81.追加の開墾が決まってしまった
本件の決定権は、もちろん、オーナーである私にある。
コテージ裏の50メートルを開墾すれば、縦方向が100メートルから150メートル、つまり面積は1.5倍になる。ゲーム開始当初から比べて4倍の1.5倍で6倍だ。一桁の数字だから大したことがないように思えるが、実際はビックリするような数字だ。それは、広がった土地に立ってみればよくわかる。
「ね? ね?」
三人がジリジリと迫ってくる。
と、その時、コニーリアさんが私たちの所に近づいてきた。鍬を4本持っているので、私たちの鍬だろう。これで、彼女が何を言いたいのかがわかった。いつものことだから。
「何してるの? さあ、耕すのを手伝って」
予想通りの言葉を聞いた私たちは渋々ながら鍬を受け取ったが、三人が私の方に期待の目を痛いほど向けるので、コニーリアさんに向かって「あのー」と切り出した。
「何? 私の早口言葉が聞きたいの?」
私の「あのー」が、なんでそんな話になるのか。
今日のAIは、暴走気味にぶっ飛んでいるみたい。コニーリアさんはニコニコしながら口を開いた。
「東京特許許可局――」
私は鍬を持っていない方の手を横に振る。
「あ、それはまた後にしてもらって、そうではなく、私たち、コテージの裏で手つかずの場所を開墾しようかと――」
ここで一呼吸を置いた私は、その言葉に続けて「まだ決めてはいないのですが、そんなこんなをみんなで話し合っていたところで」と言おうとしたら、コニーリアさんが目を爛々と輝かせる。
「それはいいわね。『善は急げ』よ」
なんてことだ。AIも早とちりをするらしい。
コニーリアさんは直ぐさまオークさんたちの方へ振り向いて「おーい! みんなー! オーナーがコテージの裏を開墾するって言ってるわよー!」と叫んだ。
すっかり決定事項となってしまって困っている私の後ろで、エレナさんたちがニヤニヤしている。今後は、早口言葉が得意なコニーリアさんを、早とちりが得意なコニーリアさんと呼ぶことにする。