表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第1章 荒れ地の果てに
9/150

9.レッサーパンダさんたちは管理人夫妻

「わしは、オーク・マシューズ。で、こっちは家内のクラウディア・マシューズ」


 オークさんがそう言って、私から見て左横に立っている妻を指差して紹介した。私の名前は知っているはずだから、私からは名乗らない。だって、「もう一度やる決心が付いたかのう?」って言っていたし。


「オークさんとお呼びしていいですか?」


「かまわんとも」


「いろいろ()きたいことがあります。まず――」


「先に、わしの方から説明させてくれんかのう。

 こちらの農園の名前はメグ()(のう)(えん)。わしは、その管理人をオーナーから依頼されておる。

 オーナーがここに来ない間は、わしの判断で農園の経営を進める。

 もしオーナーが来たら、指示に従う。

 この家は、わしらを含めて、最大で二十人が寝泊まりに使える」


 目の前のコテージが、そんな大人数の寝泊まりに使える広さとは到底思えないが、ゲームの仕様上の話と理解しておこう。外から見る建物の広さに比べて、中の広さが異様に広いという非現実的事象は、ゲームはおろか、アニメでも時々見かける。まるでドアをくぐった先が異なる空間であるかのように。


「このゲームって、最初からこの建物があったのですか?」


「もちろん。それを説明する前に、お前さんが出て行ったから知らんじゃろうが」


 この言葉で、私がゲームを中断した場面が判明した。


(そうか! クマが出たと思って、きっと、慌ててゲームから抜け出したんだ)


 私は苦笑いをして頭を下げた。そして、はっきりとは覚えていないけど、建物を見ないで逃げたことを謝罪する。


「あの時は、ごめんなさい」


「気にしてはおらんよ」


 オークさんは目を細める。すると、クラウディアさんが手招きをした。


「さ、さっ、中にお入り。お茶を入れるから。ゆっくり休んで、明日の朝、私たちに指示しておくれ」


 つまり、泊まっていけということだ。でも、朝までここで寝ていては学校に行くことを忘れて遅刻しかねない。私は二人に向かって両手を振った。


「ごめんなさい。今日は遠慮しておきます」


 すると二人とも悲しそうな顔になった。そこに、一陣の風が吹き、二人の体の毛がなびいた。そのリアリティが実に見事で、思わず目を見張った。同時に、申し訳ないという気持ちが襲ってきて心が痛んだ。


「また、わしらを置いていくのかのう」


「困ったわねぇ。まだ開墾もしていない段階でオーナーがここから出て行くと、指示がないので農園の管理人は何も出来ないの。冬眠と同じ状態になるの」


 私は罪悪感が募った。本当はプレイを進めさせようとする演出だろうが、それを忘れてしまうほど、言葉が真に迫っている。


「いや、その、あの、ここで寝ると寝過ごす可能性があるので……」


 オークさんとクラウディアさんは、黙って私を見つめている。意味がわからないというより、ならばどうする?という無言の問いへの答えを待っているようだ。


 この状況を打開したい私は、ある提案を思いついた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ