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社会的に破滅しても私たち三人のうち誰かを選んでもらえますか?  作者: 月白由紀人
第一章 俺、クロぼうと契約する
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第九話 俺、沙耶香にアタックする⑤

 その日の夕食時。


 俺は彩音ちゃんとクロぼうと食卓を囲んでいるのだが、心ここにあらずといった塩梅で、まともに食事をしている感じはしなかった。


「清ちゃん。今日は清ちゃんの大好きな和風きのこハンバーグなんだけれど……口に合わなかったかしら?」


 彩音ちゃんが気遣って、言葉をかけてくれた。


「いや、そうじゃなくて……」


 俺は視線を泳がせる。

 彩音ちゃんに秘密にするのもなんだかなーと思ったので、正直に伝えてみた。


「俺、明日、告白されるかも……しれない」


「告白……かしら……?」


「うん。生まれて初めて……彼女が出来るかもしれない」


 彩音ちゃんが「それはおめでとう」と、ニッコリと微笑んでくれた。


「清ちゃんは素敵な子なので、きっといい娘ができると私は思ってたわ。私の見立て通りね」


「そう……かな……」


 俺は照れながら頭に手を当てる。


「でも、少しだけ寂しいかもしれないわ。清ちゃんは、私だけの清ちゃんでいてほしいという我儘な気持ちも私の心のどこかにはあるの。清ちゃんに恋人が出来なければ、私が立候補する所だったわ」


 ふふっと優しく、でも少しだけ悪戯っぽく微笑する彩音ちゃん。


「クロぼう。お前、ただのネコ風情なのに役に立つもんだな。お前の『看破』がなければ俺は高城さんにアタックなんて心の隅にもなかったぞ」


 クロぼうがまん丸目玉のまま邪気のない顔をこちらに向ける。


「もちろん。僕が君の所にきた理由だからね」


 ふふんと口を丸めてから、再び食事に戻る。


 俺もそれ以上クロぼうには構わず、彩音ちゃんとのアットホームな食事に戻るのであった。



 ◇◇◇◇◇◇



 夜。

 パジャマを着てベッド上で仰向けになっても、逸る心を抑えきれない。


 高城紗耶香さん。

 学園の二大アイドルの内の一人で、長い黒髪ロングが素敵な優しい美少女。

 なぜか自分は独りだという、孤独を抱えていた不思議な女の子。


 その高城さんを――彼女――にできるのか。


 思うと、嬉しさと興奮が湧きおこってくるのを止められない。


 彼女が出来たら……まずは会話して一緒にお茶して、それからデートだ。

 デートを重ねたら、そうしたら、もしかして男女の、その、エロいことをしてしまうのだろうか? とまで妄想が膨らんでしまう。


 俺も、彼女いない歴=年齢の、顔付き悪いただの凡人なのだが、年頃の男子なので彼女や、その彼女とする男女の関係の事を夢見てしまうのはどうしようもない。


 ――と、ふと思い立つ。


 明日高城さんが告白してくれたら、高城さんと『キス契約』するってことじゃないのか?

 ということは、明日、高城さんと『キス』するということなのか!


 そこまで思い立ってから、うわーと衝動で脳内がめちゃくちゃになる。


 明日高城さんとキス、キス、キス、キス……


 ベッドの上でのたうち回る。


 苦しくてではなくて、嬉しさと興奮で、もみくちゃになる。


 ちょっと今晩は眠れそうにない。


 期待と、そして少しの不安で悶々としながら、早く明日の放課後になれと右往左往する俺なのであった。

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