89.またもや相談事を持ちかけられた
私がドアを開けられないでいると、スッと向こうからドアが開いてカレンさんがひょっこりと顔を出した。
思わず叫び声を上げそうになると、彼女は「テレーザさんが慌ててゲームから落ちましたが、何かあったのですか?」と怪訝そうに首を傾げた。
「さ、さあ……。急用を思い出したのかしら?」
「そうですか」
「たぶん」
「あのー……」
急にカレンさんがモジモジし始める。
(またかぁ……、カレンさんまで……)
「ちょっと、聞いていいですか?」
「ど、ど、ど、どうぞ……」
私の動揺は止まらない。むしろ、動揺しているところに、肩をつかまれて揺さぶられている気分だ。
「唐突なことを聞くようで……もし、気に触ったらごめんなさい」
「だ、だ、大丈夫よ。平気の銭形平次よ」
平気の平左だったような気もするが、もう遅い。
「もし一つの部屋にメグ美さんと、メグ美さんが話をしたくない人だけしかいなかったら、どうします?」
ついに私の思考回路がショートした。
「話したくない人は何人いるの?」
妙ちくりんな質問に、カレンさんが目を剥いた。私は『しまったあああああっ!』と心の中で絶叫する。
「人数によって違うのですか?」
「いやいやいやいや、何人いても困るわよね。あはははは……」
顔が引きつった笑いになり、自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。
すると、彼女は眉をひそめてため息をつき、「ごめんなさい、唐突すぎて困らせちゃったみたいですね」と言いながら、聞いても無駄だと言いたそうな顔をコテージの中へ引っ込めた。
絶望に包まれた私は、彼女たちの言葉が頭の中でワンワンと鳴り響くのに耐えられなくなり、しゃがみ込んでしまった。
(なぜ、そんなことを、私に聞くの? せっかく、楽しい一日だったのに……)
きっと彼女たちは、私と一対一になった時にどうしても聞きたかったのに違いない。
それって、頼られているからなのだろうか? それとも、私がリアルの世界で誰であるかを知っているのに、知らないふりをして本心を引き出そうとしているのだろうか?
本当に涙が出てくる。マジで出てくる。