96.現れない三人
翌日の8時、私は複雑な気持ちで農場ゲームに接続した。なぜなら、テレーザさんとカレンさんがあのような形でゲームから落ちたからだ。
(今日、テレーザさんとカレンさんは来るのだろうか……)
実は、なぜか来ないような気がしていて、今日はゲームをインする前にどうしようかと迷っていたのだ。
悶々としながらコテージのドアを開けると、眩しい陽光がそれを隠しきれないちぎれ雲の隙間から降り注ぎ、優しく吹く風が体を目覚めさせる。
広くなった土地には、濃い緑が溢れ、情熱的に赤い実や鮮やかな緑の実がたくさん熟している。
たわわに実るとは枝がたわむことなので、リンゴやミカンのイメージがあるが、トマトやキュウリだって身の重さに細腕の枝が引っ張られているので、表現を借りても良ければその言葉を当てはめたい。
二人が来ないという直感にはそれなりの根拠があるかというとそうでもないのだが、心の中では大外れであって欲しいと願っている。直感ってたまに当たるときがあるものだから、自分は予知能力があると思ってしまう結果、然したる根拠がなくても直感を天啓のごとく信じてしまいがちだ。
テレビで観た「今日の占い」は上位の方だったので、外れを期待するのに十分である。不思議と経験上、占いの上位は当たらず、下位の方が当たるからだ。
しかし、テレーザさんとカレンさんは約束の時間を過ぎても現れなかった。それどころか、エレナさんも時間には来なかった。
昨夜、ゲームから落ちる間際に彼女は「バイトが急に入ったらゴメン」という言い方だったので、その急なバイトだろうと思うのだが、心配でならない。
このゲームの世界にスマホのSNSと連動した機能が欲しいものだ。
8時の収穫が始まったが、オークさんたちのあまりの手際のよさに、手伝う私が出荷する実に手を伸ばす暇がない。
仮にどこかの一角を任されたとしても、彼女たち三人が来ないで一人黙々と摘み取る作業をするのは寂しい。
結局、キツネさんが運転してきた大型トラックに箱が山積みされて、空き箱が置かれていった。次の収穫は13時だとオークさんが言うが、私は上の空だった。
一応、残りのズッキーニとパプリカの予想収穫数も含めてだが、収支は以下の通り。
――――――――
<出金>
トマトの種 仕入れ数:20、単価: 200PT
キュウリの種 仕入れ数:20、単価: 200PT
ズッキーニの種 仕入れ数:30、単価: 250PT
パプリカの種 仕入れ数:20、単価: 300PT
肥料 仕入れ数:20、単価: 2,000PT
合計:61,500PT
<入金>
トマト 売却数: 600、単価: 80PT
キュウリ 売却数: 500、単価: 50PT
ズッキーニ 売却数: 400、単価: 150PT
パプリカ 売却数: 500、単価: 150PT
合計: 208,000PT
残高:1,592,500PT
――――――――
肥料は時々仕入れないといけないので仕方ないが、それを抜きにしても着実に資金が増えている。車の300万PTにはほど遠いが、いずれ購入できる日が来るだろう。
そのことよりも私は、首を長くして三人の登場を待っていた。