婚約破棄を言い渡されさらに断罪をされそうです。やれるものならやって頂きます!(寸劇)
煌びやかな大ホール、オーケストラの生演奏、それに見合う色鮮やかなドレスを見に纏った貴婦人や令嬢。
王宮主催の舞踊会ともあって華やかな会であった。
広いホールの真ん中でテノールの声の持ち主が、その場に相応しくない事を口走る。
「リチャード・ミランダ侯爵令嬢、私との婚約解消してもらおう!」
ミランダ令嬢は現在の宰相、リチャード・ミハエル公爵の娘である。今年で17歳、社交デビューして1年である。美しい黒髪にバイオレットの瞳、背が高くスタイルも素晴らしい。社交会では美の女神とも言われている。特技はハープ、腕前はコンサートを開くぐらいである。
勿論、勉学も男顔負けである。
国王陛下に見染められ王太子殿下の婚約されそうだったので第二王子の妃ならと宰相の父に頼んで国王を丸め込んで第二王子の婚約者になった。
理由は王太子妃と言う地位がとても面倒と言う事。まぁ、第ニ王子か第三王子の妃なら公務も少なく楽だろう。王太子殿下でなければどちらでも良いとミランダは軽くみていた。そんなわけで第二王子は20歳で第三王子は14歳、歳の釣り合いを考えて第二王子の婚約者となった。
どうせなら正妃でなく側室でも良かったと思っていた。サッサとどこか適当な貴族と婚約させてくれてたら面倒な王族に嫁がなくても良かったのにと父を恨んだ事もあった。
(どうせ、貴族は政略結婚。少しでも面倒でない方がいい。)
当の婚約者のアルファ王子は容姿は少し細身の金髪の青い瞳、顔はそれなりに麗しいがミランダの好みではなく性格はよくいる貴族体質の我儘王子様である。
ナルシスト性質でよく自分は惚れられてると勘違いする。実際は腐っても王子それなりにオモテになる。カリスマ性が全くなし、学力も頑張って上の中。ミランダが評価したアルファ王子である。
そして今、ミランダの隣に立っているのが兄のラルクである。ラルクが心配そうに、ミランダに声をかける。
「あれは何の冗談だ。リチャード侯爵家を馬鹿にしているのか?大丈夫かミランダ、お前がわざわざ出る幕でもないだろう。私が代わりに相手にしよう」
ミランダの兄のラルクはミランダと同じバイオレットの瞳に漆黒の髪、今年で20歳。近衛騎士でもあって身体も背が高い。大概の男性はヒールを履いたミランダと並ぶと背の高さがあまり変わらないので貧相に見えるが背の高いラルクと並ぶと釣り合いの取れた美男美少女。兄、妹でなければお似合い二人である。二人が並ぶと皆が溜息を漏らす。
「いえ、私一人で大丈夫ですわ。ラルクお兄様、あの能無しアルファ王子如きに好き勝手させませんわ。能無しアルファ王子にラルクお兄様の手を煩わせる必要ありませんわ。私が綺麗に婚約破棄させてみましょう。」
「ミランダ、婚約破棄の要求を呑むのか?」
「能無しアルファ王子の要求通り事が運ぶのは腹ただしいですがそろそろ限界ですわ。能無しアルファ王子との結婚の先が見えてて嫌気がさしてたの。好都合ですわ。では、いってまいりますわ」
「ああ、能無しアルファ王子にお灸を与えてあげなさい。リチャード侯爵家を馬鹿にするなと。では健闘を祈る」
ミランダは、早速とホールの踊り場に進んでいく。彼女は髪をアップにし透き通る肌が映える銀白のドレスを身に纏いドレスに散りばめられた輝石が光に反射して煌めいている。
ミランダの優雅さに周りの紳士、婦人や令嬢、貴族の青年達も見惚れて溜息が溢れている。
「やっと、出て来たな。ミランダ!お前のその涼しい顔には前々から嫌気かさしていた!しかし、それも今日で終わりだ!私との婚約破棄を言い渡す」
「はい、仰せの通りに殿下。ですが婚約の件に関しては私の一存だけでは通りませんので国王陛下と我が父上に申して下さいませ。私は殿下の思うまま従わせて頂きます。ご用件がそれだけなら失礼させて頂きます」
カーテシーで一礼する。その姿も圧巻で周りのあちこちから溜息が出る。何故、こんなにも美しい婚約者を捨てるのか疑問の声もあちこちから出る。
壇上の国王の席では国王は少し青い顔をしてミランダとアルファ王子を交互に見ており、ミランダの父ミハエル公爵こと、宰相は今でも人を殺しそうなまるで魔王みたいな顔をして王子を睨んでいた。
あっさり了承して立ち去ろうとするミランダをアルファ王子が慌ててミランダを引き止める。
「まって、まだ話はある!ミランダ、今日は貴様の悪事を大勢の人の前で暴いてやる!」
(私、そんな、暴かれ無ければいけない悪事なんてあったかしら)
一瞬、ミランダは思いついた。
(あ、あれかしらアルファ王子の呼び出しを仮病を使って行かなかった事かしら?それとも王家で飼われてるワンちゃんが可愛らしいので国王陛下に強請って連れて来てしまった事かしら?ワンちゃんは返せないわ。返せといわれたらどうしましょう?きっと違うわ。そうよ、あれよ!アレク兄様にアルファ王子の出来損ない振り愚痴ってた事かしら)
「やはり、心当たりがあるみたいだな。そうだ、ここにいるダグラス・シャルロット男爵令嬢に故意に危害を与えていた件だ。」
アルファ王子は後ろから出てきたシャルロット令嬢と思われる令嬢に軽く微笑む。
その令嬢は、愛くるしい容姿でふわふわの金髪の長い髪を垂らして、ピンクのレースいっぱいのドレスを着ているが、本日は、国王主宰の催し。この国では国王主宰の夜会、舞踊会、宴では男性は礼服、女性は相応しいシックなドレスか渋めの色のドレスを着用する人が多い。パステルカラーの物は着てはいけないまではいかないが避けるべき装いである。ましてや髪はまとめるのが常識である。
確かに令嬢は可愛いらしく良く似合う格好だがこの場に相応しいくない格好である。
ミランダはシャルロット令嬢の事を直ぐに思い出せなかったがよくよく思い出してみると王宮で見かけた覚えがある。
「何度か王宮でお見かけしましたが、直接お話をした覚えがありませんわ」
ふふふと不敵にアルファ王子は笑い、シャルロット令嬢を抱き寄せる。シャルロット令嬢はアルファ王子に見つめられ陶酔しきった顔をしている。
(何をしにきたのかしら。もはや二人の世界ね。まるで馬鹿ップルだわ)
陶酔し切っていたアルファ王子がミランダの存在を思い出した。
「それこそがお前のやり方だ。私は騙されないぞ!自分の手は汚さず他の者を使って悪事をする汚い奴だ。ミランダ、覚えているか?お前とシャルロット令嬢はデビュタントの日に会っている。その時も侍女を使ってシャルロット令嬢を咎めたな。」
(デビュタント?あー、思い出したわ。もかしてあの娘あの時の子?確かどこかの令嬢が婚約者のある方に、令嬢の方から話しかけた事を咎めた事かしら?侍女に令嬢に伝えるよういいましたけど……)
「心当たりがあるみたいだな」
アルファ王子は勝ち誇った顔でミランダを見ている。余程、ミランダを陥れたいのであろう。
「確かに、咎めましたがこの場で説明して良いのでしょうか?もしかして彼女の名誉に傷つくかもしれませんが‥‥宜しいでしょか?」
「お前のその嘘くさい話、誰が信用すると思っている?」
「では、遠慮なくお答えしますわ。ダグラス・シャルロット様、当時デビュタントの日に貴方はバロン伯爵子息バロン・シュナイダー様にお声をかけたと言う事で間違いありませんね」
シャルロット令嬢は、アルファ王子の腕にしがみついて首を縦に振り小さな声でいいます。
「はい、間違いありません。」
その瞬間、ミランダ達を興味本位で見守っていた貴族の方々からヒソヒソと話す声がする。
「ここにいらっしゃる皆さんもご存知かと思われますが当時バロン・シュナイダー様は既に婚約式も済ませて婚姻も間近。その事は同時も社交界で知らない人はいなかったはずです。ご存知かと思いますが婚約式を終えてから婚姻までの間は、血族以外の未婚の異性が声をかける事は御法度でございます。それを私より下位の男爵に直接注意すれば事が大事になります。ましては私の父は宰相、シャルロット様のお父上のダグラス男爵にもお咎めがあるかもしれません。殿下はこの事はご存知なのでしょうか?」
ミランダは国王と父の方に視線を向けた。
宰相はこの茶番を一刻も早く終わらせろと顔に書いてある。この舞台に上がる気は全くない態度だ。一方の国王は頭を抱えてぶつぶつ何かを唱えている。
アルファ王子は、苦虫を噛んだ顔をしているがこれで終わらせるつもりはないようだ。
「それだけではない。シャルロット令嬢がお前なんかと親睦を深めようと話しかけても無視をし、王宮に来る事も咎めたな。なぜそこまでしてこの愛くるしいシャルロット令嬢を嫌う!!お前は醜い嫉妬心でシャルロットを傷つけた!!」
突っ込みどころが満載過ぎてミランダは面倒になってきた。もう少しまともに攻撃をして頂ければもっと面白い舞台になるのに……。欠伸が出そう……と、アルファ王子の話で欠伸が出そうなのを堪えるミランダ。返事をしなければいけないのかしら?と考えていると……。
「ミランダ何も言えないようだな。お前は挙げ句の果てにはシャルロット令嬢を階段から侍女を使い突き落とした!これは、確証を得ている!終わったなミランダ。」
ミランダは、呆れ果ててしまった。どこまでこの王子は愚かなのだろう。黙って国王陛下の言う通りにしていれば将来は安泰だと言うのに。
(何処から説明すればいいのかしら。面倒な方だわ)
ミランダが父、宰相と国王の姿方に目線を移すと既に二人はそこにいない。話すら聞くに忍びないのだろう。ミランダはため息を吐き呼吸を整えた。
「お言葉ですが、アルファ王子殿下。貴族たる者、階位が下の者から話しかけられて返事をする事はありません。私も腐っても王族の婚約者。私が一つでも誤った行いをすれば王族の恥となってしまいます。アルファ王子殿下に咎められる事なのでしょうか?シャルロット様を突き落とした侍女は一体どの者でしょうか? 確証はあると言われましたが、もし本当に私の侍女が犯人ならば主人である私も罰を受けるつもりです。」
アルファ王子は不敵に笑う。更にシャルロット令嬢を強く抱き寄せる。
「確証とは、このシャルロット令嬢が落とされた瞬間しかと犯人の見たことだ。間違いなくミランダの侍女だったと。名前は分からないが顔を見たら分かると言っている!彼女が動かぬ証拠だ!」
確証が令嬢自身の証言とは……。もはや突っ込むのも忍びない。
「では、アルファ王子はその場にいなかったのですね。そしてシャルロット令嬢の他に誰も見ていない。では、質問を変えます。それはいつの出来事なんでしょう?」
既に、ホール内の観衆には笑いを堪える方が居り、婦人方は軽蔑の眼差しを注ぎ、令嬢の方々は呆れ果てている。子息の方々は馬鹿にしたようにニヤニヤとしこの茶番劇の終盤を興味本位で見守っています。
「シャルロット令嬢の話が信じられないのか?」
「私の侍女の名誉を守りたいのです。」
「仕方がない。事件が起こったのは昨夜だ。場所はこの王宮の蘭の宮殿の階段だ。私が駆けつけて倒れているところを助けた。間違いはない。」
昨夜、それにしてはシャルロット令嬢は元気そうね。怪我一つしてなさそうだけど。あーもう突っ込まない面倒だわ。ミランダは無駄な話は止めた。
「では何故、私の侍女だと分かったのでしょう?」
「それは、お前がいつも連れている侍女だから顔を覚えていたのだな?」
「そうです。殿下、いつも連れていらっしゃる茶色の髪のヘーゼル色の瞳の方です。」
「いつも連れていた侍女そして茶色の髪でヘーゼル色の瞳は専属の侍女はセイラですわね。でしたら物理的に無理がありますわ。セイラは一週間程前からお産で実家に帰っていますの。今、私の専属の侍女はカレンという者、ヘーゼル色に茶色の目をした者が突き落とした犯人なら、カレンはブロンドにブルーの瞳、シャルロット様が見た侍女とは程遠いですわね。それに王宮に夜に侍女だけで来る事は不可能ですわ。私ですら遠慮してますのにシャルロット様は夜も王宮へお越しなの?」
アルファ王子が自分が大勢の前で墓穴を掘った事によーやく気付き顔を真っ赤にして言った。
「シャルロット令嬢は、私が晩餐に呼んだ。食事をしてその後、あーそうだ。気分が悪いからと部屋で休んでいただけだ!やましい事なんて何もない。」
「まぁ、お熱い事」
「アルファ、いい加減しなさい。これ以上は意味がない。王族の恥となる事を今すぐに止めるんだ!」
突然、違うテノールの美声の声が響き渡る。現れたのは、第一王位継承権を持つ人デューク王子である。
「リチャード・ミランダ侯爵令嬢、弟が大変失礼な事をし申し訳ない。」
片膝をつきミランダの手を取り手の甲に口づけをする。
王子はブロンドの髪に瞳も金の瞳、麗しい容姿である。騎士団に入団しており背も高く身体も鍛えているのでミランダと並んでも引けを劣らない美丈夫である。
「あー、貴方は今日もかわりなく美しい夜の女神みたいだ。会う度に美しさが増す。どこまで私の心を魅了すれば気が済むのでしょか」
(厄介な奴が来たわ)
ミランダは、デューク王子が昔から苦手である。事ある事に現れて追いかけ回される。デビュタントではエスコートは丁重にお断りしたものの真っ先にダンスを申し込んできて、それからは夜会の度に追いかけ回されている。婚約後も、弟との事でと口実で何度も家を訪問するし、挙げ句の果てには王宮まで呼び出され、用があるかと思えば大概がお茶のお相手だった。
ディーク王子はミランダの手を握ったまま離さない。
「殿下?」
デューク王子はそのまま熱い視線でミランダをみあげる。
「先程、国王陛下によりアルファとの婚約白紙撤回が正式に決まった。貴方はもう自由だ。もうこれで誰にも邪魔されない。リチャード・ミランダ侯爵令嬢、アクレシス・ディ・ディークの正妃となってくれないだろうか?」
「殿下、それは、ぜっ……」
と、ミランダは言葉を飲み込んだ。絶対に嫌と言いたかったが、周りの目がそれを許さなかった。この能無しアルファ王子を押し除けて助け舟を出したディーク王子を振る事が出来るのだろうか?もし今断れば非難の嵐だろう。此処は、一先ず告白をお受けして後から父に頼んで撤回してもらおう。どうせ正式な婚約では無いのだからなんとでもなるだろう。
「喜んで、お受けいたします。」
会場から歓喜の歓声が上がった。拍手も喝采である。ミランダは断らなくて良かった。今頃は断ったら非難轟々、社交会から追放は免れなかったわ。
デューク王子は私を強く抱きしめる。く、苦しいとミランダはデューク王子の胸でもがくがびくともしない。
「ミランダ!なんて私は幸せ者なのだろう。もう二度と離さない。そうもう一生離さないから覚悟して。父上!聞きましたか?これで正式な婚約を認めて下さいますよね。」
ミランダは背筋に悪寒が走った。嵌められた。そう、席にいないはず陛下と宰相がいたのだ。国王が会場にいる観衆に告げる。
「しかと見届けたぞ。リチャード・ミランダ侯爵令嬢を我が息子アクレシス・ディ・ディークの婚約を正式に認める!婚姻後は、正妃として認めよう!後日、改めて正式に発表しよう!」
ミランダは思いっきりディーク王子を睨むがディーク王子は愛おしそうに微笑むだけである。そうどんなに睨んでも時は既に遅く無駄な抵抗である。
ディーク王子は忘れられてたアルファ王子に目を向けます。
「アルファ、今回はお前がミランダを譲ってくれたから許してあげるけど次はないからね。父上も王位継承権の剥奪でゆるしてくれるって。父上も寛大だよね。」
「しかし、兄上、ミランダはシャルロットに!!」
「アルファ、ミランダがシャルロットに何をしたの? 何もしてないよね。そういうの被害妄想って言うんだよ。僕は婚約の撤回は勧めたけどミランダを陥れろなんて言ってないからね。そのおかげでお陰で僕の思惑は随分と先に進めたから許してあげるけど。次にミランダに何かしたら、今度は僕の事、兄と呼べなくなるから気をつけて。あ、そうそうアルファにはシャルロット令嬢がとてもお似合いだよ。ミランダはアルファには勿体ない。婚約破棄は感謝するよ。ミランダは僕に返してもらうからね。」
アルファ王子は顔が真っ青になっていた。
「さて、ミランダ僕らはこの大舞台から退出しよう。ここにいる皆様、今宵は私とミランダが婚約できた事どうぞお祝い下さい!私達は退出しますがこの後も楽しんでいってください!では、失礼」
ミランダの手を引き、ディーク王子は退出した。
「殿下、離して下さい。もう用は済んだので帰らせて頂きます。」
完全に無視をされ、そのまま客室用だと思われる部屋に連れ込まれてしまいました。
「殿下、先程は大勢の手前の婚約をお受けいたしましたがあの場でなければ本当ならお断りするつもりでした。殿下のお力で婚約の撤回は出来ませんか?」
「無理、却下。」
「そんな‥‥。」
「あの時僕はわざとあの場プロポーズしたの。ミランダはいい子だからあんな大勢の前で僕に恥をかかせない事はわかっていたよ。アルファのとんでもない行動はチャンスだったよ。この機会を逃すものかと思ってね。急いでアルファとミランダの婚約白紙撤回と僕との婚約も父上に頼んだんだ。宰相もいままでどんなにミランダを妃にと頼んでも首を縦に振らなかったけど、この騒ぎのお陰で二つ返事だったんだよ。なんて運がいいんだろう。」
「そんな‥‥お父様まで裏切ってたなんて。」
「僕はね。ミランダは知らないと思うけどね。ミランダがまだ赤ちゃんの頃、ラルクとよく遊んでいてね。侯爵家に行った時にゆりかごに入ったまだ赤ちゃんだったミランダを一目見て王妃にするって決めてたんだ。あー、あの時のミランダ、赤ちゃんの時から美しかった。」
ミランダは背筋がゾクゾクし恐怖しか感じなかった。
「なのに酷いなぁ。王太子妃になりたくないからってアルファと婚約するなんて。」
「まさか、全部、殿下が仕組んだことなんですか?」
「全部ではないよ。アルファとシャルロット令嬢の出会いには噛んでたよ。アルファはミランダみたい賢い子より頭が弱い子の方が好みなんだ。私には到底理解出来ないけどね。シャルロット令嬢は始めは僕に付き纏ってきたけどアルファに紹介したらすんなり乗り換えくれた。その後は婚約破棄をしたらと助言しただけ。」
「それって、ほぼ全部ですよね‥‥」
「私達の婚姻はもう確定事項だからね。ミランダは僕の事が嫌いなの?王太子妃になるのがいやなの?」
「殿下の事は嫌いと言うか苦手です、王太子妃は絶対に嫌です。」
「なんで王太子妃は嫌なの?」
「面倒くさいから!もっと気ままに生きたいんです。」
「ダメだよそんなの理由にならない。王太子妃はミランダみたいに賢い人じゃないと務まらないよ。僕の事は嫌いじゃないんだね。苦手ならもっと一緒にいて慣れて。嫌って言われても手放す気はないからね。他の男に取られるのは絶対嫌だからね。諦めて。」
ミランダは逃げられないと悟った。まぁ、能無しアルファ王子と結婚するよりはマシかもしれないと諦める事にした。
「諦める事に最善を尽くします‥‥」
婚約破棄騒動は幕を閉じた。この後、二人はもちろんミランダが諦める事で平和な幸せ過ごした。ミランダも諦めて正解だったかもと思うようになるぐらいデュークはミランダを愛した。デュークの策略に乗せられたミランダはこれもいいかも。と思ったそうだ。
完