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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第2章 スローライフとビジーライフ
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83.最後まで作業を見届ける

 その後、10時過ぎ頃にエレナさんたち三人はゲームを落ちていった。


 残った私は少し手伝いながら、ああやって切り株を掘り起こしていくのか、柵の棒を成形するのか、横木を切りそろえるのかなどと、興味津々でオークさんたちの仕事ぶりを観察していた。


 一番不思議なのは、木の切り株がいずこへと運び去られて見えなくなることだが、それはゲームのご都合主義と解釈しよう。


 柵の棒に最後の横木を取り付けた私たちは、作業完了を喜び合った。画面を表示して時計を見ると、11時30分になっていた。現実世界では、そろそろお昼ご飯の匂いがベッドにまで漂っているかも知れない。料理が不得手のお母さんなので、時々焦げ臭い匂いが混じるのだが。


 開けた周囲を見渡すと、遠くにまだ木々が見えるが、お隣さんの耕された土地にはもう植える隙間がないほど作物が植えられていた。


 それをじっと観察していると、みるみるうちに芽が出て大きくなり、次々と花が咲いて、それが落ちるとどんどん実を結んでいく。その実が大きくなると動物さんたちと箱がわらわらと現れて実がサーッと消え、作物は枯れて一気になくなり、また動物さんたちが高速に土地を耕していく。


 何十倍速のビデオを観ているみたいだ。


(ああ、これがクイックモードなんだ……)


 三方向とも、私たちの農園よりも、もの凄い速さで時が過ぎていく。


 クイックモードは1時間が8秒。つまり、450倍だ。


「井戸が完成するまで、どのくらいかかりますか?」


 私は柵の横木に両腕を乗せて、遠くを眺めながらオークさんに尋ねる。すると、右側から彼の声が聞こえてきた。


「掘るのに1時間、レンガを組むのに2時間。でも、町までレンガとか材料を買いに行くのに往復で2時間じゃ。ついでに種も買いにいかんと」


 町という言葉の響きに、私は強い憧れを感じた。


 なぜだろう。私は都会の喧噪にどっぷりと浸かっているのに。


 もしかして、この農園でスローライフを堪能していると、ここの住人と同じく町が恋しくなってしまうのだろうか。


 だが、「町まで一緒に行ってもいいですか?」という言葉は飲み込んだ。往復2時間は、疲れている身には酷である。


「いつか、一緒に町まで連れて行ってください」


「資金が貯まって、車が買えた後の方がよいと思うが」


 ――車を買う。


 その選択肢は考えてもみなかった。


(いつか、車を買おう!)


 私の目標が一つ増えた。


「ところで、車っていくらするのですか?」


「300万じゃ」


 が、頑張ります……。



   ◆◆◆

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