
「じゃあな。」
2m以上はある深い縦穴には、四足獣の骸骨に薄皮がペッタリと貼り付いたような獣が落下しており、その歪に並んだ牙を剥き出しにしてガリガリと壁を引っ掻いている。が、その姿は即座に土で埋もれて見えなくなり、後には平らに均された道が広がる。
ここまでの回数こそ覚えていないが、全部これで片付けてきた。能無し相手だと動きが単調で、簡単な罠でも嵌ってくれる。まぁ、俺の場合は罠は設置するんじゃ無くて相手の動きに合わせて即座に作る物なんだけど。でも、
「もうちょいスタイリッシュに戦いたいモンだな…」
剣を下げていても振るえない自分自身への愚痴を零しつつ、背後を見れば嫌に走りやすそうな綺麗で平らに均された道が広がっている。この先の道も同じように均されるだろうけど…そもそも自分自身どこに向かってるのか分かったもんじゃ無い。
間違いなくウルナが出したあの火柱の方には向かってるんだけど…化け物寄ってくるから大声は出して「ウルナー!!!」は出来ないし、細かい場所が解んな─
「またかよ…」
早速来たらしい。脇道の先からは枯れた四脚に相応しい軽い足音と、枯れた喉から漏れる濡れたような唸り声、そして不死特有の嫌な気配を感じる。だからこそ、これまでやってきたように…
「《錬せ─」
─ドォ!!
登場の仕方が想定外。
凄まじい勢いで飛んできたソレは、脇道の先にあった建物にぶつかり、ひしゃげて潰れた。様子はさながら交通事故…違うのは断末魔どころか血のひとつすら出ない点。
代わりとして不死特有の黒い靄のような物が身体から漏れる…
「ん…?」
そして、そんな脇道から出てきたのは筋骨隆々の大男が2人。
完全武装かつ大剣持ち二人とは随分な威圧感ではあるが…
「ん?お前も冒険者か!?がはは、獲物を奪って悪いな!!」
「違うと思いますよ兄者、ひょろひょろなのに剣持ちです。まともな武装も無いし…クラス2以上の冒険者では無いでしょう。」
「確かにそうだな!さすが弟賢いな!!」
言動だけでも既にキャラが立ってるが、その姿もかなりの物だ。多分兄?の方はピンク色のモヒカンヘア、何故か鎧もピンク色で、しかも謎に発光してる。多分弟の方は七三分けに伊達眼鏡に、鎧の上からピチピチの白衣。ツッコミどころは満載なんだが…冒険者みたいに実力勝負みたいな職業だと名前を覚えてもらう為に目立つ格好したりするのかな?
「確かに、俺はクラス1だが…、人を探しててな、急いでるんだ。」
俺の状況だけでもヤバいのにこんな奴らに構ってられねえ…
「ふむ、誰を探しているのだ?我らも手伝おう。」「兄者に言われてしまいましたが、もちろん私も手伝いましょう。」
「え?」
思った以上に話が好転して驚きだが、人は見た目じゃ無いっていうのはこの事か?いや…待てよ?
「悪いが、あんまり金は無くて─「─報酬の心配は無用だ!」
俺が言い切るよりも前に遮るようにしっかりとした太い声で一言で断じる。『大丈夫』だと。
「そも、我らの此度の仕事はこの都市の領主からの物であり、『都市の防衛』!…つまり、依頼事項は『モンスターの殲滅』では無い!」
「市民の避難、警護は最優先事項ですからね。当然です。依頼料の心配はなさらなくて結構ですよ。」
その言葉からは、確かな覚悟が表れていた。冒険者とは何なのか、俺は随分と色眼鏡で見ていたらしい。実力主義で、力こそ正義、新人いびりや、出る杭叩き……いや、マジでこれ全部そういう作品の知識だわ。
「ありがとう。」
心からの感謝の言葉を伝えるくらいしか出来ることは無い。
「急ぎだろう?さぁ早く探そうではないか!!」
「あぁ、さっき火の柱が出てたと思うんだが…その下に俺のメイドが…」
「ほぅ、火の柱!弟よ、何だったか!?」
「先ほどここから東側で上がっていたアレです。兄者が『東の諸国で行われる火の祭り』だと言っていたので気にしてませんでしたけど…火災の恐れがあるという事で、水魔法が使える魔法使いが何人か向かいました。なるほど、あなたへの合図か何かだったのですね。」
「ならば既に保護されている可能性も高いか!」
「そうですね、…少年、先ほど火柱が上がった場所はここからそう遠くありません。あちらを目指せば5分もせずに着くでしょう。」
さすがに行動が早いな…敵だと思われないだけ良かった、ウルナの能力について詳しくは無いが…あの力を使ったあとだとそんなに動けないハズ…
「ありがとう、一応行ってみる。悪いけど、身体に包帯を巻いてる灰色の髪をした小さい女の子を見掛けたら先に逃げるように伝えておいてくれ!」
「おい、我らも……ふむ、行ってしまったか!」
南の背中を見送り、少しして弟が思い出したように兄へと話を切り出した。
「兄者…その容姿の少女であれば先ほど近くで見掛けた気がするのですが……。」
「本当か!少年よ待ってくれ!!」
……残念なことにその頃には既に南は走り出しているどころか結構遠くまで行ってしまっている。声は聞こえてないし、今更走っても間に合う距離では無い…。それに─
「むぅ…弟よ、我が大声で化け物どもが寄ってきてしまったようだ…」
「きっと兄者の美しい声に寄せられて来てしまったのでしょう。化け物にとっては罠だったようですが…。」
荒々しい大剣を構え、凶悪な笑みを作る。
たった二人で数多の壁を超えてきたクラス6冒険者パーティー『血盃の兄弟』【桃輝の鎧】タウロと、【白衣の鎧】ハカセ…2人は、その巨大な大剣を背中より引き抜き、互いに背を預ける。
「さて…征くぞッ!!」「はい!!」
敵へと剣を向け、脚を踏み出し、軽い化け物を吹き飛ばす。
男らしい雄叫びと共に放たれる剣の一閃は、骨を砕かれ、頭を切り落とされようとも動き続ける程の偽りの生命力を持ってしてもなかなかに耐えきれる物では無い。
枯れた咽から漏れる断末魔を聞き─
「ぬ…?」
タウロの剣が一瞬鈍り、ハカセはそれに合わせて兄のフォローに回る。兄弟として、兄の動きに対応するなど造作も無い事だ。しかし、生まれ持った能力だけは、模倣も真似も出来はしない。
その点、兄であるタウロは感覚に優れていた。ハカセが気づかない程の小さな音であっても、それがどの程度の距離からどのように発せられた音なのかも気付く。故に─
「弟よ!!飛べッ!!!」
タウロの怒声と共に、兄弟で飛び退る…
─ッ!!!
爆発音と共に起きた地面の隆起、それは凄まじい速度で都市の中を駆け巡る、それに伴い起きるのは、爆破によって裂した建物や道の残骸…
大地を巻き上げ、天へと昇る風は瓦礫を集め、更に破壊力を増す…
城壁の外で砂を巻き上げていただけの竜巻では無い。
何tあるかも判らない塊が超高速で回転する、完全なる物理的な一撃、災害であり、天災であり、死を撒く風。
総ては、都市崩壊というただ一つの目的の下に。
「はぁ…ッ……」
身体が熱く、動きが重い。
普通の魔法であれば、自らの熱で焼かれるなどあり得ない事だが、彼女の場合はソレとは違う。
右腕の包帯は既に燃え尽き、爛れたその身が晒されている。
身体に巻いている包帯も熱を帯び始めており、今にも黒く焼け焦げてもおかしくは無いだろう…。
「ッ…ふぅ……落ち着け…私、ここで倒れたらッ…死…んじゃう…よ、」
自分自身に言い聞かせ、ほとんど動かない脚を必死に動かして前に進む。
─グルル…
低い唸り声…何度も聞いた声ではあるが、それの正体が何であるかは判らない…。
─ガァ!!
飛びかかってきたソレを瞳に収める─
「ッ!」
─瞬間、身体に走った抉れるような痛みと共に…ソレは火に包まれるまでもなく簡単に黒く、ボロボロに砕け、炭となって消え去る。朦朧とした意識の中で、少女は近づく者、動く物に反応してほとんど無意識の下でその力を使う。万物を熱によって炭化させ、完全に消し去るソレは、少女の力では無い。
「なん、で…こうなる…んですか……、」
もともと幸福な人生を歩んできたとは思わないが、ここ最近はあまりにも不運が続いている。城でも死にかけて、今、ここでも死にかけている…、
死んでいないだけ幸運なのか、それとも…
「私、には見えない…あなた達…です、か……?」
生きている、というよりも生かされているに近いかも知れない。少女にも知覚出来ない、何者かに護られている…これが母の守護霊であれば美談に、いや…売れない怪談物の方が近いだろう…母を焼き殺した娘に憑く、皮肉のような力など。
「熱、い…、なぁ……」
どこかで、大きな音がする。それも、何度も…何度も…
影が射す─
足下だけでは無いのだから、自身の影で無い事は明らかだ。
影は段々と大きくなっていく…なんだろうか?でも、上を向く気力はもう……無い。たぶん、大丈夫だろう…次は、意識なんて途切れて…次に起きたら……母に……いや…、
あの、お世話なんて必要無いのに…何故か放っておけないあの人に…まだ、文句のひとつも言っていない。
死ねない理由が…出来てしまった─
熱……い…
天災、その言葉に相応しい状況だ。
大地を巻き上げ、周囲を破壊する竜巻、それによって巨大な岩塊や建造物の残骸が飛来する。その中で…
ガラス玉のような瞳は、もう何も映さない。
潰れたのは脚なのか、腹なのか、赤が染みた地面、歪に歪んだ腕から飛び出した骨、まだ生気のある肌の色だが、この辺りでは珍しい黒い髪が血と共に肌にベッタリと貼り付き、割れた頭から流れる赤黒い色にゆっくりと染まっていく…
その手のひらに剣ダコは無く、身体つきからしてもとても剣を扱う者とは思えない。ろくに生き残るための方策も持たず、このような危険地帯に居るのだ、まともな死に方をするとは彼自身も思っていなかっただろう…
まだ年若い少年だ。
生前はさぞ可愛がられていただろう。少年に家族は居たのだろうか?それとも、家族を探す為にここまで来たのだろうか?
……意識が遠のいていく。
神に仕える神官である私であっても、完全に半身を潰されれば、治癒の術など無いに等しい。少しでも、人を救えたのか、少しでも…少しでも…少しでも……私は、神に仕え、多くの命を…魂を救えたのだろうか?いや─
「…あ、ぁ……我らが…神よ、『広き翼』よ……、」
ふいに、仰いだ青い、青い天に、四枚の純白の翼を広げたソレが横切った─
「我が祈りに、応え…て下さった、のですね………、」
神よ…我らが『広き翼』よ…どうか、どうか…人々に安寧を。あまりにか弱く、脆い我らに救いを…
「─〈天輪の輝針〉」
今世の時代では、誰も知らない魔法が放たれる─
天に浮かぶように現れた白き光輪、その中心より放たれる光の速度の細い線─
─ジ
高温によって何かが蒸発したような音、小さな音であり、音がしたのも一瞬だ。故に、何が起きたかを正確に理解出来ていた者は少ないだろう…
しかし…竜の絶叫が都市に響いた。
今の状況
ドラゴン襲来→城壁崩壊→配下のアンデッド襲撃→南がアンデッド地面に埋めながら練り歩く奇行を取る→ドラゴンの竜巻攻撃→天使登場&ドラゴンに攻撃(イマココ
作品全体の文字数10万行きました。




