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聖龍伝説 第二章 ~幻龍戦役~  作者: 零レンジ
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第1章ー1 闇夜

青山通り。


朝のこの時間は通学する学生、仕事に向かう会社員達で溢れている。


3台のマウンテンバイクが広い車道を颯爽と走り抜いていた。


砂書さかき勇壱は心地よい風をかんじていた。

表参道手前にある青山聖林学園に今日から転入する高校2年の少年だ。

ユウイチはふと隣を見た。

肩を並べてマウンテンバイクを走らせている大柄の少年、ケニー・砂書・ギルバート。

その隣には細身の鳴神京次(なるがみきょうじ)が同じくマウンテンバイクに乗り風をきっていた。


「ケン、キョウジ、もうちょいで学校に着くからスピード落とすよ」

ユウイチ、いやケニーの周りの人間は彼の事はケンと呼ぶ。

子供の時からの仲で兄弟も同然だ。

ケン、キョウジはそう言われるとブレーキを握りスピードを落とした。

ユウイチもスピードを同じように落とそうとした。

ふと前を見ると歩いている女子生徒達がいた。

「ユウイチ、前、前!」

キョウジが叫ぶと同時にユウイチは自転車ごと女子生徒達に突っ込んだ。

「やった~」

ケンとキョウジは掌で目を押さえ呟いた。


「いった~い」

彼女はいきなりの衝撃に驚いていた。

友人と他愛のない話をしている最中だった。

痛みは感じないが目の前はチカチカした。

「大丈夫ですか!?」

衝撃の主のようだ。

髪の毛は金髪に近い茶色に染められていて身長はさほどでもないが肩幅と体の厚みがあった。

そんな見た目だが顔は相当優しい顔をしていた。

「ユウイチ、大丈夫か?」

声をかけてきた大柄の少年によれば、ぶつかってきたこの少年はユウイチというらしい。

この大柄の少年はハーフだろうか?青みがかかった瞳が印象に残るがユウイチよりも厚みのある体が更に印象を残した。

「彼女、大丈夫?」

こちらの少年は先の2人とは毛色が違うように見える。

見た目の細さは長髪と合わせると女装すれば女性と見間違えそうだ。

が、その言葉は彼女に向けられたものではなかった。

連れの友人をナンパしていたのだ。

(朝っぱらから!?)

彼女は立ちあがりながら体をはたくと

「だ、大丈夫です。で、貴方、何してるのよ!?」

彼女はそう言うと友人と細身の少年の間に割って入った。

「キョウジ君~朝っぱらから、おさかんだねえ~」

大柄の少年が細身の少年、キョウジを茶化した。

「ケン君、僕は女の子がお怪我してないか確かめていただけだよ?」

キョウジはケンと呼んだ少年に対して茶化し返していた。

「おめえら、漫才やってねえで行くぞ」

ユウイチは2人のやり取りに釘を刺すと自転車に跨がった。

「ちょっと、詫びぐらいいれなさいよ」

「謝ろうとしたらそっちがそいつらの漫才に突っ込み入れてたんじゃねえか」

「どこのクラスよ?後で行くわよ」

「えっと確か2組だったかな?ってやべえ、転入書類の提出しないといけねえんだった。2人とも行くぞ」

ユウイチ達は疾風の如く走り去っていった。

(うちのクラス?転入生?)

彼女はユウイチ達を見送るように佇んだ。


ユウイチ達は教室の前に立っていた。

中ではホームルームが始まっていた。

この時期にしては珍しい転校生という事でクラスの中がざわついているのがわかる。

中から声がかかった。

三人は中に入り黒板前に並んだ。

教師に自己紹介をするように言われた。

「砂書勇壱です」

「ケニー・砂書・ギルバートです」

「鳴神京次です、よろしくお願いします」

教室の中が一層ざわついた。

「よし、空いてる席に三人とも座っとけ」

ユウイチ達は言われた通りに空いてる席に座り鞄を置いた。

「あれ?あなた…」

ユウイチの隣の女子が声をかけてきた。

「あっさっきの」

先程、自転車でひっかけた女子だった。

「あっさっきはごめん。急いでいたから」

「ケガしてないし気にしなくていいよ。私は神宮寺加奈、よろしく」

「改めて、砂書勇壱だ。よろしく」



放課後。

ユウイチは他の2人を先に帰して転校手続きを済ませた。

帰りに明治通りのスーパーに寄って夕食の食材を買うつもりだった。


砂書勇壱。

16歳。

理由あって父親と母親は別れている。

ユウイチは父親についていく事にした。

彼は幼少の時より父親から空手を学んでいる。

砂書流空手。

空手とは言うものの琉球時代より続く合戦術である。

ユウイチはそれを継承する者である。

空手を学ぶのと父親を1人にはできなかった。

彼は小学生の時から1人で家の家事を全てやっていた。

ケンとはこの時期に出会った。

彼は従兄弟であった。

兄弟同然の関係になるのはすぐだった。

空手の稽古も一生懸命やった。

喧嘩はしなかったが、やれば多少のやつには負ける気はしなかった。

しかし気が優しすぎた。

見た目もありよくナメられた。

初めての喧嘩は中学1年の時だった。

粋がった同級生から売られた。

先に手を出させてからぶちのめした。

それから場数を踏んだ。

キョウジと出会ったのもこの頃だった。

誤解とはいえキョウジともやりあった。

紆余曲折あったがキョウジともケンのような関係になれた。

後にキョウジもユウイチの家に、とある理由で住む事になった。

3人は常に一緒だった。

そう、どんな時も…


宮下公園の交差点で信号待ちをしていた。

ふと肩を叩かれた。

振り向くと青山聖林の制服姿の女子が立っていた。

「えっと、誰?」

「同じクラスの北村っていうの、よろしくね」

ショートカットに日焼けした顔が微笑んだ。

「あっ、いたような?」

「余裕なさそうだったもんね。ねえ?時間ある?」

時計を見た。

夕食の支度、稽古の時間にはまだ時間があった。

「少しなら大丈夫」

「じゃあ付き合って」


ユウイチは北村に誘われるままに渋谷東映のマクドナルドに入った。

稽古前なのでユウイチはコーラだけにした。

北村はポテトにかじりついている。

「砂書君って何かやっているの?」

「空手を少しね」

嘘である。

既に2段を持ち指導までしている。

「喧嘩強いんだ」

「弱い、弱い。ピーピー泣いてばっかだから」

これも嘘である。

売りはしないが買っていた。

しかも相手は必ずユウイチ達に泣きを入れていた。

「北村さんは陸上?」

「何でわかったの?」

「日焼け加減と体格から。テニスやバドミントンなら肩や背中の筋肉が服の上からわかるぐらい発達するから。それがないし、ふくらはぎが発達してるから」

「すごい、トレーナーみたい」

まあ空手の指導したりしてるしな。

「専門は走り?」

「高跳びや幅跳びもやるけど専門は走り」

「速そう」

「これでも中学の時、新記録出してるんだ」

「凄いね。大会とかあるの?」

「来週にね。今度も新記録狙っているんだ。因みに今日は休息日ね。サボりじゃないからね」

「何も言ってねえだろ」

そう言いながらユウイチは時計を見た。

丁度いい時間だった。

「悪い、用事あるからこの辺で」

「うん、わかっ…あっ」

「どうした?」

「学校に忘れ物しちゃった。取ってこなきゃ」

「つきあおうか?」

「いいよ、無理矢理誘っちゃったから。またね」

北村は鞄を掴むと先に店を出た。


ユウイチは買い物袋を下げ夜道を歩いていた。

ここは近道だが代官山周辺でも人気が少ない辺りだ。

先ほどのマクドナルドから妙に神経がピリピリする。

後ろからつけられてる。

直感だが外れた事はない。

子供の時から第六感的な能力が備わっていた。


きたな。

ユウイチの前に男達が立ちはだかった。


相手は3人。

ギャングではない。

ましてやヤクザでも。

全身黒かった。

シャツや靴までも。

妙な佇まいだった。


「何か用ですか?」

間抜けな質問だな。

ユウイチはそう思いながら男達を観察し続けた。

男の1人がいきなりユウイチの手を掴んできた。


そこからのユウイチの行動は早かった。

掴んできた手の指を1本、手にとると逆にそらしてやった。

手に乾いた音が伝わり男が怯むと左足の爪先を男の股間にめりこませた。

男は声にならない声を上げ地面にうずくまった。

1人ダウン。


そこから一斉に2人の男達がかかってきた。

ユウイチは逆に向かっていった。

男の1人に狙いを定めると右手を開いたまま裏拳のようにスナップを効かせ男の目を狙った。

男は咄嗟に顔面ガードをして掌を防いだ。

しかし本命は右の前蹴りだった。

爪先を相手の胃袋めがけて放った。

意識が顔面にあった為すんなりと爪先は胃袋にめりこんだ。

2人目ダウン。


最後の男はこちらを警戒してる。

踏み込めない。

誘うか?

そう思っていたら相手が動いた。

裏をかかれた。

しかしユウイチの反応は早かった。

ユウイチは相手の拳に合わせて踏み込み相手の金的に膝をカウンター気味に叩き込んだ。

嫌な感触が伝わった。

相手は胎児の様に丸くなりうめき声を上げた。


この間1分足らず。

ユウイチの肩は小さく上下していた。

恐怖と緊張による息切れだった。


ユウイチは男の1人の顔を上げた。

「今から警察呼んでやるから、その前に何者か言え。あっうちの親、警官だから嘘言っても無駄よ」

ユウイチは携帯を出し110番を押そうとした時だった。

倒れていた男達が蘇生してユウイチに向かってきた。

ダメージが残っているのか足元がふらついていたが鋭いローキックをユウイチの顔面に向かって放ってきた。

反射的にユウイチはかわしたがそのスキに男達は逃げて行った。

「覚えていろ、砂書勇壱!必ず貴様を手に入れる!」

捨て台詞かよ。

ユウイチは闇夜に消える男達を追おうとはせず周囲の安全を確認した。


代官山、砂書家。

ユウイチは買い物袋を下げ帰ってきた。

居間に入るとエプロンを羽織った美浦真樹が夕食の準備をしていた。

「マキ、ただいま」

「あっおかえり。」

「頼まれていた買い物、置いとくよ」

ユウイチはキッチンに買い物袋を置くとブレザーを脱いだ。

「遅かったね」

「道草後、誘拐されかかった」

ユウイチは笑いながら言っているが端から聞けば普通にとんでもない話である。

「バカな奴がいるね」

マキもマキで反応は普通ではない。

「とりあえず撃退した。おっかなかったけど」

「程々にしときなさいよ」

「ケン達は?」

「道場よ。待ってるって」

ユウイチはそれを聞くと居間を出た。





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