99.最悪の登校
母親に叩き起こされて壁の時計を見ると6時過ぎだった。明け方から少しは寝ていたようだが、徹夜をしていて明け方に少しウトウトしたという状態に近い。
頭の中がジーンと痺れていて、耳鳴りもする。
料理の腕の上達をとうに諦めた母親が作り出す朝食の失敗作をつまみながら、朦朧としている頭をシャキッとさせるため濃いめのコーヒーを淹れてもらったが、舌が火傷して胃が痛くなっただけ。
テーブルに両手を突いて重い体を動かし、近くに転がっていたバッグをリュックのように背負って、玄関に腰を下ろして靴を履く。
憂鬱が胃の中のものを戻そうとする。全身が痺れ、瞼が重くなる。気をつけてと言う母親の言葉を背に受けるも聞き流し、体重を乗せてドアを開く。
(……最悪だ。仮病を使いたい)
でも、私の責任感が、立ち止まる私を無理矢理歩かせた。
学校集合は7時30分。その10分前に校舎が見えてきた時は、まだ時折睡魔に襲われながら若干蛇行して歩道を歩いていた。
学校に近づくにつれて集まり始めた友達は、いつもの私の姿を求めるだろうから、こんな最悪のコンディションを態度や表情に出すわけにはいかず、気丈に振る舞う。これで、いつもの私の外面だけが完成した。
友達の輪に囲まれた私は、彼女たちの頭の間からあの三人の姿が見えないかと、悟られないように首を伸ばして探す。
しかし、求める姿は見つからない。満面に笑みの顔になりながら、一方で心の中は不安が渦巻く。まさか、三人揃って欠席ではないだろうかと。
学校のそばに大型のリムジンバスが4台停車していた。1学年4クラスがこれに分乗して乗り込む。
今の体調でバスに乗るのは危険行為だと、私の警戒心が呼びかける。電車の車掌が「体調が優れない場合は――」とアナウンスしているあれと同じだ。
ここまで来たけど、やはり早退した方がよいだろうかと思い始めたが、そんな心配があるにも関わらず、体は勝手に前へ前へと歩いて行く。
どうしても、三人の姿を確認したいからだ。